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57. 過去の過ち②

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「あぁ…そんな…どうして…」
と若い男が泣き崩れている。男の足元には兄弟であろう何処か顔立ちの似ている2人の男が血に塗れて倒れている。もうほとんど虫の息でいつ死んでもおかしくはない。もうこうなってしまっては治癒魔法は意味をなさない。傷が深すぎるのだ。もうすでに死が確定している。その男たちに唯一の生者の男は、
「兄さん、見ててくれ、俺、絶対にこの国を守るから…」
と決意を語り、その屍に背を向け歩き出した。
そして、視界は暗転し…次に目に写ったのは女性が床に臥している所だった。その女性の側には幼い少女と高貴な身なりの先ほどの男がいた。少女は、
「ママ、死なないでよ…すーちゃんママとバイバイしたくない…ずーっと一緒がいい!ママ、また一緒にすーちゃんと服買いに行くって言った、一緒にお茶するって約束した!パパ言ってた、ちいちゃい約束でも守るのがおごりたかい王族なんだって言ってたよ。」
と言った。するとその女性…少女の母は微笑み、
「誇り高くよ。奢っちゃダメなのよ…でも、約束を守るのは大事なことね…ごめんね…私は、あなたとの約束を果たすことができなくなってしまった…許してくれる?」
と言った。少女は涙目になりながらも、
「いいよ…ねえママ、よくなるよね?病気、治るよね?すーちゃんはママとの約束より、ママの方が大事だよ…」
というが、少女の母は弱々しくも頭をふり、
「…ごめんね…私はもう長くないと思うの…だからすーちゃん、最後に一つママと約束をしてくれる…?」
と言った。
「スン、スン…なぁに?」
「いい?あなたは聡い子だから、人を導けるような人になりなさい…ママには未来が見える…あなたが大きくなったときにこの国に大きな危機が訪れる…その時にその危機を乗り越えるには人を導いていけるような人がいるの。」
「人を導いていける人?お父さんじゃダメなの?」
「あの人じゃダメよ。あくまであなたがやらないといけない…宿命のようなもの…その運命から逃げちゃダメだよ…って難しい話、しちゃったな…今の言葉わかったかな…ステラ…」
と少女の母が言った。その瞬間、僕は今見せられているのはステラが今まで体験してきたことを第三者目線で見てきたことがわかった。
「ううん、わかんない…」
とその少女…ステラはバツが悪そうに俯く…するとステラの母…前皇后は優しくステラを抱きしめ、
「あなたはこの国の希望になる…人との出会いを大切にしなさい…」
と呟いた後、天を仰ぎ、
「最高神であらせられるアルルト様…我が子、ステラをお守りください。この命を捧げます。どうか、この国を…ステラを…お願いいたします!」
と弱々しい声で呟くと、立体魔法陣が現れた。それはとても緻密で、正確で…綺麗だった…そしてその魔法はステラの母の体に残存する魔力を全て吸い上げ、一つの夕闇色の結晶を作り出した。そして、
「ステラ、これは私からのプレゼント…大事にするのよ…」
と言い、その結晶を渡すとステラから手を放し、長い…長すぎる眠りについた
「ま、ママぁ~!」
という幼い頃のステラの悲痛な叫びと共に僕の視界は再びブラックアウトし…視界が戻ると、目の前には豪勢な扉が現れた。隣には今まで姿の見えなかったルイト、ナギエ、ステラの姿があった。
「今までのはただの昔話、ここからが本題よ。」
とステラは言うが、声は湿っている。
(たかが証拠を見せる為だけに普通はここまでしないだろ…)
とは思ったが、実際彼女はこの悲しみを乗り越えている。常人なら二度と見たくもない思い出だろうと考えていると口から、
「そっか、強いな、お前。」
とこぼれていた。扉を開けようとしたステラはびっくりした顔でこっちを向いたが、すぐに微笑し、扉の方を向いた。そして、
「ありがとう、ミナト。じゃあ行くよ。」
と言いその扉を押し開けた。そして僕らはその扉から溢れ出た光の奔流に見込まれ、視界が神々しい純白の光に塗りつぶされていった。
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