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本編
37話 暗闇の中で③
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不思議な夢を見ていた。あれはいつのことだったか…まだ母さんが本性を表す前…だから僕が3、4才の頃だろう。目を覚ますと、視点がいつもより低く、手も見慣れた物ではなく、小さな紅葉の手だった。これは家族で水族館に行った時の夢のようだった。あの頃は家族4人みんな仲良くて今じゃ考えられないぐらい僕は笑っていた。そんな僕の人生でも1番楽しかったんじゃないかと言う頃を夢で見ていた。イルカのショーを見て、クラゲとかを見て、近くの海のレストランでシーフードカレー食べて、そんな楽しい休日の一コマだった。帰り道に母さんたちと歩いていると、美琴と真由、優希が3人で歩いていた。僕は、
「あ!美琴だ。真由に優希も。お~い、みんな~。」
と幼児特有の高い声で言うと、3人の元に駆け出そうとしたが、親と繋いでいた方の手が離れ無い…父さんと繋いでいたはずの手が離れなかった。
「父さん?」
と僕は顔の方を見ると、そこには父さんで無いものがいた。
「…え…?」
と僕は動揺を隠し切れず、口からそうこぼれた。確かに僕と手を繋いでいるのは父さんだ。父さん…なのだが…
「いい?マコト、あなたはこっちに行くのよ。あっちじゃないこっちに行くの。」
と、父さんの方から聞こえた…母さんの声で…そう、倒産だと思っていた人物、確かに体つきは父さんだ。しかし、顔は母さんのものだった。
「うわぁ!」
と僕は声がその場に尻餅をついた。そこで僕は自分の声がもとに戻っていることに気付いたが、それどころではない。僕はこの場から一刻も早く逃げ出すべく走った。しかし姿が消えても声だけが永遠と追ってきた。
『『マコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコト』』
「うわぁぁ!」
と悲鳴を上げながら叫ぶ。いつしか洞窟のような真っ黒な空間を白い光の方へと走る。そして光の中に飛び込む時、母さんの声とは違う声がした。
「待ってよ…お兄ちゃん…置いてかないで…」
と幼い声がした。いきなりの事で僕は動転したが、その声は誰かの声によく似ていた。あれは一体誰なのか…僕には思い出すことができなかった。しかし、なぜか安心できる声だったことだけは確かだった。と考えながら、視界がホワイトアウトしていくのを感じた。
「あ!美琴だ。真由に優希も。お~い、みんな~。」
と幼児特有の高い声で言うと、3人の元に駆け出そうとしたが、親と繋いでいた方の手が離れ無い…父さんと繋いでいたはずの手が離れなかった。
「父さん?」
と僕は顔の方を見ると、そこには父さんで無いものがいた。
「…え…?」
と僕は動揺を隠し切れず、口からそうこぼれた。確かに僕と手を繋いでいるのは父さんだ。父さん…なのだが…
「いい?マコト、あなたはこっちに行くのよ。あっちじゃないこっちに行くの。」
と、父さんの方から聞こえた…母さんの声で…そう、倒産だと思っていた人物、確かに体つきは父さんだ。しかし、顔は母さんのものだった。
「うわぁ!」
と僕は声がその場に尻餅をついた。そこで僕は自分の声がもとに戻っていることに気付いたが、それどころではない。僕はこの場から一刻も早く逃げ出すべく走った。しかし姿が消えても声だけが永遠と追ってきた。
『『マコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコトマコト』』
「うわぁぁ!」
と悲鳴を上げながら叫ぶ。いつしか洞窟のような真っ黒な空間を白い光の方へと走る。そして光の中に飛び込む時、母さんの声とは違う声がした。
「待ってよ…お兄ちゃん…置いてかないで…」
と幼い声がした。いきなりの事で僕は動転したが、その声は誰かの声によく似ていた。あれは一体誰なのか…僕には思い出すことができなかった。しかし、なぜか安心できる声だったことだけは確かだった。と考えながら、視界がホワイトアウトしていくのを感じた。
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