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本編
第19話_阻止奪還-6
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影斗の変身する『セイバーオニキス』は、後発属性発現の概念が無い代わりに初期から二種類の属性を同時に使う特性を持ち、主たる『闇』属性の他にサブとして『毒』属性を使いこなすセイバーである。
毒は、決定打を与えるというよりは、神経に作用する麻痺や能力の低下をもたらすデバフの役目が大きいが、[異界のもの]にとって弱点属性であれば、完全な行動不能状態にすることや体躯を構成する組織を腐食することが出来るなど、強力な攻撃手段にもなり得る属性である。
しかしその最大のデメリットは、"効果が他セイバーにも及ぶ"という点で、セイバーの使う属性攻撃が味方に対しては無害であることが定石な中で、唯一敵味方分け隔てなく影響を及ぼす属性でもあった。
前戦から[木蔦]の弱点属性に毒が含まれていると踏み、近接戦闘で決着をつけようと機を窺っていたオニキスだったが、[木蔦]側も同じように毒への警戒を強め、戦況を撹乱するため逆に陽へ近接戦闘を仕掛け、オニキスが毒攻撃を使う機会を奪おうとしていたのだった。
追われるサルファーが、さばききれなかった蔦に足を絡め取られ、地面へ向かって投げ落とされる。
「あ゛っ…!!」
上手く受け身を取れず、深緑の地に叩きつけられたサルファーは短く声をあげ、動かなくなる。
「の野郎…!」
殺気立ったオニキスは再び毒霧を噴き出させると、宙に浮かぶ[木蔦]へと豪速で突っ込んでいく。
が、衝突する寸前で、[木蔦]は蔦を地へ伸ばしてサルファーを巻き取り、みずからの体躯の前に吊るした。
「…!!」
「突っ込んでみろ。こいつを巻き込んでもいいならな」
なんとか踏みとどまり、殺意を込めた眼力を浴びせてくるオニキスへ、[木蔦]は余裕の顔貌で嘲笑した。
前衛の窮地を前に、蒼矢は懸命の索敵を続けていた。
防御を続ける葉月が、脳内から彼へ呼び掛ける。
「[侵略者]の弱点特定は?」
「すみません…まだ属性も部位も、見当がついてません」
「融合してるのがまずいんだろうか。[異形]に紛れて、あやふやにされてしまってる?」
「…それもあるかもしれません。けど…」
アズライトは応えつつ、確定に至れない疑念に駆られるように眉を顰めた。
…共生、あるいは融合関係であっても、[侵略者]の輪郭さえも見通せないなんてことがあるのか…?
…本体がどこかで別に潜んでいたとしても、空間全体に気配すら感じ取れないのはおかしい。
…これじゃまるで、『転異空間』内に[異形]しか転送されてないのと同じだ…!
後衛が手をこまねく間にも、前衛の戦況は刻々と悪化の一途を辿っていた。
「…っ! …ぐぅっ…!」
蔦で縛られたサルファーが意識を取り戻し、拘束された全身への締めつけに面を歪める。
苦悶を浮かべる彼の後方でにたりと嗤う[木蔦]を睨みながら、オニキスは奥歯を噛みしめた。
毒は、決定打を与えるというよりは、神経に作用する麻痺や能力の低下をもたらすデバフの役目が大きいが、[異界のもの]にとって弱点属性であれば、完全な行動不能状態にすることや体躯を構成する組織を腐食することが出来るなど、強力な攻撃手段にもなり得る属性である。
しかしその最大のデメリットは、"効果が他セイバーにも及ぶ"という点で、セイバーの使う属性攻撃が味方に対しては無害であることが定石な中で、唯一敵味方分け隔てなく影響を及ぼす属性でもあった。
前戦から[木蔦]の弱点属性に毒が含まれていると踏み、近接戦闘で決着をつけようと機を窺っていたオニキスだったが、[木蔦]側も同じように毒への警戒を強め、戦況を撹乱するため逆に陽へ近接戦闘を仕掛け、オニキスが毒攻撃を使う機会を奪おうとしていたのだった。
追われるサルファーが、さばききれなかった蔦に足を絡め取られ、地面へ向かって投げ落とされる。
「あ゛っ…!!」
上手く受け身を取れず、深緑の地に叩きつけられたサルファーは短く声をあげ、動かなくなる。
「の野郎…!」
殺気立ったオニキスは再び毒霧を噴き出させると、宙に浮かぶ[木蔦]へと豪速で突っ込んでいく。
が、衝突する寸前で、[木蔦]は蔦を地へ伸ばしてサルファーを巻き取り、みずからの体躯の前に吊るした。
「…!!」
「突っ込んでみろ。こいつを巻き込んでもいいならな」
なんとか踏みとどまり、殺意を込めた眼力を浴びせてくるオニキスへ、[木蔦]は余裕の顔貌で嘲笑した。
前衛の窮地を前に、蒼矢は懸命の索敵を続けていた。
防御を続ける葉月が、脳内から彼へ呼び掛ける。
「[侵略者]の弱点特定は?」
「すみません…まだ属性も部位も、見当がついてません」
「融合してるのがまずいんだろうか。[異形]に紛れて、あやふやにされてしまってる?」
「…それもあるかもしれません。けど…」
アズライトは応えつつ、確定に至れない疑念に駆られるように眉を顰めた。
…共生、あるいは融合関係であっても、[侵略者]の輪郭さえも見通せないなんてことがあるのか…?
…本体がどこかで別に潜んでいたとしても、空間全体に気配すら感じ取れないのはおかしい。
…これじゃまるで、『転異空間』内に[異形]しか転送されてないのと同じだ…!
後衛が手をこまねく間にも、前衛の戦況は刻々と悪化の一途を辿っていた。
「…っ! …ぐぅっ…!」
蔦で縛られたサルファーが意識を取り戻し、拘束された全身への締めつけに面を歪める。
苦悶を浮かべる彼の後方でにたりと嗤う[木蔦]を睨みながら、オニキスは奥歯を噛みしめた。
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