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本編
第18話_幾年越しのフルメンバー
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昨日[異形]の出現したショッピングモールは、倒壊した一部の敷地を立ち入り禁止にし、入場人数に制限を設けて営業を再開していた。
セイバーのほぼ全員が近郊住みであるため、連絡を交わしつつ、屋外駐車場端へ集合していく。
「近くて助かるぜ。しかも再戦だから場所も明確だしな」
出来れば人目を避けたいところなのに、昨日と同じく派手色の柄シャツに蛍光色のダボついたパンツという、どこぞのショーにでも出そうな格好の晃司の隣で、無地のロンTにデニム姿の灯が苦い表情をしながら額を押さえていた。
「…駄目だ。どうあっても目立つんだ、お前らは」
「あ?」
「え?」
朝から叩き起こされて少し不機嫌そうな晃司と、いつも通り着物に草履姿の葉月が同時に返答する。
自覚のない二人からの視線を受け流し、灯は彼らから少し離れて控える蒼矢を見やる。
「怪我の具合はどうなんだ?」
「…大丈夫です」
「切り傷になってるわけじゃないから、無理に身体を動かさなければなんとか、ね。本当は安静にしてて欲しいけど…」
補足を入れる葉月へ、灯は軽く頷いた。
「[奴ら]と再戦になる場合、場所は前戦で出現した地点とだいたい同じで、近日中に現れる。今日になるとは限らないが、見張れる内は待機してないとな」
「丁度日曜だし、出来れば今日中に片をつけたいね」
「全くだ、こうして多忙なタイムスケジュールの合間縫って会いに来てやってんだからな」
「お前は毎日日曜日だろうが。明日以降ならお前一人で頑張れよ」
「~!! お前には前途有望な苦学生への労りってもんがないのか! 少しは"お兄様"を敬え!!」
鼻で笑ってみせる灯へ晃司が啖呵を切り始めたところで、全員の胸元がそれぞれのシンボルカラーで輝き始めた。
「…来やがったな」
「…! 待って下さい」
「あん?」
即刻鉱石を握ろうとする晃司を見、慌てて蒼矢が声をかける。
「影斗先輩が来るまで、待ってもらえませんか?」
「はぁ? 何で俺らがそんなことしなきゃならねぇんだよ。だいたい、昨日の今日であいつが来るわきゃ――」
そう訴えを突っ返そうとする晃司へ大きく歩み寄った蒼矢は、鼻先に自分のスマホ画面を差し出してみせる。表示されていたSNSメッセージには、影斗から彼宛へ"行く"とだけ返事が書いてあった。
「…お願いします」
スマホの背後から真剣な眼差しを送ってくる蒼矢をひと睨みし、晃司は軽く舌打ちした。
「…5分だけやる。それ以上かかるようなら帰れって言っとけ」
「ありがとうございます」
程なくしてバイクのエンジン音が届き、影斗が集合場所へ駆け寄ってくる。やや呼吸を乱している彼へ、他面々の視線が集まった。
灯は軽く息をつくと、にやりと笑った。
「…初めてだな、"5人"揃うのは」
「……!」
どこか感慨深そうにも感じられる彼の台詞に、葉月は目を見開き、次いで少し頬を染めながら微笑った。
「そうだね…、なんだか胸に来るものがあるね」
「…浸ってる場合じゃねぇだろ、お前ら」
そんな二人へ、晃司は睨んでみせる。そして棒立ちになっている蒼矢の肩を引き寄せ、荒々しく頭に手を置いた。
「俺たちは前回戦で失敗してんだ。実質現状最高戦力になる今回で、確実にぶっ潰す。[奴]が狙ってくるだろうこいつを死守して、なおかつこいつが"仕事"を全うする。それが出来なきゃぁ次は無ぇ」
そう言い放つと、ぎろりと影斗へ視線を変える。
「影斗! こいつを無事に帰したいんだったら、ハナからケツまで言うこと聞けよ。特に俺の言うことは絶対だからな」
凄みをきかせながら釘を刺してくる晃司を、影斗は落ち着いた表情で見返していた。
「…あんたこそ、蒼矢をあんまりぞんざいに扱うんじゃねぇぞ」
「あぁ? っ…」
言い返そうとした晃司の手の下で、影斗に目くばせされた蒼矢が彼の元へ近付いていく。
年下二人を腕組みしながら睨む晃司の肩に、灯がやや強めに手を置いた。
「…途中までは良かったのに。いつもあと一歩だな、お前は」
「!? …何が言いてぇんだよ?」
「そのまんまだよ。最年長なんだから、ちゃんとまとめてくれよな」
「はぁ? それはお前の役割だろうが。俺はガラじゃねぇんだ、わかってんだろ」
「……そうだな」
そんな二人の他愛のないやり取りを、葉月は複雑な表情を浮かべながら見守っていた。
蒼矢を呼んだ影斗は、晃司らから表情を隠すように少し後ろ向きの格好で口を開く。
「体、平気なんか?」
「問題ありません。先輩こそ、顔が…」
「なんでもねぇよ、これくらい。…それより、話が読めねぇ部分がある。お前が狙われてるってのはどういうこと?」
「…『アズライト』が『索敵』を使うことが、[侵略者]に知れていたようです」
「! …レアキャラは、[あっち]でも有名人って訳か。…確かに、攻撃性は無いにしても、自分らの手の内丸裸になっちまうからな…」
そらを見ながら得心し、ふと視線を落とすと、蒼矢が何か言いたげに見上げていた。その心情を察したのか、影斗は痣を作っていない方の口角をにっと上げてみせた。
「心配すんな、一応自分の中で落としどころはついた。…気ぃ病ませて悪かったな」
「いえ…」
「ひとまず今戦は大人しくやってやるよ。なにしろ、お前がいるからな」
「……」
その言葉に、今度は蒼矢が何か思案するように少しうつむいた。軽く言ったつもりだった影斗は、少し慌てた風に彼の顔をのぞき込む。
「不安か? まぁ…無理もねぇか」
「…はい。標的になってることも含めてですが、今回また『転異空間』に行く意味が、自分の中で整理できてなくて…」
曇りのある面持ちでぽつぽつと明かされる内情を聞き、影斗は一時考えてからひとつ息をついた。
「…まだ[異界のもの]のこと何もわかっちゃいねぇんだろ? じゃあお前は必要だ。多分今のところは、[侵略者]にアドバンテージがある…それをイーブンに持ってけるのは、お前しかいねぇ」
「……」
「俺がついてる限り、お前と[奴]を差し違えるような真似は絶対にしねぇし、あいつらにもさせねぇ。…自信持って、存分に調べ上げろ」
「…はい」
影斗の言葉に顔をあげた蒼矢は、まだ幾分か浮かない表情ではあったものの、しっかりと頷いてみせる。
影斗は、にっと笑い返すと彼の頭を優しく撫で、年長者3人へ振り返る。
「お待たせ。準備いいぜ」
「…じゃ、行こうか」
晃司の口から文句が飛び出てくる前に、灯は手早く了承し、自らの鉱石を握った。
セイバーのほぼ全員が近郊住みであるため、連絡を交わしつつ、屋外駐車場端へ集合していく。
「近くて助かるぜ。しかも再戦だから場所も明確だしな」
出来れば人目を避けたいところなのに、昨日と同じく派手色の柄シャツに蛍光色のダボついたパンツという、どこぞのショーにでも出そうな格好の晃司の隣で、無地のロンTにデニム姿の灯が苦い表情をしながら額を押さえていた。
「…駄目だ。どうあっても目立つんだ、お前らは」
「あ?」
「え?」
朝から叩き起こされて少し不機嫌そうな晃司と、いつも通り着物に草履姿の葉月が同時に返答する。
自覚のない二人からの視線を受け流し、灯は彼らから少し離れて控える蒼矢を見やる。
「怪我の具合はどうなんだ?」
「…大丈夫です」
「切り傷になってるわけじゃないから、無理に身体を動かさなければなんとか、ね。本当は安静にしてて欲しいけど…」
補足を入れる葉月へ、灯は軽く頷いた。
「[奴ら]と再戦になる場合、場所は前戦で出現した地点とだいたい同じで、近日中に現れる。今日になるとは限らないが、見張れる内は待機してないとな」
「丁度日曜だし、出来れば今日中に片をつけたいね」
「全くだ、こうして多忙なタイムスケジュールの合間縫って会いに来てやってんだからな」
「お前は毎日日曜日だろうが。明日以降ならお前一人で頑張れよ」
「~!! お前には前途有望な苦学生への労りってもんがないのか! 少しは"お兄様"を敬え!!」
鼻で笑ってみせる灯へ晃司が啖呵を切り始めたところで、全員の胸元がそれぞれのシンボルカラーで輝き始めた。
「…来やがったな」
「…! 待って下さい」
「あん?」
即刻鉱石を握ろうとする晃司を見、慌てて蒼矢が声をかける。
「影斗先輩が来るまで、待ってもらえませんか?」
「はぁ? 何で俺らがそんなことしなきゃならねぇんだよ。だいたい、昨日の今日であいつが来るわきゃ――」
そう訴えを突っ返そうとする晃司へ大きく歩み寄った蒼矢は、鼻先に自分のスマホ画面を差し出してみせる。表示されていたSNSメッセージには、影斗から彼宛へ"行く"とだけ返事が書いてあった。
「…お願いします」
スマホの背後から真剣な眼差しを送ってくる蒼矢をひと睨みし、晃司は軽く舌打ちした。
「…5分だけやる。それ以上かかるようなら帰れって言っとけ」
「ありがとうございます」
程なくしてバイクのエンジン音が届き、影斗が集合場所へ駆け寄ってくる。やや呼吸を乱している彼へ、他面々の視線が集まった。
灯は軽く息をつくと、にやりと笑った。
「…初めてだな、"5人"揃うのは」
「……!」
どこか感慨深そうにも感じられる彼の台詞に、葉月は目を見開き、次いで少し頬を染めながら微笑った。
「そうだね…、なんだか胸に来るものがあるね」
「…浸ってる場合じゃねぇだろ、お前ら」
そんな二人へ、晃司は睨んでみせる。そして棒立ちになっている蒼矢の肩を引き寄せ、荒々しく頭に手を置いた。
「俺たちは前回戦で失敗してんだ。実質現状最高戦力になる今回で、確実にぶっ潰す。[奴]が狙ってくるだろうこいつを死守して、なおかつこいつが"仕事"を全うする。それが出来なきゃぁ次は無ぇ」
そう言い放つと、ぎろりと影斗へ視線を変える。
「影斗! こいつを無事に帰したいんだったら、ハナからケツまで言うこと聞けよ。特に俺の言うことは絶対だからな」
凄みをきかせながら釘を刺してくる晃司を、影斗は落ち着いた表情で見返していた。
「…あんたこそ、蒼矢をあんまりぞんざいに扱うんじゃねぇぞ」
「あぁ? っ…」
言い返そうとした晃司の手の下で、影斗に目くばせされた蒼矢が彼の元へ近付いていく。
年下二人を腕組みしながら睨む晃司の肩に、灯がやや強めに手を置いた。
「…途中までは良かったのに。いつもあと一歩だな、お前は」
「!? …何が言いてぇんだよ?」
「そのまんまだよ。最年長なんだから、ちゃんとまとめてくれよな」
「はぁ? それはお前の役割だろうが。俺はガラじゃねぇんだ、わかってんだろ」
「……そうだな」
そんな二人の他愛のないやり取りを、葉月は複雑な表情を浮かべながら見守っていた。
蒼矢を呼んだ影斗は、晃司らから表情を隠すように少し後ろ向きの格好で口を開く。
「体、平気なんか?」
「問題ありません。先輩こそ、顔が…」
「なんでもねぇよ、これくらい。…それより、話が読めねぇ部分がある。お前が狙われてるってのはどういうこと?」
「…『アズライト』が『索敵』を使うことが、[侵略者]に知れていたようです」
「! …レアキャラは、[あっち]でも有名人って訳か。…確かに、攻撃性は無いにしても、自分らの手の内丸裸になっちまうからな…」
そらを見ながら得心し、ふと視線を落とすと、蒼矢が何か言いたげに見上げていた。その心情を察したのか、影斗は痣を作っていない方の口角をにっと上げてみせた。
「心配すんな、一応自分の中で落としどころはついた。…気ぃ病ませて悪かったな」
「いえ…」
「ひとまず今戦は大人しくやってやるよ。なにしろ、お前がいるからな」
「……」
その言葉に、今度は蒼矢が何か思案するように少しうつむいた。軽く言ったつもりだった影斗は、少し慌てた風に彼の顔をのぞき込む。
「不安か? まぁ…無理もねぇか」
「…はい。標的になってることも含めてですが、今回また『転異空間』に行く意味が、自分の中で整理できてなくて…」
曇りのある面持ちでぽつぽつと明かされる内情を聞き、影斗は一時考えてからひとつ息をついた。
「…まだ[異界のもの]のこと何もわかっちゃいねぇんだろ? じゃあお前は必要だ。多分今のところは、[侵略者]にアドバンテージがある…それをイーブンに持ってけるのは、お前しかいねぇ」
「……」
「俺がついてる限り、お前と[奴]を差し違えるような真似は絶対にしねぇし、あいつらにもさせねぇ。…自信持って、存分に調べ上げろ」
「…はい」
影斗の言葉に顔をあげた蒼矢は、まだ幾分か浮かない表情ではあったものの、しっかりと頷いてみせる。
影斗は、にっと笑い返すと彼の頭を優しく撫で、年長者3人へ振り返る。
「お待たせ。準備いいぜ」
「…じゃ、行こうか」
晃司の口から文句が飛び出てくる前に、灯は手早く了承し、自らの鉱石を握った。
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