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国会議事堂乱入

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「法務大臣!こちらへ!」

結婚式場からにげだした法務大臣は、警官隊によって保護される。

「お、おい。結婚式をぶちこわしたテロリストはあいつだ!逮捕しろ!」

かつらがとれてハゲ頭になった法務大臣は、顔を真っ赤にして警官たちに命令する。それを受けて、警官たちは太郎を包囲する。

「気を付けろ。奴は変な爆弾か何かをもっているぞ、それで式場を壊したんだ」

出席者の声を聴いた警官たちは、警戒して近づくのをやめ。太郎を説得にかかった。

「もう逃げられんぞ。おとなしく武装解除して降伏しろ。テロリストめ」

それを聞いた太郎は、苦笑を浮かべる。

「やれやれ……変な爆弾にテロリストか。面白い。復讐を続けていれば、どうせいずれ犯罪者として追われることになることは覚悟していたんだ。いっちょ派手に俺の力を見せつけてやるか」

警官たちに向けて腕を一振りすると、巨人の腕に払われたように跳ね飛ばされる

「な、なんだ?!」

「バカな。なんなんだあいつは……」

驚く警官隊を尻目に、太郎は告げる。

「これは戦争だ。お前たちが俺の復讐を邪魔するのなら、俺は日本そのものを敵に回すことも厭わないだろう」

そう言い残すと、太郎は悠々と歩き去って行った。



とある病院

「くそっ。太郎の奴。結婚式場をぶち壊しやがって……」

病院の一室では、落ちてきた天井の破片によって傷ついた藤田博が呪詛の声を上げていた。

その隣では、式場の経営者である彼の父がうめき声をあげている。

「今にみていろ。弁護士に頼んで訴えてやる……」

そうつぶやく博の病室に、彼らが経営する結婚息上の社員たち入ってきた。

「社長のご容態はいかかですか?」

「ふん。見て通りだ」

聞かれた博が不貞腐れたように答える。隣に寝ている父親は、「私の結婚式場が……」とうわごとを呟きながら寝込んでいた。

それを見て、ため息をつく社員たち。彼らの中から部長が進み出て、資料を見ながら問いかけてきた。

「結婚式場が破壊されてしまったので、そのあとに予約していた何組ものお客様からクレームがきています。代わりの式場を手配しないと……」

「うるせえ。そんなの知るか!お前たちで適当にやっておけ」

それを聞いた博が、うっとうしそうに顔を背ける。

それを聞いて、部長と社員たちの顔が急に冷たくなった。

「そうですか……あなたたちは自分の責任を果たそうとしないみたいだ。それなら、これ以上尽くす意味もないみたいですな」

そういうと、彼らは懐から辞表をとりだしてテーブルの上に置く。

「お、おい。どういうつもりだ」

「どういうつもりも、私たちは退職するつもりです。あなたが社長の後継者として、少しでも責任を果たそうとする気があれば残ってもよかったのですが……」

部長はため息をつきながら、博に告げる。

「どのみち、結婚式場も使えなくなった会社に未来はない。ましてこんなバカ息子が後継者ならね。沈む泥船からは退散させていただきます」

そういうと、さっさと病室から出ていく。

「お、おい。嘘だろ。冗談だよな。戻ってこい!」

病室で博がどんなにわめいても、社員たちは戻らない。

社員たちに見捨てられた藤田結婚式場は倒産し、彼ら親子は多額の借金を背負うことになるのだった。





「結婚式場の崩壊。原因はテロか?」

派手なタイトルが踊る新聞の一面記事を読んんで、太郎は顔をにやにやさせていた。

「えーっと。昨夜未明、突然結婚式場にテロリストが襲撃。結婚式をしていたカップルと出席者たちに多数けが人が発生。テロリストは、新郎新婦の元同級生である山田太郎容疑者。現在、全国に指名手配中と……」

一面に高校時代の写真がデカデカと掲載されているのを見て、太郎は苦笑する。

「これで俺は全国手配の犯罪者になったな。望むところだぜ」

そう不敵に笑うと、さらに記事を読み進める。

「えーっと。被害者たちは恐怖のあまり『テロリストは奇妙な力を振るって攻撃した」と語っている。専門家によると、ストレスにより集団幻覚をみていた可能性があり……か。ふふふ、魔法の存在を認めてない現代社会では、説明がつかない現象はすべて幻覚のせいにするしかないもんな」

冷たく笑って、新聞をゴミ箱に捨てる。

「だが、これからはそうじゃなくなる。俺はこの日本社会というものに散々苦しめられたんだ。くくく……仕返しはさせてもらわないとな」

改めて、太郎は今までの人生を振り返る。親が借金が原因でいなくなった後、孤児院で育てられた彼は、今までずっと貧困の中にいて、学生時代は常に周囲から集団でいじめられてきた。卒業してからもきつい労働に苦しめられ、それでも真面目に働いてやっと貯めた金で好きな女と結婚しようとしても、それは彼から金を巻き上げるだけのたちの悪い悪ふざけだった。

なにより、そのことを訴えようとしても、権力でもみ消されてまともに相手にされなかったのである。

「今の社会じゃ、正直者がバカをみるだけだ。俺が好きなように生きるためには、徹底的に力を見せつけて屈服させないとな」

今までの経験から、太郎がどんなに清く正しく生きようとも、ただ弱いというだけで集団の力でいじめられ、ストレスのはけ口とされていた。彼にはもはや正義というものを信じられなくなっていたのである。

「正義なんて、社会の中で有利な立場にいるものに都合のいいことを正当化しているにすぎない。俺みたいに貧しくて、容姿も学歴も優れてない者は、一生踏みつけにされて幸せな結婚すらできないんだ。だけど……」

太郎は、眼下に広がる都市を見下ろす。

「幸いなことに俺は力を得た。この力で、すべてに戦いを挑んでやる」

そうつぶやくと、太郎は国会議事堂にやってくる。

「手始めに、日本の最高権力者に挨拶でもするか」

そういうと、太郎は議事堂に入っていくのだった。



国会議事堂

日本の政治を決めるそこでは、通常国会を開くために多くの議員が集まっていた。

その中に一人、顔のあちこちに絆創膏を張り付けた議員がいる。

「いや~浮田法務大臣。この度は大変でしたな」

「せっかくの息子さんの結婚式にテロリストに襲撃されるとは、心中お察ししますぞ」

同じ党の議員にからかい交じりに慰められて、浮田法務大臣は不機嫌な顔をする。

「まったくです。ですが、あのテロリストは全国手配をしました。すぐに逮捕されるでしょう」

腹立ちまぎれに言い放ち、法務大臣の籍に座る。彼は太郎の不可解な力を見ても、日本の警察の力を信じていた。あんな訳の分からない犯罪者など、国家の力でねじ伏せることができると信じている。

「今に見ていろ。奴が捕まったら、色々と罪をかぶせて死刑にまで追い込んでやる」

国家権力で復讐をする妄想に浸っていると、壇上に総理大臣の岸本総理が立った。

「え~では、パーティ券の裏金についての野党の質問にお答えします」

審議が始まった時、いきなり議事堂の扉が開いて警備していた警官が告げた。

「議員の皆さま。お逃げください。テロリストの襲撃が……」

そこまで言ったところで、後頭部に衝撃をうけて気絶する。入ってきたのは、鎧兜に黒マントの怪人だった。



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