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本編
第4話_M大寮の一室で-1
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その週の金曜日、蒼矢はコマ数が少なく早帰宅できることを利用して、いつものように図書館へは寄らずにすぐ大学を出た。
しかし自宅方面へは向かわず、電車でいつもの帰り道とは反対方向へ移動していく。
着いた場所は、蒼矢の通うT大からほど近い、私立M大の学生寮だった。
M大は影斗が通っている大学であり、学費や生活費を自力で捻出している彼は、入試合格するや否や実家を出、学生寮へと生活拠点を移してから、ずっとひとり暮らしをしている。
基本的に父親とは折り合いが悪いため、家へ帰ることはほぼないが、夫を婿として迎え、父と同居している姉とは年1,2ペースで定期的に会い、生存確認も兼ねて軽く近況報告をあげているらしい。
M大の学生寮は、敷地面積が非常に広いうえに寮らしからぬ高階層で、造りが近代的で洗練された雰囲気だった。
在学大の寮の外観だけは知っている蒼矢は、国立大と私立大の設備投資の格差を思い知らされ、エントランスを前にただただ圧倒されるように、うず高い寮棟を見上げていた。
実際、蒼矢がここを訪れたのはこれでまだ2度目である。
親しくしている影斗が住み、自分が通うT大からもわりと近いのだが、ふたりで会う場合は影斗が蒼矢の方まで迎えに来ることが大半で、蒼矢から影斗の側へ尋ねる機会がほぼ無かったためだった。
過去の記憶を辿ってエントランス脇の受付兼守衛所を訪ね、入館届へ記入し、寮の管理人が来るのを待つ。
「――お待たせ」
寒空のもと、手持ち無沙汰にあたりを眺め、整えられた緑地や全面ガラス張りの内廊下に目を奪われていると、後ろから声がかかり、蒼矢ははっとして受付側へふり向く。
視線の中央には、エントランスを背にして若い男がひとり立っていて、目が合うとにこりと笑った。
「寮長の廿日市です。今日は管理人さんが不在なんで、俺が応対するね」
「…髙城です。お手数をおかけします、よろしくお願いします」
挨拶を交わすと、廿日市は蒼矢へ首かけの入館証を渡し、さっそく温かな寮内へと誘っていく。
しかし自宅方面へは向かわず、電車でいつもの帰り道とは反対方向へ移動していく。
着いた場所は、蒼矢の通うT大からほど近い、私立M大の学生寮だった。
M大は影斗が通っている大学であり、学費や生活費を自力で捻出している彼は、入試合格するや否や実家を出、学生寮へと生活拠点を移してから、ずっとひとり暮らしをしている。
基本的に父親とは折り合いが悪いため、家へ帰ることはほぼないが、夫を婿として迎え、父と同居している姉とは年1,2ペースで定期的に会い、生存確認も兼ねて軽く近況報告をあげているらしい。
M大の学生寮は、敷地面積が非常に広いうえに寮らしからぬ高階層で、造りが近代的で洗練された雰囲気だった。
在学大の寮の外観だけは知っている蒼矢は、国立大と私立大の設備投資の格差を思い知らされ、エントランスを前にただただ圧倒されるように、うず高い寮棟を見上げていた。
実際、蒼矢がここを訪れたのはこれでまだ2度目である。
親しくしている影斗が住み、自分が通うT大からもわりと近いのだが、ふたりで会う場合は影斗が蒼矢の方まで迎えに来ることが大半で、蒼矢から影斗の側へ尋ねる機会がほぼ無かったためだった。
過去の記憶を辿ってエントランス脇の受付兼守衛所を訪ね、入館届へ記入し、寮の管理人が来るのを待つ。
「――お待たせ」
寒空のもと、手持ち無沙汰にあたりを眺め、整えられた緑地や全面ガラス張りの内廊下に目を奪われていると、後ろから声がかかり、蒼矢ははっとして受付側へふり向く。
視線の中央には、エントランスを背にして若い男がひとり立っていて、目が合うとにこりと笑った。
「寮長の廿日市です。今日は管理人さんが不在なんで、俺が応対するね」
「…髙城です。お手数をおかけします、よろしくお願いします」
挨拶を交わすと、廿日市は蒼矢へ首かけの入館証を渡し、さっそく温かな寮内へと誘っていく。
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