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本編

第9話_選ばれた者が在るべき場所-5

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『転異空間』では、4人のセイバーが[蠕虫ワームの異形]との戦闘を続けていた。

彼らの読みどおり戦況は長期化しつつあり、地中からとめどなくわき出てくる灰色の[蠕虫ワーム]を切断または粉砕する攻撃が際限なく続いていた。

[蠕虫ワーム]の動きは鈍重で、触手を伸ばして殴打するまたはからみつく以外の攻撃行動はせず、地面を這うか尾部を地中に埋めたまま体を引きずるかでしか動くこともできないようで、俊敏なセイバーたちの前にはほぼ無力だった。
しかし一方で、数箇所へダメージを与える程度ではこと切れず、細かく切り刻むか粉砕するかでようやく沈黙するというタフネスさも見せていた。

セイバーたちは当初から消耗戦を見越し、連携して攻撃役とサポート役を切り替えながら戦い続けていたが、あまりにも終わりの見えてこない状況に、表情が幾分か曇り始める。

「こいつら…どんだけ湧いて出てくるんだ…?」
「倒しても倒してもきりがねぇし、一撃じゃ死なねぇし、もーうざ過ぎ!」

サルファーが癇癪をおこし始め、横目で見ていた葉月エピドートが疲れか嫌気か判別のつかないため息をもらす。

「…急所が見つけられてないのもまずいよね…余計な手数ばかり消費してしまってる」
「過去にもあったが、急所が分散してるタイプかもしれねぇな…」
「属性も判別つかねぇよな。なんでも効くみたいだから、もはや無いのかもしれねぇけど」
「いや、弱点属性で攻撃してないから落ちにくくなってるって可能性もあるよ」
「弱点属性で急所突かねぇと終わらねぇってパターンか? 地獄だな、そりゃ」
「…そういう最悪なルートだけは、勘弁願いてぇな…」

影斗オニキスロードナイトも加わって考察を言い合うが、決め手に欠けるため結論が出ることはなく、沈黙が降りる。

「…」

頭の中に声が響かなくなると、彼らは一様に"決め手"を導き出すことができる『存在』を思い出していた。

なんとなく心ここにあらずになる間にも、[蠕虫ワーム]は硬い地を突き破り、ぼこぼことセイバーたちを囲うように生えて出てきた。

「…慎重に探りながらきっかけ見つけるしかねぇ。まだやれるよな?」
「おう!」

そうオニキスが発破をかけ、全員が応えた時、4人はみな同じ瞬間にひとつの気配がこの空間に現れたことを察知した。

「……!」

気配を感じた方へ一斉に振り向くと、やや離れたところに青い戦闘スーツをまとった人型のシルエットがひとつ、空中に浮かんでいた。
『転異空間』へ遅れて転送してきた蒼矢――『アズライト』は、静かな表情で彼らを見やっていて、気付かれたことを察するとひと飛びで接近して合流する。
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