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本編

最終話_最初で最後の-1

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再戦後、アズライト蒼矢との一戦で重傷を負った影斗エイトは、『転異空間』解除までにエピドート葉月の治癒では完全に癒えず、負傷と疲労を残したまま帰還した。
わりとすぐに気付いた蒼矢ソウヤに比べ、帰還後気を失ってからしばらく目覚めず、そのまま楠瀬クスノセ邸で一夜を過ごし療養していた。

靴へ履き替えて玄関から回ってきた蒼矢は、サンダル履きで中庭の草木をいじる影斗の後ろ姿を見、立ち止まる。
長袖にスウェットという装いでわかりにくかったが、首筋やわずかに見える手首から医療テープや包帯が見え、全身に傷が残っていることが容易に察せられた。
落ち葉が踏まれて割れる音に気付いた影斗が振り返り、遠くで立ち尽くす蒼矢へ普段と変わらない悪戯気な笑顔を投げた。

「――よぉ」

緊張を滲ませる面差しを呼び寄せ、影斗はいつもの調子で話しかけ始める。

「話したいことがあるんなら、断らずに勝手に来いよ。別に逃げやしねぇんだし」
「だって先輩、怪我されてたし…、会わないとも言われてましたから…」
「あんな約束もんもう生きてねぇだろ、お前から破ってきたんだろうが。…こっちははっきり覚えてんだからな」
「…先輩も、話してはくれないんですよね…」
「二重人格並みに変貌したお前の一部始終を、俺視点での感想を交えて伝えて後悔無く受け入れられるんなら、聞かせてやってもいいぜ」
「っ…」

影斗から軽いトーンでつらつらと返され、蒼矢は言葉を詰まらせる。
そして改めて面差しを正し、数歩近付いてから頭を下げた。

「本当に…ご迷惑をおかけしました。『転異空間』でのことも…怪我を負わせてしまい、申し訳ありません」
「…まぁ、だいぶ衝撃的だったな。迷惑かけられた気はしねぇけど、手は焼かされたな、色々と」
「すみません…」
「だから謝んなっての。確かにお前にも落ち度はあっただろうけど、元を正せばあのカナヅチにも原因はあっただろ。…それこそ、初戦に全員で行けてればそもそも起きてなかったかもしれねぇしな」
「…」
「慰めてるんじゃねぇぞ? 単なる事実と可能性の話だ」

そうつらつらと語ると、影斗はひと呼吸置いてから、ゆっくりと続けた。

「…次からはのっけから"優秀がブレーン"が参戦するんだ、今回みてぇなことにはならねぇだろうよ」
「!」

小声ながらもそう確かに紡がれた言葉を聞き、蒼矢は顔をあげる。放心と安堵が混ざった面持ちを見せる彼へ、影斗は息をつきながら目元を緩ませた。

「…敵わねぇよ、お前には」
「! …どういう意味ですか…?」
「まんまだよ。完敗だ、完敗。お前は、俺の手にはとても負える奴じゃなかった。…とんだ勘違いだった」

影斗は落ち葉を拾ってくるくると指で回すと、手元から再び蒼矢へ視線を戻す。
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