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本編

第8話_地中からの怪異-2

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が、蒼矢ソウヤの口へとどく前に、肉の欠片は地面へ落ちていく。
瞬間、ごく近くでなにかが膨れあがるような轟音が響き、大きな縦揺れを感じた。

「…!?」
「えっ…、今のなに? 地震!?」

地面から突き上げる振動に驚いたカレンが足元へ視線を落とすと同時に、蒼矢は素早くあたりを見回す。
すると、ひらけた景色の至るところから爆発音と共に砂煙があがり、ついで人々の悲鳴があちこちから届く。

「……!!」

蒼矢の全身に、微量の"震え"が伝わる。
周囲の人々にはまだ状況がのみ込めず、ざわめいたりきょろきょろと首を動かしたりする程度の反応しか見られなかったが、蒼矢だけは核心に近い勘をもって事態を受けいれていた。

…自然災害じゃない。これは…!

徐々に悲鳴がこちらへ近付き大きくなっていく中、蒼矢はカレンの手からトレーを取って手近なテラステーブルへ置くと、彼女の肩を引き寄せて誘導する。

「? ソウヤ?」
「この敷地内から出よう。ただの騒ぎじゃない」
「さっきのは地震じゃないの?」
「いや、もしかしたら人為的なものかも…爆発音がした」
「! 確かに…まさか、テロ…!?」
「わからない。とにかく、ここから離れた方がいい」

戸惑い質問攻めしてくるカレンへ曖昧に返事をしながら、蒼矢は逃げ道を探す。
元々ひとで溢れかえっていた広場は、少しずつなにが起きているか察する人々や、把握できないまま周りの動きにつられる人々で次第に密度が増し、四方八方へ流れる人波で混乱をきたし、思うように身動きできなくなり始めていた。

蒼矢はカレンの手を固く握り、人々の間を抜けながら、広場の出入り口を目指して小走りに動く。

が、進んでいた方向のちょうど真正面のごく近くで再び爆音が鳴り、砂煙とともに細かいコンクリートの破片が空中高く吹き飛び、周囲へ降り注ぐ。

「っ…!」

悲鳴と共に前方の人波がドミノ倒しに崩れ、蒼矢は寸前で身を引いて巻き込まれを回避する。

「こっちは駄目よ…!」

背後のカレンの不安気な声を聞き、蒼矢は今一度周囲を見渡す。

広場ここは囲まれてしまってる…、この場からは脱出できない…!

蒼矢は方向を変え、商業施設の立ち並ぶ区画へ向かう。
広場から離れていくにつれてひとの密度は減って動きやすくなり、ふたりは倉庫群へと駆け、建物の隙間にできた影を利用して潜み、しゃがみこむ。
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