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本編

第5話_英国生まれの花-2

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ロビーで蒼矢ソウヤを待っていた若い女性は、にこりと笑んで彼に手を差し出した。

「改めて初めまして、カレン・キサラギです。英国では、ユイコさんにはいつも母共々お世話になってます。よろしくお願いしますっ」
「…髙城タカシロ 蒼矢です。こちらこそ、よろしくお願いします」

冷静さを取り戻した蒼矢はつられて笑顔を見せ、手を握って応えた。

くだんの来訪者・カレンは、シルエットがわかりにくい膝丈のボアコートを羽織っていたが、中に着るショートパンツからのびる脚は細くすらりとしたスタイルで、身長が高く、少し底の厚いスニーカーを履いて蒼矢とほぼ視線が合う程度の背丈だった。
元父親が欧州人のため顔立ちは日本人離れしていて、髪色は明るい茶色、瞳は空色で、肩にかかるほどの長さの緩やかな巻き毛を生え際から両サイドへ流していた。

ハーフといえど見た目はほぼ外国人の彼女だったが、母親の影響か日本語がとても流暢だった。
母の結子ユイコの見立てでは、蒼矢もカレンもバイリンガルなので、会話に困ることはないだろうとのことだった。

自己紹介し合うと対面してソファへ座り、さっそく今日の行程について話し合う。

「ソウヤくんはトウキョウに住んでるのよね。どこかお勧めのスポットはあるのかしら?」
「…! …実は…、これといって自信を持って案内できるものがなくて…。行きたいところがあればサポートはするつもりです」

好奇心が前面に押し出されたカレンの表情を見、必死になって事前リサーチしたものの早速自信をなくした蒼矢は、そう答えてすまなそうに肩を縮めた。

「…そうなの?」
「はい…面目ありません」
「ううん、いいのよ」

しかしカレンは、ひたすら恐縮する蒼矢を見て軽く了承すると、脇に置いてあったトートバッグを膝に乗せ、大小さまざまな本や雑誌を両手に抱えながら取り出す。

「気にしないで…私、沢山調べてきてあるから」

海外旅行のガイド誌といえばの『Lonely planet』や『DK Eyewitness Travel Guide』、国内の出版社が発行元の『地球の歩き方』や『じゃらん』。
ソファ前のローテーブルには、英字版から日本語版、緻密な内容のものからライトなものまで、多岐に渡る観光誌がざらっと並べられた。

あふれ出てきたそれらガイドブックの数々を見、蒼矢は再び顔を固まらせた。

「今回の旅行は、ママとは2か月くらい前から予定立ててて。旅行誌買いあさって行くべき名所ピックアップして、巡るルートや交通機関も乗り換えも、全部調べて行程考えてきたの…!」

カレンは活きいきとそう言い、頬を染めた。
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