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本編

第11話_惑わされる想い-1

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翌日の日曜、配達と営業廻りを終えたレツは、店へ戻る前にくすのき神社へ寄った。
納品日でもなく、アポも取っていなかったが、葉月ハヅキは突然の来訪にも笑顔で迎え入れてくれた。

「いらっしゃい、丁度アキラが遊びに来てるよ。今日は苡月イツキとふたりで夕食作って貰おうと思っててね」
「へー、そうなんすね」
「良かったら君も食べていかない?」
「そっすね、ありがたく頂いていきます」

誘いに軽く応じ、そろそろ夕飯準備をし始めている頃合だろう母へSNSを送ると、烈は丸テーブルへお茶を置いて席を立つ葉月を見上げた。

「あの、葉月さん…蒼矢ソウヤは今日は稽古とかで来てませんかね?」
「ううん、来てないよ。…そういえば、このところ少しご無沙汰だなぁ」

顎に人さし指の先を当てながらそう返すと、葉月は烈の斜め向かいに座り直す。

「蒼矢に用だったの?」
「あいや、そういう訳じゃないんすけど。…いるかなーって、ちょっと興味本位で」
「そう?」

柔らかい笑みをたたえながら見つめてくる葉月に、烈は動揺するように視線をそらして漂わせ、僅かに頬を染めながらうつむいた。

「…最近…あいつがよくわからなくて」
「彼と何かあったの?」
「…何も無かったって言ったら、嘘になりますけど。ちょっとやらかしちまったって自覚はあります。…でも、それだけが理由じゃないような気がしてて」

烈の言う"やらかし"とは、蒼矢の自宅で苡月に化粧を施された彼の姿を目にしてしまったあの一件のことだ。
あれはあれで、おそらく蒼矢の隠し事に触れたが故に彼の機嫌を確実に損ねてしまっていたが、その直後のふいな密着も併せると、一連の行動原理がいまだに烈には理解できないままだった。

そして数日後のどこか心ここにあらずな覇気の無い彼と、昨日の珍しく会いに来たにもかかわらず、急に心変わりしたように要件の途中で去って行ってしまった彼。

なんとなく蒼矢の気分か感情の振れ幅に振り回されているような心地と、それでいて彼にとっては自分が蚊帳の外に居るような疎外感との、相反する状況の狭間に置かれている気がしていて、烈は胸中が常にざわつき、ここ数日ですっかり落ち着いていられなくなってしまっていた。

蒼矢に対する想いを自覚し、日々募らせていく中、非日常な空気を漂わせる彼の立ち居振る舞いが、無性に烈を不安にさせていたのだった。

烈はぽつりぽつりと、包み隠さず全てを葉月へ話して聞かせた。
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