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天罰

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「お嬢さん。奴隷になんかならなくていいですよ。私がポーションの代金を立て替えましょう」
そういって、彼女の前で威張り腐っている村人の前に金貨の入った袋を放り投げた。
「な、なんだこの餓鬼」
「あなた方がほしいのは金でしょ?さっさと持ってきなさい」
俺がそう命令すると、村人たちは嫌な笑みを浮かべた。
「どこの坊ちゃんかしらないけど、口を出すんじゃねえよ。残念だけど一分前に値上がりしてな。2000万マージ払ってもらおうか」
俺が金持っているとかったら、値上げしやがった。
もう交渉の余地はないな。
「それはあまりにも暴利でしょう。そもそも「生命のオーブ』は慈悲深き天空王が、病や傷に苦しむ人々を救うために天空界から授けられたもの。オーブを使うことで、ただの水が奇跡のポーション煮変化するのです。つまり、元はただの水。作るのに一マージもかかってないはずですよ」
「しらねえな。俺らモンクのやることに文句つける気か?ああん?」
村人は無駄にひきしまったカラダを見せ付けて威嚇してきた。
生まれたときからこの村の生命のオーブに浸った水を飲んで育ったおかげで筋肉質になっているだけなのに、なぜそんなに威張れるんだろうな。
「話になりませんね」
「おう。さっさと帰れ」
筋肉質の村人はシッシと手を振って、俺を追い払おうとした。
「それじゃあ、実力行使といきます。「オクル」」
俺は筋肉質の村人に向けて転移魔法を放つ。次の瞬間、彼らの足首が俺の手の中に転移した。
同時に今まで偉そうに腕組みをしていたモンク兵が、いきなり両足を切断されて血を流しながら倒れこむ。
「ぎゃぁぁぁぁ。痛い!なんだ?何が起こったんだ!」
痛みのあまりわめく彼らをほうっておいて、俺は土下座していた人々を煽った。
「さあ、今のうちですよ。神殿に入りましょう」
俺の言葉を聴いた人たちは、はじかれたように立ち上がって神殿の中に入っていく。
俺は彼らの後からゆっくり入ろうとしたら、震える手でポーションを取り出すモンク兵が目に入った。
さすがは日常的に治療ポーションを飲んで育ったモンクたちだな。足首が切断された程度じゃ死なないか。
「ポ、ポーションを飲めば……治るはず」
彼らの希望どおり、ポーションを飲むことで傷口はふさがり、出血は収まった。
しかし、すぐに彼らは絶望の声をあげる。それでも激痛が治まらず、失われた手足も再生されなかったからだった。
「無理だよ。いくらポーションだって欠損部位は治療魔法じゃないと再生できない。今後は一生地面を這い回って生活するんだな」
俺はモンク兵を踏みつけながら、神殿に入っていった。

神殿の中
「な、なんだお前たちは……」
中にいたモンク僧たちは、突然入ってきた多くの人々に困惑とていた。
彼らはモンク僧を相手にせず、中央に安置された泉に殺到して我先にと水を汲んでいる。
その泉の中には「生命のオーブ」が沈められており、ただの水をポーションに変えていた。
「や、やめろ。この水は聖なる水!金を払わないものには……ぐっ!」
慌ててとめようとしたモンク僧は、俺の転移魔法で手や足を切断されてその場に崩れ落ちる。
それを確認すると、俺は声を張り上げた。
「みんな、好きなだけもっていけ!天空王から与えられたポーションという恩恵を、勝手に自分たちのものにして独占していたこの村は、その罰を受けて滅びる。だが、お前たち善良な一般市民に対しては、これからも治療薬が与えられるだろう」
それを聞いた人々から歓声が上がった。
「あの……あなたさまは?」
先ほど土下座していた少女が尊敬の目で見てくるので、俺は彼らの前で金色に輝く天使の輪を身につけた。
『我が名は、新たなる天空王ルピン。勇者と国に裏切られて処刑されそうになった元人間である!』
俺は人々の前で、自分がどんな目にあったかを話した。人々は話を聞くうちに。俺に畏怖の目を向けてくる。
「人々を苦しめていた魔王と天空王はすでに滅ぼされている。次は私を裏切った王国と勇者たちである。また俺の処刑を喜んで見ていた王都の民にも天罰が下されるだろう」
それを聞いて、人々は恐怖した。
「あの……天空王様。なにとぞお許しください。私たちは何も知らなかったのです」
さっきの少女が涙を流しながら土下座してきた。
俺は慈悲深い笑みを浮かべながら、ポーションを手にとって彼女の頬に手をふれる。
先ほど殴られて腫れていた頬は、もとの綺麗な顔に戻った。
「天空王様……」
「お前たちには関係ない話だ。私は新たな天空王として、無辜の民に対してはこれまで通り恩恵を授けることを約束しよう」
俺がそう宣言すると、少女に問いかける。
「お前はどこの村の者だ」
「は、はい。ここから北にあるプワー村の者です」
少女はおびえながら答える。俺は『生命のオーブ」を泉から取り出した。
「天空王様。これは……」
「この「生命のオーブ」はお前に託す。プワー村に設置して、病や傷に苦しむ者にポーションを分け与えよ。ただし、決して私利私欲のために使おうとするな。もしそうなった時は、天罰が下るだろう」
それを聞いていた、周囲に倒れていたマッスル村のモンク僧たちから叫び声があがった。
「そ、そんな。「生命のオーブ」をとられたら、この村が滅んでしまう」
「知るか。自業自得だ」
俺は冷たくモンク僧たちを切り捨てると、「生命のオーブ」を少女に手渡した。
「わかりました。「生命のオーブ」をお預かりします。
少女と一緒に来ていたプアー村の民たちも、いっせいに俺にむかって土下座した。
「では、お前たちは帰れ。今からこの村には天罰が下される。『転移』」
俺が転移魔法をかけると、プアー村から来ていた村民たちは消える。
彼らがいなくなったのを確認して、俺は懐から真っ黒いオーブを取り出した。
「そ、それはなんだ!}
「お前たちには代わりにこれを与えてやる。「不死のオーブ」だ」
新しいオーブから発せられた黒い光が、村中を覆う。
こうして、俺はマッスル村に天罰を与えるのだった。

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