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本編

第4話_母の依頼と、父の助言-4

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そうてきぱきと話をまとめ、さっそく結子ユイコは来たる予定へ向けての段取りを組み始める。

『旅行当日前までに一度、zoomで顔合わせする時間をつくりましょう。お互いにお顔がわかってないと不便だろうし、会う前に少しお話しておけば安心でしょう?』
「はい、わかりました…」
『夜なら大体空いてるかしら? あなたの都合のいい時間帯に合わせてもらえるよう、お母さんがセッティングしてあげるわっ』
「ありがとうございます」
『じゃあ、日程が決まったらまた連絡するわね。あ、お父さんには代わらなくていいわよ、このまま切って頂戴。…愛してるわ、蒼矢…おやすみなさい』

ぷつりと電話が切られると、まるで直撃した竜巻が通過していくように、怒涛の喧騒の名残は少しずつ薄れていった。

「…」

少しばかりその場に棒立ちになった後、蒼矢ソウヤは父・静矢シズヤへスマホを返す。

「…引き受けたのか」
「…はい」
「日程は」
「今週末の日曜です。事前にビデオ通話で顔合わせするそうです」

息子のか細い返答を聞きながらスマホを受け取ると、静矢はちろりと彼を見やる。

「…先約が入ってたんじゃないのか?」
「…!」

会話中の表情から察したか、まだ放心した面持ちでいる息子へ言葉を投げる。
父から胸中を見透かされたような問いかけをされ、蒼矢は少し目を見張るが、すぐに表情を戻す。

「…入ってましたが、都合をつけるので問題ありません。…先方にはこの後すぐ連絡を入れておきます」
「…」

蒼矢は床へ目を落としながら、そう答えた。
静矢はそんな息子の面持ちをじっと眺めていたものの、それ以上言及することはなく、再び浅くため息を漏らした。

「当日の支払いは極力家族カードカード払いにしなさい。必要なら交通系ICも手配して、先方に負担させることがないように」
「はい」

そう簡潔な短い指示を送ると、ビジネスバッグを置いたダイニングテーブルへと離れていく。

「…父さん、今日は早かったんですね」
「荷物を取りに戻っただけだ。来週半ばまでの予定で急な出張が入った…この後すぐに発つ。わるいがこの件は全てお前に任せる」
「わかりました、大丈夫です。…いってらっしゃい」

父の言葉に小さくもはっきり応じ、蒼矢は自室へ向かおうと荷物を拾いあげる。

「蒼矢」

と、リビングドアへ歩きかけたと同時に背中から声がかかる。
ふり向くと、静矢はスーツの上着を脱いでソファへ腰かけ、視線で蒼矢を呼び戻していた。
戸惑いつつも荷物を再びおろし、促されたとおり斜め向かいに座ると、静矢は自分の手元を見ながらぼそりと言葉を紡ぎだした。

「…どうなんだ、最近は」
「!」
「大学では上手くやってるか」
「はい、特に問題はありません。直近でやった実験発表の内容と講評・評価については、先週メールで送ったとおりです」
「神社での武道は順調か」
「ええ、今日は久々に葉月さん先生と模擬試合をさせてもらいました。稽古の成果が表れてると、前向きな評価を頂けました」

いつもSNSでしか近況報告する機会がなく、蒼矢は久しぶりの対話でのやり取りに、珍しさと新鮮さを感じながら父からの問いに答えた。
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