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侵入
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太郎と千儀、そして護衛の茨木曹長は、新宿の市谷にある防衛省にやってきていた。
「ここの地下に異世界管理局があるのか?」
「ああ。だが入口には魔力による結界が張ってあって、許可を得られた者しか立ちいりできない」
それを聞いて、太郎はニヤリとする。
「魔力による結界か……つまり異世界管理局ではこの世界でも魔法技術を取扱っているということだな」
「ああ。異世界からの帰還者たちがもたらした魔法技術やアイテムなどを所持している。国内唯一の魔法研究機関だ。一般には公表できないけどな」
「でも、お前がいれば侵入はたやすい。そうだろう?」
その言葉に、千儀もうなずいた。
「中に入ってしまえばこちらのものだ。片っ端から職員を捕まえてやろう」
こうして、太郎は千儀とともに防衛省に攻め込むのだった。
「『影水』」
千儀が自分の影に魔力を通すと、その表面が水になったかのように波打つ。
「これで中に入れるぞ。俺の影に潜んでくれ」
「ああ」
太郎は千儀の影に入って、身を隠す。
「ちなみに、構成員は何人いるんだ」
「トップである土屋一尉の下に、異世界帰りの人間の士官が11人。あと異世界からの移住者である亜人族たちの下士官や兵士ーいや、奴隷たちが多数所属しているな。茨木みたいな奴らだ」
その言葉に、茨木曹長はだまって頷いた。
「そうか。なら、俺たちは一気にトップの首を取ろとするか。茨木曹長は亜人族の兵士たちを説得してくれ」
「わかりました」
一行は防衛省にはいっていく。千儀の身分証を呈示すると、護衛兵たちはあっさり通してくれた。
茨木曹長と別れ、そのまま地下にある異世界管理局にいくと、二人の男女が待っていた。
「土屋一尉、ただいま帰還いたしました」
千儀は制服を着た男の前で、ピシッと敬礼した。
「千儀三尉、任務ご苦労だった。ところで、君につけていた茨木曹長は?」
「はっ。疲労からか消耗しているようなので、移住者用の医療室に向かわせました」
それを聞いて、二尉の階級章をつけた白衣の女が苦笑した。
「これが鬼の攪乱ってやつかもね。いいわ。後で私が診てげましょう」
「ありがとうございます。水走二尉」
千儀は医官でもある水走に礼を言う。
「では、報告頼む。『知識共有』」
土屋が呪文を唱えると、部屋の中にある水晶玉が輝き、一筋の光が千儀の額を貫く。すると千儀の記憶が映像になってスクリーンに映し出された。
「なるほど。重要人物はテロリストの首魁である山田太郎、そしてその愛人の林美香、金田文乃、そして異世界からの召喚者であるルイーゼというわけだな」
「はっ。その四名を逮捕できれば、この騒動は終結するでしょう」
千儀は忠実な部下の顔を装って。そう答えた。
「うむむ……しかし、南国リゾートで美女たちといちゃいちゃハーレム生活か、うらやましい」
「じゅるり。半裸の鬼男たちとビーチでバーベキュー?たくましいわ。今度の夏休みの休暇ではリゾートに旅行にでも行こうかしら…」
二人がスクリーンを見て羨ましがっている間に、千儀はさりげなく部屋の外に出ていく。
「よし。では特殊能力をもつ士官を影に潜ませて、島を急襲して……ん?」
そこまでいった所で、千儀の姿が見えないことに気づく。しかし、その影だけはのこっており、その中から、一人の男が姿を現した。
「残念だが、休暇は諦めるんだな」
影の中から出てきたのは、史上最悪のテロリストと言われる山田太郎だった。
「どうしてここに?くっ『反重力』」
土屋が念じた瞬間、太郎の体が浮き上がる。そのまま天井に向かって勢いよく上昇していった。
「ほう、土の重力魔法か。なかなかのものだな」
天井に叩きつけられる寸前、太郎を捕らえていた反重力が消失する。太朗はふわりと宙に浮いて、土屋を見下ろした。
「くっ。なぜ私の重力魔法が打ち消された!」
「俺の空間魔法は、空間に存在するすべての力を操れる、当然、大地が空間に及ぼしている重力も操れるというわけさ。同じ力を操れる術者同士が魔法で働きかけた場合、よりレベルが高い方が優先される」
余裕の笑みを浮かべながら、太郎は告げる。
「なら、違う属性の魔法なら使えるわけね。『レインニードル』」
水走が叫んだ瞬間、無数の水滴が部屋内に発生し、それは先のとがった針となって太郎を襲った。
「待て!ここでそんな技をつかったら!」
土屋が慌てて制止するもすでに遅く、指令室内のコンピューターは水の針に刺されて滅茶苦茶になる。
「くくく……弾丸すら跳ね返す俺の斥力バリアーに、そんなものが通じると思ったか」
それに対して、太郎のほうはバリアーで防いで無傷だった。
「どうやらお前たちのレベルは60前後のようだな。そこそこの力を持つようだが、レベル99の俺には対抗すべくもない」
そういうと、太郎は二人の足元に空間魔法を放つ。
「説得は後で行うとしよう。『亜空間収納』」
足元に黒い穴があき、二人の体は亜空間に呑み込まれていく。
「うわぁぁぁぁぁぁ」
絶叫を残し、二人の姿は部屋から消えていった。
しばらくして、千儀が部屋に入ってくる」
「うまくいったみたいだな」
「ああ、そっちは?」
「見くびってもらっては困るぜ。俺も暗殺者レベル50は超えていたんだ。おまけにもらったマナの実を食べて強化されている。あの二人さえいなければ、他の隊員を捕まえるなんて簡単だ。異世界管理局が所持していた魔道具や魔法のデータも、すべて奪ってきたぞ」
千儀はドヤ顔をする。その影は、中で複数の人間が蠢いているかのように波打っていた。
「よし。こっちは終了だな。さて、茨木曹長のほうはどうなっているか……」
太郎がそうつぶやいたとき、鬼の姿をしたたくましい男を先頭に、大勢の異形の者たちが部屋に入ってきた。
「我ら異世界からの移住者、太郎様に従います」
彼らは一斉に太郎に対して跪くのだった。
少し前
太郎たちと別れた茨木曹長は、さらに地下にある下士官たちの宿舎を訪れていた。
「茨木曹長。無事にご帰還されましたか」
「あのテロリストの島にいくと聞いて、心配していました」
そう声をかけてくるのは、下士官仲間である。彼らは耳が長いエルフだったり、背が小さく筋肉隆々としたドワーフだったり、獣耳もつ獣人だったりした。
いずれも、異世界からの移住者である。彼らの一族は、本来属していた世界がさまざまな理由で滅亡したので、パラレルワールドにあたるこの地球に亡命してきた歴史をもつ種族だった。
しかし、この世界で圧倒的な数を誇る人間に駆逐され、狭い隠れ里に追いやられている。
かれらはそれぞれの種族から選ばれた出向者だったが、異世界管理局に差し出された後は名前だけの下士官として実質奴隷扱いされ、危険な任務に駆り出されている。
それだけではなく、遺伝子を採取されたり、違法な人体実験に使用されたりと、異世界監理局に対しては不満をもっていた。
そんな彼らを集めて、茨木曹長は演説する。
「俺たち鬼族の主人である山田太郎様は、お前たちの種族が自分に従うなら、各種族の根拠地となる領地を与えてくださるとおっしゃった」
各種族からの出向者たちは、固唾をのんで聞き入る。
「いいか、これはチャンスなんだぞ。今まで人間と違っている外見のせいで忌み嫌われ、各地の居住地に隠れ住んでいた俺たち亜人族が、堂々と表の世界にでてこられるようになるんだ」
それを聞いて、下士官たちは苦悩の表情を浮かべる。
「確かに……地下や洞窟でひっそりと暮らしている我が種族にとっては、地上の領地と市民権を得ることは長年の悲願といえる」
「だ、だけど、領地といったって、そんな土地がどこにあるんだ?地上はすべて人間に征服されていて、どこにもそんな場所はないぞ」
その疑問に、茨木はにやりと笑って答える。
「心配しなくていい。皆も新しくできた島のことを知っているだろう。あれは太郎様のお力で海底を隆起させたものだ。土地などいくらでも造り出せる」
それを聞いて、おおっという感嘆のどよめきがあがる。
「すでに俺たち鬼族は太郎さまの配下となり、南国リゾートであるシャングリラ島に移住している。そこでは誰もが太陽の下で、人目など気にせずのびのびと生活できるんだ」
それを聞いて、下士官たちの腹も決まった。
「よし。このまま奴隷として異世界管理局に囚われて、政府にいいように使われつづけるのもうんざりだ」
「俺たちが行動を起こせば、腰が重い長たちも動かざるを得なくなるだろう。一族のため、このチャンスに賭けよう。太郎様にとりなしてくれ」
全員が太郎に従って、日本政府に反逆することを決心するのだった。
「ここの地下に異世界管理局があるのか?」
「ああ。だが入口には魔力による結界が張ってあって、許可を得られた者しか立ちいりできない」
それを聞いて、太郎はニヤリとする。
「魔力による結界か……つまり異世界管理局ではこの世界でも魔法技術を取扱っているということだな」
「ああ。異世界からの帰還者たちがもたらした魔法技術やアイテムなどを所持している。国内唯一の魔法研究機関だ。一般には公表できないけどな」
「でも、お前がいれば侵入はたやすい。そうだろう?」
その言葉に、千儀もうなずいた。
「中に入ってしまえばこちらのものだ。片っ端から職員を捕まえてやろう」
こうして、太郎は千儀とともに防衛省に攻め込むのだった。
「『影水』」
千儀が自分の影に魔力を通すと、その表面が水になったかのように波打つ。
「これで中に入れるぞ。俺の影に潜んでくれ」
「ああ」
太郎は千儀の影に入って、身を隠す。
「ちなみに、構成員は何人いるんだ」
「トップである土屋一尉の下に、異世界帰りの人間の士官が11人。あと異世界からの移住者である亜人族たちの下士官や兵士ーいや、奴隷たちが多数所属しているな。茨木みたいな奴らだ」
その言葉に、茨木曹長はだまって頷いた。
「そうか。なら、俺たちは一気にトップの首を取ろとするか。茨木曹長は亜人族の兵士たちを説得してくれ」
「わかりました」
一行は防衛省にはいっていく。千儀の身分証を呈示すると、護衛兵たちはあっさり通してくれた。
茨木曹長と別れ、そのまま地下にある異世界管理局にいくと、二人の男女が待っていた。
「土屋一尉、ただいま帰還いたしました」
千儀は制服を着た男の前で、ピシッと敬礼した。
「千儀三尉、任務ご苦労だった。ところで、君につけていた茨木曹長は?」
「はっ。疲労からか消耗しているようなので、移住者用の医療室に向かわせました」
それを聞いて、二尉の階級章をつけた白衣の女が苦笑した。
「これが鬼の攪乱ってやつかもね。いいわ。後で私が診てげましょう」
「ありがとうございます。水走二尉」
千儀は医官でもある水走に礼を言う。
「では、報告頼む。『知識共有』」
土屋が呪文を唱えると、部屋の中にある水晶玉が輝き、一筋の光が千儀の額を貫く。すると千儀の記憶が映像になってスクリーンに映し出された。
「なるほど。重要人物はテロリストの首魁である山田太郎、そしてその愛人の林美香、金田文乃、そして異世界からの召喚者であるルイーゼというわけだな」
「はっ。その四名を逮捕できれば、この騒動は終結するでしょう」
千儀は忠実な部下の顔を装って。そう答えた。
「うむむ……しかし、南国リゾートで美女たちといちゃいちゃハーレム生活か、うらやましい」
「じゅるり。半裸の鬼男たちとビーチでバーベキュー?たくましいわ。今度の夏休みの休暇ではリゾートに旅行にでも行こうかしら…」
二人がスクリーンを見て羨ましがっている間に、千儀はさりげなく部屋の外に出ていく。
「よし。では特殊能力をもつ士官を影に潜ませて、島を急襲して……ん?」
そこまでいった所で、千儀の姿が見えないことに気づく。しかし、その影だけはのこっており、その中から、一人の男が姿を現した。
「残念だが、休暇は諦めるんだな」
影の中から出てきたのは、史上最悪のテロリストと言われる山田太郎だった。
「どうしてここに?くっ『反重力』」
土屋が念じた瞬間、太郎の体が浮き上がる。そのまま天井に向かって勢いよく上昇していった。
「ほう、土の重力魔法か。なかなかのものだな」
天井に叩きつけられる寸前、太郎を捕らえていた反重力が消失する。太朗はふわりと宙に浮いて、土屋を見下ろした。
「くっ。なぜ私の重力魔法が打ち消された!」
「俺の空間魔法は、空間に存在するすべての力を操れる、当然、大地が空間に及ぼしている重力も操れるというわけさ。同じ力を操れる術者同士が魔法で働きかけた場合、よりレベルが高い方が優先される」
余裕の笑みを浮かべながら、太郎は告げる。
「なら、違う属性の魔法なら使えるわけね。『レインニードル』」
水走が叫んだ瞬間、無数の水滴が部屋内に発生し、それは先のとがった針となって太郎を襲った。
「待て!ここでそんな技をつかったら!」
土屋が慌てて制止するもすでに遅く、指令室内のコンピューターは水の針に刺されて滅茶苦茶になる。
「くくく……弾丸すら跳ね返す俺の斥力バリアーに、そんなものが通じると思ったか」
それに対して、太郎のほうはバリアーで防いで無傷だった。
「どうやらお前たちのレベルは60前後のようだな。そこそこの力を持つようだが、レベル99の俺には対抗すべくもない」
そういうと、太郎は二人の足元に空間魔法を放つ。
「説得は後で行うとしよう。『亜空間収納』」
足元に黒い穴があき、二人の体は亜空間に呑み込まれていく。
「うわぁぁぁぁぁぁ」
絶叫を残し、二人の姿は部屋から消えていった。
しばらくして、千儀が部屋に入ってくる」
「うまくいったみたいだな」
「ああ、そっちは?」
「見くびってもらっては困るぜ。俺も暗殺者レベル50は超えていたんだ。おまけにもらったマナの実を食べて強化されている。あの二人さえいなければ、他の隊員を捕まえるなんて簡単だ。異世界管理局が所持していた魔道具や魔法のデータも、すべて奪ってきたぞ」
千儀はドヤ顔をする。その影は、中で複数の人間が蠢いているかのように波打っていた。
「よし。こっちは終了だな。さて、茨木曹長のほうはどうなっているか……」
太郎がそうつぶやいたとき、鬼の姿をしたたくましい男を先頭に、大勢の異形の者たちが部屋に入ってきた。
「我ら異世界からの移住者、太郎様に従います」
彼らは一斉に太郎に対して跪くのだった。
少し前
太郎たちと別れた茨木曹長は、さらに地下にある下士官たちの宿舎を訪れていた。
「茨木曹長。無事にご帰還されましたか」
「あのテロリストの島にいくと聞いて、心配していました」
そう声をかけてくるのは、下士官仲間である。彼らは耳が長いエルフだったり、背が小さく筋肉隆々としたドワーフだったり、獣耳もつ獣人だったりした。
いずれも、異世界からの移住者である。彼らの一族は、本来属していた世界がさまざまな理由で滅亡したので、パラレルワールドにあたるこの地球に亡命してきた歴史をもつ種族だった。
しかし、この世界で圧倒的な数を誇る人間に駆逐され、狭い隠れ里に追いやられている。
かれらはそれぞれの種族から選ばれた出向者だったが、異世界管理局に差し出された後は名前だけの下士官として実質奴隷扱いされ、危険な任務に駆り出されている。
それだけではなく、遺伝子を採取されたり、違法な人体実験に使用されたりと、異世界監理局に対しては不満をもっていた。
そんな彼らを集めて、茨木曹長は演説する。
「俺たち鬼族の主人である山田太郎様は、お前たちの種族が自分に従うなら、各種族の根拠地となる領地を与えてくださるとおっしゃった」
各種族からの出向者たちは、固唾をのんで聞き入る。
「いいか、これはチャンスなんだぞ。今まで人間と違っている外見のせいで忌み嫌われ、各地の居住地に隠れ住んでいた俺たち亜人族が、堂々と表の世界にでてこられるようになるんだ」
それを聞いて、下士官たちは苦悩の表情を浮かべる。
「確かに……地下や洞窟でひっそりと暮らしている我が種族にとっては、地上の領地と市民権を得ることは長年の悲願といえる」
「だ、だけど、領地といったって、そんな土地がどこにあるんだ?地上はすべて人間に征服されていて、どこにもそんな場所はないぞ」
その疑問に、茨木はにやりと笑って答える。
「心配しなくていい。皆も新しくできた島のことを知っているだろう。あれは太郎様のお力で海底を隆起させたものだ。土地などいくらでも造り出せる」
それを聞いて、おおっという感嘆のどよめきがあがる。
「すでに俺たち鬼族は太郎さまの配下となり、南国リゾートであるシャングリラ島に移住している。そこでは誰もが太陽の下で、人目など気にせずのびのびと生活できるんだ」
それを聞いて、下士官たちの腹も決まった。
「よし。このまま奴隷として異世界管理局に囚われて、政府にいいように使われつづけるのもうんざりだ」
「俺たちが行動を起こせば、腰が重い長たちも動かざるを得なくなるだろう。一族のため、このチャンスに賭けよう。太郎様にとりなしてくれ」
全員が太郎に従って、日本政府に反逆することを決心するのだった。
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