上 下
48 / 61
本編

 49話 過去との決別、そして今後の身の振り方②

しおりを挟む
「久しぶり、母さん。元気にしてた?」
と僕は対面した母に対しそう切り出した。
「ま、マコト!?あ、あんたどうしてここに!」
と母さんは驚いていた。にしても改めて見ると母さんもだいぶ変わっていた。母さんは若い頃はモデルの仕事をしていたらしいため、小学生頃まではお母さん若くていいねなんてよく言われていた。でも今の母さんにはそんな物面影すらなかった。
「どうしても何も…母さんが捕まったからじゃないか…何やってんだよ。」
と僕は言う。正直こんなこと昔は言えるわけもなかった。でももう今は違う。僕の為に怒ってくれる人が出来た。僕のために泣いてくれる人ができた。僕のことを大切にしてくれる家族もできた。そんな人たちの為にも僕は母さんと別れることを選ぶことを望んだ。
「マコト!聞いてるの!?」
「ん?ああ、なんだって?よく聞こえなかった。」
「だから、あなたはその身元何ちゃらで来たってことよね?そうよね?」
…一体何を言っているのだろうか…
「…三日月さん?このバカは何言ってるんですか?」
と聞くと
「あー、なんだ、お前がこの人の身元引き受け人…つまりはこいつを責任もって家で監視して二度と事案が起こらないようにするようにできるかってこと。」
と説明する。
「あ、はい。無理ですそんなことやりたくもないです。」
と言うと、
「はあ?ふざっけんなよ!お前のためにこっちはクソきついことをお前のためにしてきたんだよ!ちょっとは親孝行をしたらどうなの!?」
と母さんが座っていたスツール椅子をひっくり返すぐらいの勢いで立つとそう叫びながら僕に掴み掛からんと飛びかかってくるが、
「あー、うん。そういう感情的なところを見るとムショ行きだな。あ、そこに座ってるだけでいいから。」
と三日月さんに止められる
「ちょっと!話しなさいよ!」
と暴れるが、
「ウルセェ、これ以上騒ぐと公務執行妨害で罪重くすんぞ。」
と言うとピタッと静かになった。
「それで?これが母親なのは確定でいいんだな?」
と三日月さんが確認をしてくる。
「はい。」
「それで身内は夫か君しかいないと言うのは?」
「本当です。」
「君のお父さんは身元引き受けを拒否しているけど君は?」
「あ、父さんと同じです。しっかりと罪を償わせてください。」
と言った。すると母さんは青ざめた顔で、
「ちょ、ちょっと!?マコト!お母さんを見捨てるの!?お願い、お母さんを助けてよ。」
と喚く。僕は
「育て上げることはできない。この言葉僕、忘れてないから。なんでそんなこといきなり言ってきたかも知ってるから。もう母さんの元には二度と戻らないし顔も見せないから。」
と言うと扉の近くの窓からこちらを見ていた砂田さんに合図を送ると砂田さんは外から鍵を開けてくれた。
「お疲れ様。捜査協力ありがとう。三日月さん、彼を送ってきますね。」
「母さん、僕を刺したことも含めて今までの罪をちゃんと償うんだよ。」
と言うと僕は砂田さんと一緒に警察署を出て砂田さんの車に乗り込む。
「…大丈夫?」
と砂田さんは聞いてくる。
「何がです?」
と聞くと、
「お母さんが捕まっちゃったし、あの態度からして多分だけど刑務所行っちゃうけどいいの?」
と聞いてきた。
「ああ、そんなことですか。」
「いや、そんなことで片付けられる物じゃないでしょ?」
「………」
「最後に何か伝えることがあるなら伝えておくよ…何かあるかい?」
「…じゃあ、母さんと母かたのばあちゃんたちにそれぞれ…………と伝えてください。」
と言うと砂田さんは嬉しそうに
「わかった。」
と言ってくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

処理中です...