上 下
46 / 61
本編

 47話 バイバイ、母さん

しおりを挟む
マコトが退院してから3日後、僕は家で料理をしていた。1ヶ月近く眠っていただけだったので、筋肉が多少衰えているのでリハビリを兼ねた料理だ。高校生とはいえ僕はまだ一応思春期に片足を突っ込んでいるため、体がタンパク質を欲しているため、今日はグラタンにたっぷりのチーズとパスタ、鳥ささみを入れたミートグラタンだ。人数分だけを作るつもりが、久々の料理にテンションが上がり、つい作り過ぎてしまった。
「…やっちまったな…これどうしようかな…」
目の前にはグラタンの入った大皿が6つあった。女性陣は大皿一つでお腹一杯になるだろうし、それは僕とて同じだ。お弁当でも一皿の半分消費できれば良い方だ。
「…お隣さんにでもお裾分けしようかな…」
なんて考えているとピンポーンとチャイムが鳴った。
「あ、私が出てくるよ。」
とリビングでくつろいでいた真由がソファから立ち上がると玄関に向かった。僕はそれ以上気にする事はなく、炊飯器のお米をほぐしていると、
「マコト~!お客さん!」
と玄関から声がする。
「わかった、今行く!」
と僕は玄関に向かいながら着ていたエプロンを脱ぐ。脱いだエプロンを左腕にかけると、リビングの扉を開けた。玄関に行くと、玄関先に、真由と男の人が2人いた。どちらもスーツ姿でクールビズ仕様のサラリーマンといった風だ。でも2人の顔には見覚えがあった。
「えっと…確か警察の方ですよね?記憶が正しければ…三日月さんと、砂田さん…でしたっけ?」
と言うと、2人は頷き、
「久しぶり、その様子だと元気そうだね。よかったよかった。ねえ、三日月さん?」
と砂田さんが三日月さんに話を振った。
「そうだが今回ここに来た理由は仕事だろう?ほらお前の仕事だ、最後までちゃんとやれ。」
と三日月さんは冷たく突き放す。
「はいはい。わかりましたよ…」
と言うと砂田さんは雰囲気を変えた。
「まずね、マコトくん。君には一回警察署に来てほしいんだ。」
と言う。僕は話の見えなさにポカンとすると、
「お前、本当に説明下手だな…もういい…俺が話す。」
三日月さんが呆れながら言う。なぜか長くなりそうな予感がしたので、
「あの、お話長くなりそうですので一旦中に入りませんか?」
ときくが、
「いや、結構。」
と断られてしまった。
「で、話というのがだね…今回、今まで意味が入院していた病院があっただろう?」
「ああ、あの総合病院ですか。あの病院がどうかしたんですか?」
「あの病院で、ついさっき事件があった。」
「えっ…」
「犯人は30~40代で割腹のいい女性で、刃物を所持していてな、受付の人にマコトはいるかと聞かれ、そのような患者はいないと言うと、激昂し、持っていた刃物を取り出し受付を脅迫、止めようとやってきた警備員2人を持っていた刃物で切りつけるも、そのまま鎮圧されたんだ。」
「なるほど、犯人は僕を探しているわけですか…僕の母の可能性が高いです…本当に申し訳ないです。あの、それで切り付けられた2人は…?」
「命に別状はない。傷も浅いから小枝を引っ掛けた時と状況はあまり変わらないそうだ。」
「それはよかったです。で、お話の内容に戻りますけど、それで僕の母かどうかと言うところを判断するために僕が必要…そう言うわけでしょうか?」
「話が早くて助かる…では、ついてきてくれるか?」
「わかりました。じゃあ真由、後は頼んだよ。余った分はラップして冷蔵庫の中にでも入れといて。」
と言うと僕は持っていたエプロンを渡す。
「ええ?あ、ちょ、ちょっと!?」
と真由は慌てふためいているがお構いなしに玄関を出た。
「いいんですか?妹さんほっといて。」
と砂田さんに聞かれる。
「大丈夫ですよ。」
と僕は自信たっぷりに言った。
「だって彼女たちはその辺の人よりずっと家事上手いんで。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!ー新たなる王室編ー

愚者 (フール)
恋愛
無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! 幼女編、こちらの続編となります。 家族の罪により王から臣下に下った代わりに、他国に暮らしていた母の違う兄がに入れ替わり玉座に座る。 新たな王族たちが、この国エテルネルにやって来た。 その後に、もと王族と荒れ地へ行った家族はどうなるのか? 離れて暮らすプリムローズとは、どんな関係になるのかー。 そんな彼女の成長過程を、ゆっくりお楽しみ下さい。 ☆この小説だけでも、十分に理解できる様にしております。 全75話 全容を知りたい方は、先に書かれた小説をお読み下さると有り難いです。 前編は幼女編、全91話になります。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」 結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。 それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。 不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました) ※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。 ※小説家になろうにも掲載しております

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

処理中です...