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15 久しぶりのリロイ様

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 今日のお客様は、久しぶりのリロイ様だった。

「元気そうだね」

 久しぶりすぎて非の打ち所のない笑顔が眩しい。
 もし、ここがファンタジー世界だったらエルフって言われても納得だよな。
 美形で温和で唯一の欠点は勃起不全くらいか……いや、大きな欠点だ。

「今日はね、お土産があるんだ」

 しばらく他の街に出張だったらしい。
 珍しくうきうきした感じで鞄をあさると。

「はい、ぽめ太」

 リロイ様が俺の手に乗せてきたのは、手の平サイズの木彫りの熊だった。
 しかも二足歩行で立ち上がったリアルな熊だ。腕が4本ある。

 一瞬止まってしまった。

 困ったな。
 泣きそうなんだけど。怖くて。

 リロイ様の感想を待ってるであろう満面の笑みと熊を交互に見て、

「わぁ、ありがとうございます! すごい熊ですね!」

 無難な答えに逃げてしまった。日本人だなぁ。

「そう! 可愛いよね」
「かわっ?!」

 ウソぉ、可愛いなんて一言も言ってないのに!
 どこから見ても、俺を威嚇してるんですけど。
 曖昧に笑って、もう一度手の平の熊に視線を落とす。やっぱり怖い。

「良かった、喜んでくれて。イリヤのヤツ、すっごい迷惑そうでね」

 イリヤというのはオーナーの名前だ。
 二人は昔からの友人らしい。当然、店ではそんな素振りは見せない。

「折角、イリヤには等身大の木彫りを買ってきたのに」

 いや、それは……。
 むしろ嫌がらせだろ。


「ルオヴィッツ村っていってね」

 リロイ様はテーブルの上のメモ用紙にさらさらと何かを書き始めた。簡潔に書かれた地図のようだった。

「ここが私達の街……」

 湾になってるところを指す。その反対側を王都と指してから、中間地点に峡谷らしい山の模様とバツを書き込んだ。
 地図は見たことあるけど、文字が読めないからすごく助かる。

「木彫りが名産なんですか?」
「いや。村に1軒しかない宿屋に売ってたから買ってきたんだ。鹿鍋もご馳走になったよ」

 話しながら、流れるように俺のお仕事に移る。
 愛着すらあるふにゃちんにキスしてから、口に含んで吸い上げる。
 手で刺激しながら、舌も使って口で上下に扱いてみた。

 相変わらず勃たない。心が折れそう。

「ルオヴィッツ村に渡り人がいたよ、すれ違いで会えなかったんだけど」
「え?」

 思わず口を離してしまった。
 リロイ様の細くて綺麗な指が、涎にまみれた俺の口の周りを拭ってくれる。

「山の中で村の青年と暮らしてるらしい。その青年と結婚するとかで王都に届けに行ったんだそうだ。日本人とかいう種族らしいよ」
「え!?」

 待って! いきなり情報多すぎ!
 日本人とか男同士で結婚とか、一体どんな人なんだろう?
 聞きたいことは山ほどあるのに、うまく言葉が出てこない。

 リロイ様は俺が渡り人って勘づいてそう。だからこんな話をしたのかな。
 でも、知らないふりをしてくれてる、そんな気がした。


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