31 / 103
本編
第6話_人の皮被る獣-5(★)
しおりを挟む
★年齢制限表現(微・暴力描写)有
蒼矢は体術を駆使しながら、迫る大男の両腕を跳ね除けていく。
標的へ向けて前進する[木蔦]は、ひたすら打撃を受け続けるも一切ひるまず、妖しい笑みを浮かべながら絶えず腕を伸ばす。
その内動きに慣れてきたのか蒼矢の技をいなすようになっていき、伸ばされる手の動きも徐々に速さを増し、一時拮抗していた両者の足元に動きが現れ、体格で劣る蒼矢は少しずつ後退していく。
やがて高揚した[木蔦]の太い腕が大きく弧を描き、蒼矢の真上から降り下ろされる。
「っ…!!」
頭に強い衝撃を受け、眼鏡を叩き落とされた蒼矢は、ふらつきながら数歩下がり、背後の壁にもたれかかった。
「…おっと。見える所に痕は残したくなかったんだが、つい昂って当たってしまったな」
息を弾ませ、頭を垂れて沈黙する獲物へそう呟くように声を投げると、"捕獲"を確信した[木蔦]は今一度口角を上げる。
突如、蒼矢の足元が盛り上がり、木の根か蔦のようなものが幾つも地面を突き破って現れ、壁伝いに伸びていく。
「…っあぁっ」
蔦は見る間に蒼矢へ及び、四肢へ絡んで壁に磔る。
身体へも伝って廻り、身動きが出来ないよう巻きついていく。
強制的に身を起こされ、全身を這う蔦の感触と締めつけに、蒼矢は小さく呻く。
「大人しく"搾取"される気性ではないようだからな。…[異形]を『現実世界』で使うなんて、こっちに根差して以来だぞ?」
そう不服とも感心とも判別つかない言葉を投げ、[木蔦]は蒼矢の顎を取る。
そして拘束されてもなお鋭い敵意を持って睨み上げてくる蒼矢へ、余裕の顔貌で嗤い返しながら彼の胸元へ手を入れ、青く輝く銀色のペンダントを抜き取ると、地面へと放った。
[異界のもの]の邪念に反応して輝くペンダント――『起動装置』は、『ガイアセイバー』へ変身し『転異空間』を造り上げる原動力となる、セイバーの身体の一部ともいうべきものである。
放り投げられて地面に落ち、宿主から離れた『起動装置』は、その役目と輝きを失っていく。
セイバーへ変身する術を無くした蒼矢は、人外の力を秘める侵略者[木蔦]の前に、無防備にその身を晒す。
「余分な労力を使わせた代償を、その身体で払って貰うぞ」
蒼矢は体術を駆使しながら、迫る大男の両腕を跳ね除けていく。
標的へ向けて前進する[木蔦]は、ひたすら打撃を受け続けるも一切ひるまず、妖しい笑みを浮かべながら絶えず腕を伸ばす。
その内動きに慣れてきたのか蒼矢の技をいなすようになっていき、伸ばされる手の動きも徐々に速さを増し、一時拮抗していた両者の足元に動きが現れ、体格で劣る蒼矢は少しずつ後退していく。
やがて高揚した[木蔦]の太い腕が大きく弧を描き、蒼矢の真上から降り下ろされる。
「っ…!!」
頭に強い衝撃を受け、眼鏡を叩き落とされた蒼矢は、ふらつきながら数歩下がり、背後の壁にもたれかかった。
「…おっと。見える所に痕は残したくなかったんだが、つい昂って当たってしまったな」
息を弾ませ、頭を垂れて沈黙する獲物へそう呟くように声を投げると、"捕獲"を確信した[木蔦]は今一度口角を上げる。
突如、蒼矢の足元が盛り上がり、木の根か蔦のようなものが幾つも地面を突き破って現れ、壁伝いに伸びていく。
「…っあぁっ」
蔦は見る間に蒼矢へ及び、四肢へ絡んで壁に磔る。
身体へも伝って廻り、身動きが出来ないよう巻きついていく。
強制的に身を起こされ、全身を這う蔦の感触と締めつけに、蒼矢は小さく呻く。
「大人しく"搾取"される気性ではないようだからな。…[異形]を『現実世界』で使うなんて、こっちに根差して以来だぞ?」
そう不服とも感心とも判別つかない言葉を投げ、[木蔦]は蒼矢の顎を取る。
そして拘束されてもなお鋭い敵意を持って睨み上げてくる蒼矢へ、余裕の顔貌で嗤い返しながら彼の胸元へ手を入れ、青く輝く銀色のペンダントを抜き取ると、地面へと放った。
[異界のもの]の邪念に反応して輝くペンダント――『起動装置』は、『ガイアセイバー』へ変身し『転異空間』を造り上げる原動力となる、セイバーの身体の一部ともいうべきものである。
放り投げられて地面に落ち、宿主から離れた『起動装置』は、その役目と輝きを失っていく。
セイバーへ変身する術を無くした蒼矢は、人外の力を秘める侵略者[木蔦]の前に、無防備にその身を晒す。
「余分な労力を使わせた代償を、その身体で払って貰うぞ」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです
遠野紫
ファンタジー
謎の地球外生命体『ドラゴラゴン』による侵略から世界を守るヒーロー『カルノライザー』。その正体は誰が見てもただの女子高生にしか見えない『龍ヶ崎咲(りゅうがさき さき)』という少女である。
そんな彼女がドラゴラゴンの親玉を打ち倒してからはや数か月が経ち、残党を狩るだけの毎日に退屈していた時に事件は起こった。彼女の乗る修学旅行のバスが突如として異世界に召喚されてしまったのだ。そこで咲たちは国王の行った勇者召喚の魔法によって自分たちが召喚されたのだと言う事を知ると同時に、勇者としての適性を測ることになるのだが……。
「『変身』……じゃと? はぁ……今回も外れが出てしまったか」
彼女が異世界に召喚される前から持っていた『変身』の能力は、この世界においては所謂『外れスキル』だったのだ。また、どういう訳か咲の適性は表示されなかった。もちろん彼女の適性が低いはずもなく、石板の表示上限を超えてしまっているためにそうなっているだけなのだが、それを国王が知るはずもなく咲は外れ勇者としての烙印を押されてしまう。
この世界において外れ勇者の扱いは酷く、まともに生きることすらも許されてはいない程であるのだが……彼女は、龍ヶ崎咲は違った。地球外生命体の侵略から世界を救った彼女が、今更異世界で遅れを取るはずが無いのだ。外れ勇者としての扱いなど、その力で跳ね除けてしまえばいい。何故なら彼女は最強のヒーローなのだから。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
主人公に「消えろ」と言われたので
えの
BL
10歳になったある日、前世の記憶というものを思い出した。そして俺が悪役令息である事もだ。この世界は前世でいう小説の中。断罪されるなんてゴメンだ。「消えろ」というなら望み通り消えてやる。そして出会った獣人は…。※地雷あります気をつけて!!タグには入れておりません!何でも大丈夫!!バッチコーイ!!の方のみ閲覧お願いします。
他のサイトで掲載していました。
ハクチューム
夢=無王吽
大衆娯楽
伝説のバンド『白痴有無』。
彼らのフロントをつとめるのは、
世の中のすべてにツバを吐く男、
〝ヘーリー久都〟だ。
今夜もしずかにギターのノイズから始まり、
そしてアンプから爆音が放たれる。
バスドラの音と空気圧が最前列の心臓を叩き、
重低音のベースは鼓膜を破ろうとする。
セットリストでは2曲暴れたらMCだ。
脳ミソを掻き回すような暴力的な音の洪水のあとの、
突然の静寂。
ライブハウスに充満するガキどもの耳鳴りがおさまる前に、
弦楽器隊はアンプとチューニングを調整しだす。
ドラムは各打楽器の位置の微調整だ。
ステージに、スポットライトがぽつんと降りてくる。
アゴの下から汗をぼたぼたとたらし、
ヴォーカルのヘーリーがマイクを口に寄せる。
さて、オーディエンスからは言災(ことわざ)とも呼ばれる、
糞みたいなMCの始まりだ。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く、が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる