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本編
第10話_希薄な脅威に隠されたロジック-1
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見守っていた葉月と陽もひと息ついて安堵し、改めてセイバー5人フルメンバーで戦闘に臨む。
「…実際、君がきてくれて助かった。[侵略者]はまだ姿を現してないし、[異形]の弱点属性や急所も全然あたりがついてないんだよ」
エピドートがそう声をかけると、蒼矢は彼をじっと見つめ、首を横に振った。
「――いえ、[侵略者]はもうこの場にいます」
「えっ?」
「は!?」
サルファーも一緒になって驚きの声をあげると、アズライトは周りをとり囲う[蠕虫]へ視線を投げた。
「『現実世界』でも、あれだけの[異形]が出現していながら[侵略者]の気配はごくわずかでした。起動装置も最後まで反応しなかった…転送できたから出没地点は確かにあったと思いますが、場所を固定していて広範囲を遠隔操作していたんだと思います」
アズライトの考察に、セイバーたちは一様に眉を寄せる。
「…? そんなことが可能なのか…? いままでの戦歴からして[侵略者]複数体か、複数体分の強大な支配能力を持つ個体でもなければ到底無理だ」
専用能力の『回想』を持つエピドートがそう意見すると、アズライトはふり向いて小さく頷いた。
「今回の個体は特殊ではありますが、仕組みはおおよそ推測できています。[侵略者]はおそらく、自分の体躯の一部を切り離して[異形]へ埋め込み、操ってます…そうすることで、こちらが『転異空間』を開けるか否か瀬戸際のラインに気配をとどめ、自分へよほど接近しないと察知できないようにしていたんです」
「…!!」
「また、[異形]はただの駒で急所や弱点属性はないと推察してます。代わりに、埋め込まれた[侵略者]の欠片が事実上の急所と言えますが…[異形]ごとに埋め込まれた部位はまちまちです。だから急所を部位として特定できず、体躯が維持できないほど破壊しないと確実に倒せない」
『現実世界』での状況の段階から少しずつ考察を重ねていただろうアズライトの口上を、4人は面持ちを固めたまま聞き続けていた。
アズライトは再び無数の[蠕虫]たちを見渡した。
「…これも推測ですが、『現実世界』から引き続いてこれだけの数を使役するには、相当数の欠片が必要…[侵略者]のもとの体躯のほどが知れませんが、切り離せる欠片には限りがある。…[奴]にとっても消耗戦になっているはずです」
「…まぁその線が濃いんだろうが、[侵略者]にしても、消耗しきった先に勝機があると考えてないんじゃねぇか? [奴]にとっちゃ『転異空間』にいても不毛なだけなんだし、消耗しきる前に逃げられちまうかもしれねぇぜ」
再戦への危惧をほのめかす影斗の言に、アズライトは静かに首を横に振った。
「いえ、[侵略者]はここから離脱することはないでしょう。さっきまでは離脱も視野に入れてたかもしれませんが、今は策を切り替えてるはずです」
「…は? 根拠は何だ?」
そう促されるものの、アズライトはオニキスとは視線を介さず遠くを見つめ、ふいに装具『水面』を呼びだした。
「[奴]の狙いも…そして、奴をおびき出す方法も、もう想定がついてます」
「…実際、君がきてくれて助かった。[侵略者]はまだ姿を現してないし、[異形]の弱点属性や急所も全然あたりがついてないんだよ」
エピドートがそう声をかけると、蒼矢は彼をじっと見つめ、首を横に振った。
「――いえ、[侵略者]はもうこの場にいます」
「えっ?」
「は!?」
サルファーも一緒になって驚きの声をあげると、アズライトは周りをとり囲う[蠕虫]へ視線を投げた。
「『現実世界』でも、あれだけの[異形]が出現していながら[侵略者]の気配はごくわずかでした。起動装置も最後まで反応しなかった…転送できたから出没地点は確かにあったと思いますが、場所を固定していて広範囲を遠隔操作していたんだと思います」
アズライトの考察に、セイバーたちは一様に眉を寄せる。
「…? そんなことが可能なのか…? いままでの戦歴からして[侵略者]複数体か、複数体分の強大な支配能力を持つ個体でもなければ到底無理だ」
専用能力の『回想』を持つエピドートがそう意見すると、アズライトはふり向いて小さく頷いた。
「今回の個体は特殊ではありますが、仕組みはおおよそ推測できています。[侵略者]はおそらく、自分の体躯の一部を切り離して[異形]へ埋め込み、操ってます…そうすることで、こちらが『転異空間』を開けるか否か瀬戸際のラインに気配をとどめ、自分へよほど接近しないと察知できないようにしていたんです」
「…!!」
「また、[異形]はただの駒で急所や弱点属性はないと推察してます。代わりに、埋め込まれた[侵略者]の欠片が事実上の急所と言えますが…[異形]ごとに埋め込まれた部位はまちまちです。だから急所を部位として特定できず、体躯が維持できないほど破壊しないと確実に倒せない」
『現実世界』での状況の段階から少しずつ考察を重ねていただろうアズライトの口上を、4人は面持ちを固めたまま聞き続けていた。
アズライトは再び無数の[蠕虫]たちを見渡した。
「…これも推測ですが、『現実世界』から引き続いてこれだけの数を使役するには、相当数の欠片が必要…[侵略者]のもとの体躯のほどが知れませんが、切り離せる欠片には限りがある。…[奴]にとっても消耗戦になっているはずです」
「…まぁその線が濃いんだろうが、[侵略者]にしても、消耗しきった先に勝機があると考えてないんじゃねぇか? [奴]にとっちゃ『転異空間』にいても不毛なだけなんだし、消耗しきる前に逃げられちまうかもしれねぇぜ」
再戦への危惧をほのめかす影斗の言に、アズライトは静かに首を横に振った。
「いえ、[侵略者]はここから離脱することはないでしょう。さっきまでは離脱も視野に入れてたかもしれませんが、今は策を切り替えてるはずです」
「…は? 根拠は何だ?」
そう促されるものの、アズライトはオニキスとは視線を介さず遠くを見つめ、ふいに装具『水面』を呼びだした。
「[奴]の狙いも…そして、奴をおびき出す方法も、もう想定がついてます」
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