王道学園のモブ

四季織

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第26話 付き合ってください

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 その足で先輩のところへ行って、嫌がらせ犯のことを報告した。
 けど、先輩は、先に風紀委員長から聞いていたらしい。

 良かったなって言いながらも、なんか先輩の様子がおかしい。

 エッチしてから、俺に対する雰囲気がますます甘くなって、気づいたら俺を見ていたり、隙あらばいちゃいちゃしてくるのに。
 そういうときは微笑んでいたり、嬉しそうだから、すっごい照れるんだけど。

 なんか、今日はぎこちないっていうか……。

「俺達は付き合ってなかったのか?」
「はい?」

 眉を下げた先輩の顔は、困惑していた。

 俺はそんな先輩に、困惑した。


 どうも、俺が言った「俺と先輩は付き合ってるのかな?」発言は、一ノ瀬から親衛隊長の耳に入り、先輩に届いたらしい。
 一ノ瀬、覚えてろ。



「俺は、付き合ってるつもりだった」

 先輩は、5月に先輩の部屋でキスしたときに、思いが通じ合ったと思ってたんだって。
 だから、あんなにご機嫌だったのか。


「で、でも、お付き合いしてくださいって言ってから、始まるのかと」
「ん?」
「俺、今まで付き合ったことないから」

 だから、俺は先輩のセフレになってしまったのかって落ち込んだんだ。

 小さい声で言うと、先輩が口を押さえて天を仰いだ。
 たまに、こういうポーズをとるよね。



 先輩が、俺の腰を引き寄せて、反対の手で顎をクイッと上げた。

「俺と付き合ってほしい」


 んんんっ!!!
 イケメンの破壊力!! リアル顎クイ。


 自分から「付き合って」って言われてないって言っといてなんだけど。
 押し付けられた腰に、もじもじしてしまう。


「返事は?」
「はっ、はいぃぃ」
「よし」


 爽やかな笑顔なのに、口を貪られて、頭がぼうっとなったまま、寝室に連れ込まれた。


 あっ、や、先輩、そこっ。

 ものすごかった。


 小さい声で「あの交通委員、どうするかな……」とか呟いていたんだけど。
 どうもしないでください!!




 ゲームは、この文化祭で終わる。
 告白されて、親密度が高かったら両思いになってエッチする。
 トゥルーエンドだ。


 でも。
 渋谷に言ったように、ここはゲームの世界だけど、俺達の人生はゲームじゃない。


 ここで終わるわけじゃないし、俺達の学園生活は続いていく。
 これからは、悩むたびに多くの選択肢がでてくるけど、どれが正しいか分からないまま進んでいくんだ。


 俺は元々モブだから、自分で考えて行動するしかなかった。
 まあ、普通はそれが当たり前なんだけど。

 渋谷は主人公で、選択肢なんてもんがあって、しかもその答えを知っていたから。
 囚われすぎて気付けなかったんだろうと思うと、渋谷も気の毒だな、と思う。


 それでも、文化祭が終わり、主人公だった渋谷がいなくなって。
 なんかふっと、空気が軽くなった気がする。

 ゲームの強制力はなかったけど、呪縛のようなものはあったのかも知れない。


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