上 下
80 / 92

80. クーデター⑧

しおりを挟む
「いくぞ!」
と言うリーダー格の悪魔からの号令と共に3人が一斉に駆けてきた。
「ちょっと直線的すぎない?」
とステラが言うと、彼女は業火球を三つほど創ると一息にぶつけた。轟音、遅れて強い風圧が体を叩き、強い熱波が空を焼いた。しかし、悪魔たちが大理石のような見た目の石の床を蹴る音は止まらなかった。
「やばっ…」
とステラが攻撃を受けることを覚悟したその時、ヒュンと空を裂く音がして攻撃を加えようとしていた少女の悪魔の肘を貫いた。
「あ…アグッ…」
とその悪魔はその場に沈んだ。一瞥すると、矢尻が真っ白に霜が降りていた。恐らく矢に氷魔法を込めたのだろう。ルイトみたいに氷魔法のスキルを持っていないため、全体に霜が下りる程度だったが、十分攻撃の抑制はできていた。
「ちっ…あの弓野郎が厄介ね…」
とステラの前の悪魔が呟くと三人がかりでルプスを狙い始めた。
「行かせるかよ。」
と僕は三人の前に立ち塞がったが、
「邪魔だ。」
とリーダー格とは別の悪魔が風魔法を打ち出す。
「ほいっと。」
と僕は魔法を反射する結界を張ったが、悪魔の撃った風魔法は僕自身ではなく、僕の足元を抉り、僕は壁まで吹っ飛んだ。
「うぉおぁ…っと、ル、ルプス!」
と僕は姿勢を崩しながらもルプスに三重の結界を“付与”したが、悪魔の腕力がそれを上回ったのか三重の結界は粉々に砕け、ルプスの体に二発の拳が重たい音と共に叩き込まれ、吹き飛ばされていた。
「がっ…」
と僕も背中を叩きつけてしまうが、なんとか受身を取ると素早く立ち上がり、時間魔法で時を止めるとルプスと悪魔ズの間にさっきとは比べ物にならない障壁を貼ると、時間魔法が解け、止まった時が元に戻った。
「ごめん、手借りるよ!」
と僕は近くにいたステラの手を取ると、空間魔法でステラごとルプスを守る障壁の中にワープした。
「矮小な人間風情が!こんなもの!」
と障壁に対して攻撃を加え始めた。
「この結界は見とくからルプスを!」
とステラに言われ、僕は急いでルプスの元へ走っていくと、
「ルプス、ルプス…おい、しっかりしろ!」
とその肩を揺すった。
「カハッ…」
と俺は口から血を吐いた。ゆっくりと目を開けると、
「大丈夫か、ルプス?」
と目の前でミナトが聞いてくるがその声はキツそうだった。
「お前こそ大丈夫なのか?」
と言いながら体を起こそうとするが痛みと体の疲れとが重なったせいか立ち上がることができなかった。
「おいおい…自分の心配をしとけよ、今だけでいいからさ。」
と言うと俺に回復魔法をかけてくれた。
「ちょっと!そろそろこの障壁もやばいわよ!」
とステラが向こうから叫んできた。
「了解!…これ、俺の分のポーションだ。飲めたら飲んでおけ。戦いは任せろ。…ここからは俺の時間だ!」
そう言うと、僕は立ち上がり、悪魔たちの元へと歩んでいった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

前世ラスボスの陰陽師は正体を隠したい ~元大妖怪、陰陽寮に仕官する~

蘆屋炭治郎
ファンタジー
 平陽京の西、鳴松守の屋敷に居候する童――刀伎清士郎はモノノ怪に襲われ、窮地で自身の前世を思いだす。清士郎はなんと、前世で人々を恐怖におとしいれた大妖怪だったのだ。  天才陰陽師の安倍叡明に討たれた悲惨な末路を思いだし、今世では平穏に暮らしたいと願う清士郎。だが不運にも偶然居合わせた安倍叡明に正体こそ隠し通せたものの、陰陽師の才を見抜かれ、京の陰陽寮に仕官するように命じられてしまう。  陰陽寮――それはモノノ怪を打倒する傑物揃いの戦闘集団。  そんな陰陽師だらけの敵地真っ只中で、清士郎は正体を隠して陰陽師としての責務をこなしていくことになるのだが……。 ※諸事情あって週3、4更新とさせていただきます。火、木、土+‪α‬での更新になるかと思います。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

隠れジョブ【自然の支配者】で脱ボッチな異世界生活

破滅
ファンタジー
総合ランキング3位 ファンタジー2位 HOT1位になりました! そして、お気に入りが4000を突破致しました! 表紙を書いてくれた方ぴっぴさん↓ https://touch.pixiv.net/member.php?id=1922055 みなさんはボッチの辛さを知っているだろうか、ボッチとは友達のいない社会的に地位の低い存在のことである。 そう、この物語の主人公 神崎 翔は高校生ボッチである。 そんなボッチでクラスに居場所のない主人公はある日「はぁ、こんな毎日ならいっその事異世界にいってしまいたい」と思ったことがキッカケで異世界にクラス転移してしまうのだが…そこで自分に与えられたジョブは【自然の支配者】というものでとてつもないチートだった。 そしてそんなボッチだった主人公の改生活が始まる! おまけと設定についてはときどき更新するのでたまにチェックしてみてください!

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...