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本編
第16話_狭間より舞い戻る蝶-7
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「お前を放っておいちまったことは、まじで悔しかったし、俺の手落ちだと思ってる。…ごめんな」
「いえ。俺の方こそ…すみませんでした。誰にも、何も…相談出来なくて」
「! そういえば…ひとつだけ解らねえところがあったんだった。お前、何をネタに脅されてたんだ?」
蒼矢の言葉に、影斗はみずからの中にずっと引っかかっていた疑問を、彼へ投げかける。
「そもそもの始まりが、監視付ける前にあったはずだが、そこだけ見えてねぇんだ。それと、[木蔦]は烈がセイバーだってこと気付いてねぇみたいだが…隠しといた方が都合良かったのか? お前から相談出来なかった理由はそこにあるのか?」
問われた蒼矢は、影斗の眼差しを静かに受け止め、おもむろに口を開いた。
「…[木蔦]が、烈に"種"を植え付けたと」
「種?」
「[異形]の形態のひとつで、捕えた人間に蔦の種を植え付けて発芽させ、伸びた蔦で覆い、蔦の繭ごと[異界]へと飛ばす能力のようです」
「…!」
影斗の目が見開かれ、表情が固まる。
「本当に植え付けたのか、狂言だったのかは確証がありません。僅かに機会があって、烈の身体を少し調べたんですが、植え付けられたような痕は見つけられませんでした。…ただ、別の人間が実際に[異界]へ送られてしまった瞬間は見せられました」
包帯を巻かれ傷ついた蒼矢の拳が、硬く握られていく。
仇敵を前に幼馴染を盾に取られてしまった悔恨と憤り、そして『守護者』の立場でありながら、目の前で護るべき対象を[異界]送りにしてしまった屈辱と無力さ。
微かに震えるその拳から、彼が味わった絶望が、空気に乗ってちりちりと影斗へ伝わっていった。
「烈は[奴]に好意的に目をつけられていたので…[奴]の手の内にある烈を『セイバー』だと明かしてしまったら、逆に危険だと考えました。奴の気分ひとつでどうとでもなる状況には変わりませんでしたが、"一般人"と認識させていた方が、より『自分』へ気を引くことが出来る…と」
「…烈がお手付きになるまでの時間を稼ぐために、お前が代わりになってたってことか」
「…」
「まぁ人質取られちゃあな…無理もねぇ。仮に俺がお前の立場だったとしても、同じようなことしてるだろうよ」
「いえ。俺の方こそ…すみませんでした。誰にも、何も…相談出来なくて」
「! そういえば…ひとつだけ解らねえところがあったんだった。お前、何をネタに脅されてたんだ?」
蒼矢の言葉に、影斗はみずからの中にずっと引っかかっていた疑問を、彼へ投げかける。
「そもそもの始まりが、監視付ける前にあったはずだが、そこだけ見えてねぇんだ。それと、[木蔦]は烈がセイバーだってこと気付いてねぇみたいだが…隠しといた方が都合良かったのか? お前から相談出来なかった理由はそこにあるのか?」
問われた蒼矢は、影斗の眼差しを静かに受け止め、おもむろに口を開いた。
「…[木蔦]が、烈に"種"を植え付けたと」
「種?」
「[異形]の形態のひとつで、捕えた人間に蔦の種を植え付けて発芽させ、伸びた蔦で覆い、蔦の繭ごと[異界]へと飛ばす能力のようです」
「…!」
影斗の目が見開かれ、表情が固まる。
「本当に植え付けたのか、狂言だったのかは確証がありません。僅かに機会があって、烈の身体を少し調べたんですが、植え付けられたような痕は見つけられませんでした。…ただ、別の人間が実際に[異界]へ送られてしまった瞬間は見せられました」
包帯を巻かれ傷ついた蒼矢の拳が、硬く握られていく。
仇敵を前に幼馴染を盾に取られてしまった悔恨と憤り、そして『守護者』の立場でありながら、目の前で護るべき対象を[異界]送りにしてしまった屈辱と無力さ。
微かに震えるその拳から、彼が味わった絶望が、空気に乗ってちりちりと影斗へ伝わっていった。
「烈は[奴]に好意的に目をつけられていたので…[奴]の手の内にある烈を『セイバー』だと明かしてしまったら、逆に危険だと考えました。奴の気分ひとつでどうとでもなる状況には変わりませんでしたが、"一般人"と認識させていた方が、より『自分』へ気を引くことが出来る…と」
「…烈がお手付きになるまでの時間を稼ぐために、お前が代わりになってたってことか」
「…」
「まぁ人質取られちゃあな…無理もねぇ。仮に俺がお前の立場だったとしても、同じようなことしてるだろうよ」
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