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第8話 2人の二重奏、2組の四重奏 ①
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僕と上総は今、1番近い本州の街に出る船に揺られている。島の影が一直線の水平線を曲げ、本州の山が大きく見えてくる。青く透きとおった海には白波と小魚が踊っている。本当に美しい景色だと思う。まるで青と白の花が風にそよいでいるかのような穏やかで落ち着く景色だ。甲板で僕と上総はその景色を見つめながら立っていた。僕は上総の横顔に目を移した。真っ白なワンピースから伸びた女の子らしい細くスラッとした四肢、全体に大きめのつばがついた帽子から覗くぱっちりした目や滑らかな頬、風に帽子を押さえる所作でさえ僕はまだ顔を赤くするのを抑えられない。
「ね、ねぇ、上総…」
「ん?なに?」
「その服…すごい、に、似合ってる」
僕は言ってすぐに顔をそらした。上総も恥ずかしそうに俯く。
「あ、ありがとう…」
「そ、その…すごく、か、かわいい…」
「…//!そそ、そうかな…嬉しい。」
僕と上総は目を合わせないまま手と手を重ね合わせ、指を絡めた。恋人繋ぎの状態になる。そして、やっと顔をあわせると、少しだけはにかんで笑った。
「…それで、なんで俺は幼なじみのイチャイチャを陰から覗かなきゃならないわけ?」
「うるさいなぁ。あの2人の初デートだよ?気になるでしょ?」 大貴「初デートって、今までだって2人で出かけてるじゃん。」
「そういうことじゃなくて、彼氏と2人で遠出するのって女の子には特別なことなの。」
「はぁ、よくわかんねぇけど。」
「もう、2人揃って唐変木なんだから。」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない!早く行くよ!」
船を降りると少し排気ガスの混ざった、都会の匂いがする。
「なんか、すごいどきどきするな…」
「小学生か、お前は。」
「もう!そういう意味じゃないよ!」
「…?」
「いいから行くよ!」
僕は上総に引っ張られて水着売り場に連れてこられた。上総は楽しそうに水着を選んでいるが、こういうところはどうしても周りの視線が気になって落ち着かず、そわそわしてしまう。
「お探しのサイズはございますか?」
「え、えっと…」
上総はなにやら恥ずかしそうに顔を伏せている。すると店員は僕の顔を見て何かを閃いたように話した。
「失礼しました。男性用水着は隣のコーナーにございます。」
「じ、じゃあ僕も探してくるから、後で見つけたら落ち合おうか。」
「そうだね、じゃあ、後でね。」
僕は隣のコーナーにに向かった。
「あいつら相変わらずなんというか…?あれ?赤崎?」
「ねぇねぇ、この水着どうかな?似合ってる?」
「…なにちゃっかり楽しんでるわけ?」
「そんな冷たい目しないでよ。せっかくだからさ。」
「…ちょっと派手じゃねぇか?」
「そうかな、いいと思うんだけど…」
「色はいいけど、結構布地の面積少ないぞ?」
「あ、今変なこと想像したでしょ!」
「ば、バカ!するかそんなもん…」
「まぁ、いいけどね。大丈夫、これ、パレオついてるから。」
「いいんじゃねぇの?お腹が隠れるぞ?」
「どういう意味よ!」
「冗談だ。」
「もう、冗談が冗談に聞こえないんだもん。」
「それ、どうすんの?」
「ん?買ってくよ。大貴が選んでくれたんだし。」
「俺は選んでねぇ。」
「細かいことはいいじゃん?」
「早く買ってこねぇとあいつ買い終わっちまうよ?」
「そうだった。行ってくる!」
「なんかあいつ、いつもとちがくねぇか?」
その時、俺の心に忘れていた少し甘い気持ちが広がった。
「ね、ねぇ、上総…」
「ん?なに?」
「その服…すごい、に、似合ってる」
僕は言ってすぐに顔をそらした。上総も恥ずかしそうに俯く。
「あ、ありがとう…」
「そ、その…すごく、か、かわいい…」
「…//!そそ、そうかな…嬉しい。」
僕と上総は目を合わせないまま手と手を重ね合わせ、指を絡めた。恋人繋ぎの状態になる。そして、やっと顔をあわせると、少しだけはにかんで笑った。
「…それで、なんで俺は幼なじみのイチャイチャを陰から覗かなきゃならないわけ?」
「うるさいなぁ。あの2人の初デートだよ?気になるでしょ?」 大貴「初デートって、今までだって2人で出かけてるじゃん。」
「そういうことじゃなくて、彼氏と2人で遠出するのって女の子には特別なことなの。」
「はぁ、よくわかんねぇけど。」
「もう、2人揃って唐変木なんだから。」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない!早く行くよ!」
船を降りると少し排気ガスの混ざった、都会の匂いがする。
「なんか、すごいどきどきするな…」
「小学生か、お前は。」
「もう!そういう意味じゃないよ!」
「…?」
「いいから行くよ!」
僕は上総に引っ張られて水着売り場に連れてこられた。上総は楽しそうに水着を選んでいるが、こういうところはどうしても周りの視線が気になって落ち着かず、そわそわしてしまう。
「お探しのサイズはございますか?」
「え、えっと…」
上総はなにやら恥ずかしそうに顔を伏せている。すると店員は僕の顔を見て何かを閃いたように話した。
「失礼しました。男性用水着は隣のコーナーにございます。」
「じ、じゃあ僕も探してくるから、後で見つけたら落ち合おうか。」
「そうだね、じゃあ、後でね。」
僕は隣のコーナーにに向かった。
「あいつら相変わらずなんというか…?あれ?赤崎?」
「ねぇねぇ、この水着どうかな?似合ってる?」
「…なにちゃっかり楽しんでるわけ?」
「そんな冷たい目しないでよ。せっかくだからさ。」
「…ちょっと派手じゃねぇか?」
「そうかな、いいと思うんだけど…」
「色はいいけど、結構布地の面積少ないぞ?」
「あ、今変なこと想像したでしょ!」
「ば、バカ!するかそんなもん…」
「まぁ、いいけどね。大丈夫、これ、パレオついてるから。」
「いいんじゃねぇの?お腹が隠れるぞ?」
「どういう意味よ!」
「冗談だ。」
「もう、冗談が冗談に聞こえないんだもん。」
「それ、どうすんの?」
「ん?買ってくよ。大貴が選んでくれたんだし。」
「俺は選んでねぇ。」
「細かいことはいいじゃん?」
「早く買ってこねぇとあいつ買い終わっちまうよ?」
「そうだった。行ってくる!」
「なんかあいつ、いつもとちがくねぇか?」
その時、俺の心に忘れていた少し甘い気持ちが広がった。
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