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第二章 冒険者稼業の始まり

#14 いざ、初クエスト(お花摘み)へ

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 そんなこんなしてたら前の貴族様の集団もチェックが終わったみたいで、俺達の番が来た…門番の兵士が二人、おっ、一人はエドさんっぽいぞ。

「次、そこのお前ら…って、何だ?姫達と…ナオトじゃねぇか」

「よっす!エドのおっさん!」

「エドはん、おはよう」

「おはようございますぅ~、エドさん~」

「お疲れ様です、エドさん。先日はどうも」

「おう、おはようさん。ナオトはその格好見ると、無事冒険者になれたみてぇだな」

「ええ、おかげさまで。ギルドカードもこの通り」

 そう言ってキンキラキンなギルドカードをエドさんに見せてやった。
 やっぱりこれ目立つから、早めにランク上げた方がいいかも…。

「ほう…ハイゴールドか。いきなり上級とは恐れ入ったぜ。んじゃ仮証明寄越しな」

「はい、ありがとうございました」

 懐から出した振りして無限収納から仮証明を取り出しエドさんに渡した…別に振りなんかしなくてもよかったのか、俺が漂流者だって知ってるもんな、エドさんは。

「おう、確かに返してもらったぞ。で、これから早速クエストか?」

「ええ、これから初クエストに行ってきますよ」

「そうか、ガンバってこいよ。まぁ、心配なんかいらねぇだろうがな、なんせ漂流者だしな」

「えっ!コイツ漂流者なんすか?エド先輩」

 ん?もう一人の方が割って入ってきたぞ。
 エドさんの事先輩って言ってるから後輩なのは当然なんだろうけど…兵士って先輩後輩とかじゃなくて役職で呼んだりしないんだっけ?隊長とかさ。

「バカ野郎っ!仕事中はちゃんと役職で呼べって言ってるだろうがっ!」

 ゴンッ!

「ぁ痛って!す、すんません!エド隊長!」

 あ…案の定ガントレット付けた手で頭殴られてるし…まぁ、殴られてる方もヘルム付けてるし、言う程痛くはないと思うけど。

「まったく、お前は何回言っても覚えねぇなぁ、バドル」

「いやぁ、もうクセになってて…いやいや、それよりコイツが漂流者ってマジっすか?」

「あぁ。昨日な、ここに辿り着いたばかりだ」

「どうも。ナオトです、よろしく」

 いきなりコイツ呼ばわりされたから、こっちもちょっとぶっきらぼうになっちまった…まぁ、こっちの世界の人達って言葉遣いとかあんまり気にしないっぽいし、それにこのバドルってやつ、今の俺と大した歳離れてないように見えるから、大丈夫だろ。

「どもっす、エド隊長の部下でバドルエッツィオっす。バドルでいいっすよ。俺もナオトって呼ぶんで」

「あぁ…分かったよ、バドル」

 何ていうか…軽いな、門番なのにいいのか?これで……貴族様相手でこれはマズいような気もするけどなぁ。

「ところでナオトはなんで姫達といるんすか?」

「あー、いろいろあってさ。姫達とパーティー組む事になったんだよ」

「えっ!?マジっすか…そいつはスゴイっすね。早速姫達落とすなんて、やっぱ漂流者だからっすかね?エド隊長」

「いや、漂流者は関係無いんじゃねぇか?まぁ、どうやって落としたのかは気になるがなぁ」

 いや、落とすって…俺が丸め込んだみたいに決め付けないでほしいんだが……。

「うっせーなバド!アタイらは別に落とされたわけじゃねぇよ、勘違いすんなっ」

「そや、ウチらがナオトはんに頼み込んだだけや。前衛としてな」

「なんだ、そういう事っすか…つまんねーっすね、エド隊長」

「だな。ついにあの難攻不落の姫達が落ちたのかと思ったんだが…まともな理由でガッカリだぜ」

「おいなんでそこでガッカリなんだよっ!マトモな理由でなにが悪ぃんだよっ!」

 多分話のネタが欲しいんだろうな…姫達なら話題性抜群だろうし、兵士達の間で酒のツマミにでもしたかったんだろう、きっと。

「別に悪くはねぇよ。ただもうちょい面白い話かと思っただけだ」

「そっすね、姫達はネタの宝庫っすから」

 やっぱりな…でもこれあれだな、ギルドでの朝の一件知ったら思いっ切り喰い付いてくるな、それはもうスゴい勢いで酒が進むくらいに。
 ただなぁ…近い内にすぐバレる気がするんだよなぁ……ギルドであんだけ注目されてたから、他の冒険者から遠からず伝わるんじゃないかと。
 ヘタしたら帰りにはもうバレてるような気がしなくもない…。

「まぁ、エドさん達が話のネタ…つまり酒の肴に飢えてるのだけは分かりましたよ」

「なんだナオト、話が分かるじゃねぇか。おし、今度飲みに行くかっ、行きつけの店に連れてってやるぜ」

「お、いいっすね!そんときゃ俺も是非っ!あ、姫達はダメっすよ、ヤロー同士の話なんで」

「お前ふざけんなよっ!アタイらが肴にされるの分かっててナオトを行かせるわけねーだろーがっ!」

「……ウチが絶対断固阻止するわ………」

「私はぁ~一緒にぃ行きたい派かなぁ~…なんかぁ面白そうなぁことにぃ~なりそうだしぃ~……うふふふ」

 ゾワッ!

 うはっ!なんだっ!今スゲぇ背筋に悪寒が走ったんだが……っ!エドさんもバドルも同じみたいでブルっとしてるけど、目線が泳いでる……あ、これもしかして。
 ヤバい俺の後ろに丁度マールがいるっ!振り向いたらマズいやつだこれっ!離脱!すぐさまこの場から離脱しないとっ!

「じゃ、じゃあエドさん、バドル、その話は今度ゆっくり…。もうクエスト行くから、また帰りによろしくっ!」

 ちょっと早口で言ってその場から離脱するように足早で進もうとしたら、マールが一瞬だけ視界の端に入った……やっぱりちょっと邪兎眼発動してんじゃねーかっ!え、ちょっと待って俺闇護膜ダルクヴァルド発動しっぱなしだよな?何で反応してるわけ?まさか貫通してるわけじゃない…よな?


[闇黒魔法・闇護膜ダルクヴァルド(笑):効果発動中。邪兎眼による外的要因ではなく、自身の恐怖心から来る内的干渉と推測]


 あーそういうことかっ!いやあの眼ホント怖いから恐怖心植え付けられたってことか…まぁ、邪兎眼自体は効かないはずだからシャリーみたいに拘束とかはされないと思うけど、悪寒とかそういうのは感じるようになったってことか……マール恐るべし、これマジでキレさせないように気を付けないとな………。

 とりあえずあの眼を見なかったことにして、そのままの勢いで門を潜って外へ。
 姫達も各々のやり方でエドさんとバドルを威嚇した後、門を潜ってきた…この世界の人達って余計な一言っていうか思ったこと言わないと気が済まないのがデフォなんだろうか……。

 ま、とにかく街を出たことだし、早速クエストに!って言ってもお花摘みなんですけどねー。
 ゴブリン討伐より先にこっちを片付けようかなって、最初っから飛ばすのはどうかと思うし。

「さて、と。早速クエストを熟そうかと思うんだけど…この辺でいろんな種類の花が咲いてるところって知ってる?」

「はぁ?花って何だよ、ゴブリン倒すんだろ?花なんて関係ねーじゃねーか」

 あ、そういや俺が受けたクエストの方って何も言ってなかったっけ…こっちは俺だけ受けたクエストだし姫達付き合わせるのも悪いか。

「ごめん、そういえばみんなには言ってなかったけど、俺が先に受けてたクエストって常設クエストのお花摘みなんだよ」

「「えぇ~?」「え?」「は?」」

「いや、ほら、初クエストだし朝からいろいろあったし、今日はもう簡単なやつでいいかなぁーなんて…」

「…ナオト、お前なぁ……いくら初クエストっつったって仮にもハイゴールドの冒険者だろーが。なんでそんなクエスト受けてんだよっ」

「お花摘みぃねぇ~……私はぁ~いいとぉ思うよぉ~。なんかぁ~のんびりぃ出来そうでぇ~いいなぁ~ってぇ~、ふふっ」

「………朝から……いろいろ…………うぁぁぁぁ…………………」

 別にいいじゃんか、初クエストなんだし常設からって初心者なら基本じゃないか?別に無理して付き合わせるつもりは無いから嫌だったら俺一人でやるしいいだろ?マールは付き合ってくれそうな感じだけど。
 シータは…まぁ、朝の一件はしばらく後引くだろうなぁ……ちょいちょい思い出して悶えてそうだ。

「これはまだパーティー組む前に俺が受けたクエストだから、別にみんなにも手伝ってって言うつもりはないよ。これが終わったらゴブリン討伐に行くからそれまで悪いんだけど待っててもらえる?」

「あ、いや、別にやりたくねぇなんて言ったつもりはねぇよ…何やってんだかって思っただけしな……。しょーがねーからアタイも手伝ってやるよっ」

「私はぁ~最初からぁ~一緒にぃするつもりだったよぉ~、お花摘みぃ~。ふふっ」

「…あ、ウ、ウチもええで……一緒に花摘むわ。たまにはこういうのんびりしたクエストもええかもなって…」

「え?いいのか…?みんな一緒ならすごく嬉しいけど……」

 いやホントこんな初心者クエスト一緒にやってくれるって、付き合わせて悪いと思う方が大きいんだけど、それでもいいって言ってくれるとか…みんな優しいな、嬉しくなっちまう。

「ん、構へんよ。今はもうパーティーなんやし、みんな一緒でええやろ?」

「ま、そーゆーこったな。花摘みなんてアタイのガラじゃねーのは分かってっけど、やるからにはマジでやってやるよっ」

「みんなでぇ~お花摘みぃ~、うふふっ、楽しそうだよぉ~」

「分かった、みんなありがとな…。それじゃお言葉に甘えてみんなにも付き合ってもらうよ。で、さっき聞いたけどこの辺で花がたくさん生えてそうなとこって分かる?」

「ん~…そうだねぇ~……あぁ~、あそこならぁ~いっぱいぃ咲いてるかなぁ~?」

「あそこって…もしかして、『囁きの泉』?」

「あー、あそこかぁ。確かにあそこならかなりの種類の花あるんじゃねーか?」

 泉か…水辺の傍ならそれなりに期待出来るかな?しかも名前からして静かっていうか、静謐感漂う雰囲気も期待出来そうでちょっといいかも?ファンタジーっぽく精霊達が囁き合ってるんだろうか?そうだといいなぁ…。

「俺は来たばっかりで全然分からないから、みんなにお任せになっちゃうんだけど…連れてってもらえる?」

「了解や、ほな泉で決まりっちゅーことで。多分あそこまでなら道中も整備されてて魔物も出えへんやろし、のんびり行こか」

「そうだねぇ~、ピクニックぅ気分でぇ~行こぉ~」

「二人とも気ぃ抜きすぎだっつーの。ま、アタイは一応気張っとくから心配すんな、ナオト」

「俺も周りには気を付けるようにしておくよ。まぁ本職には負けるだろうけど」

 スカウトだしな、アーネは。
 その辺の索敵とかはお手の物なんだろう、俺も一応マップがあるからそれなりの範囲は分かるけど、常時見てられるわけでも無いからなぁ…ここは本職に頼って、囁きの泉ってところまで行ってみよう。


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