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本編

第16話_罠返し-1

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真っ青な水の層へと侵入したロードナイト葉月エピドートは、それぞれに風の防御壁を纏わせ、水底を目指す。
周囲へ目を凝らしつつ、ロードナイトは後方に続くエピドートへ声を掛ける。

「平気っすか?」
「…大丈夫。怖がってなんかいられないからね…」

懸命に心を落ち着かせながら、エピドートは続ける。

「時が経てば経つほど、おそらく地上の戦況は悪くなる。どっちに転んでも、無事じゃ済まされない。…一刻も早く[侵略者]を探し出さないと…!」
「こっちはこっちで、だいぶ色々と宛てが無いっすけどね…」

そうぼやくロードナイトの背中を、エピドートは後方からじっと見つめた。

「――こんな時にだけど…、
「!? っえ、なんすか急に」

脳内会話にするでもなく、突然『現実世界』モードで話しかけてきたエピドート葉月へ、ロードナイトは若干動揺しながらも応じる。

「君は…蒼矢ソウヤをどうしたいと思ってるの?」
「…!!?」

一旦落ち着きを取り戻したところへ更に揺さぶられるような質問を投げられ、思わず烈は葉月の方へ振り返る。

「あ、ごめん。前だけはちゃんと見て」
「すっ、すんません! …いやでも、ちょっとびっくりしますって、いきなりそりゃ」

前へ向き直った烈は誤魔化すように小さく漏らすが、沈黙を守る葉月の気配に、やがて息を吐き出した。

「どうしたいって…、わかんねぇっすよ。俺ひとりじゃ決められないんで」
「蒼矢に気持ちは伝えてないの?」
「伝えてないっすよ。あいつが一番に心を許せる奴になりたいとは言いましたけど」

その言葉に、葉月は無言のまま目を見張った。

「――俺、ずっとあいつの幼馴染でいたかったんです。それが、俺が思うあいつに一番近い存在だったから。腹から笑えたり素を出せたり、自然体で付き合えることが、関係として一番良いと思ってた。…でも、それじゃ駄目だったんです」

烈はまっすぐ前を見据えながら、ゆっくりと話し続ける。

「歳食うにつれて…自分の中だけに溜めこむ部分が、少しずつだけどどんどん増えてった。笑い合っててもそれは発散させてるだけで、発散させたい"元"はいつからかお互いに隠しちまってた。俺も、あいつも」

…心配かけたくないって気持ちからじゃなかった。…ただ、誰に言ったって状況は変わらない。じゃあ言ったって仕方ない…、…諦めみたいなもんだった。
…きっと、蒼矢も同じようなところがあったはずだ。
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