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本編

 2話 美琴の家

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そうして河川敷を離れ歩くこと15分、僕はマンションの一室にいた。そう、神宮美琴の家だ。
ちなみに僕はリビングに座っている。お風呂にも入れて貰った。こんなに人に親切にされたのは何年ぶりだろうかなんて考えていると、美琴さんがおぼんの上に平皿を二つ乗せて持ってきた。
「はい、私特製のチャーハンだよ、あったかいうちに食べてね。」
と目の前にチャーハンが置かれる。油で米が輝いていて、真ん中では卵黄が鎮座していた。
「あ、そうだ、飲み物、飲み物…」
と彼女がキッチンに消えていった。その間にレンゲでチャーハンを掬い、口に運んだ。パラっとしていて、ネギやチャーシューがいいアクセントになっていた。空腹も言いアクセントになったのだろう。今まで食ったどのチャーハンよりも美味かった。
卵黄を割ってチャーハンと混ぜて口に運ぶ…う、うめぇ、と僕は夢中で手を動かした。そして顔を上げると、両手に麦茶の入ったコップを持ってニヤニヤしてる美琴さんがいた。
「うまいな、普通に店出せるレベルだぞ。」
と思ったことを正直に言うと彼女はない胸をそらして、
「でっしょ~家事は得意なんだ~まぁお口に合って何より。あ、これお茶ね。」
コトっと目の前にコップが置かれた。
「あ、ありがとう。」
「いえいえ、私も食ーべようっと、いただきまーす。」
と僕の前に座り食べ始めた。そして2人は黙々とチャーハンを食べてると、
「美琴、うまそうな匂いがするな。朝ご飯か?お父さんにもくれないか?」
と美琴の父親らしい声がして、その人がドアを開けて入ってきた。
そして父親らしき人が部屋に入ってきて僕を見るやいなや
「み、美琴が男を連れ込んでる~!」
と叫ぶ。その声に驚き、
「はぁぁぁ!?」
と言ってしまった。しかし、当の本人はというと、
「…おとーサン?何でそんな冗談を言うのかなぁ?もうご飯も作らないし、口も聞かないよ?」
と笑顔で言っていたが背後からゴゴゴゴゴ…という効果音が聞こえてきそうな程の迫力があった。
「「ヒィィィ!」」
と2人揃ってすくみあがった。…何で僕こんなにビビってたんだろ、今思ったけど僕全く関係ないのに…



そして数分後、
「で、君はどちら様なんだい?」
と美琴のお父さんに聞かれ、
「鳴海マコトと言います。すみません。娘さんにご飯とか色々ご馳走して貰っちゃって。」
と、言うと、お父さんはひどくびっくりした様子で、
「な、鳴海…?」
と呟いた。
「お父さん何か知ってるの?」
と美琴が聞くと、
「あぁ、ちょっとな。それよりまこと君だっけ?もしかしてだけど、君のお母さんの名前って美弥妃かい?」
と聞いてきた。正直驚いた。
「そ、そうです。も、もしかしてですが母をご存知なのですか?」
と聞くと、
「そんなかしこまらなくてもいいよ。…そうだね、存じるも何も元夫婦だったからね…いやぁ、あの人は色々ときつ…いやまって…君、あの人の子供だったよね?君が子供の頃にお父さんは居たかい?」
と、聞いてきた。しかし、この質問に対し僕は頭を振った。
「そうか…じゃあ君は…」
とその人は僕に信じられないようなことを言ってきた。
「君は僕の子供にあたるのか…」
と…
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