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本編
第6話_人の皮被る獣-4
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そうつらつらと語り、[木蔦]は一層敵意を込め鋭く睨む蒼矢を、じっとりと眺め返す。
「随分とお怒りのようだ。友人を獲物にされることが許せないか? 同じようなことは『人間』も散々やってるじゃないか。あくまで生命維持が目的である[侵略者]からしてみれば、慰め合うだけなど非生産的だとは思うがね。…理解しがたい性質だ」
「…」
「…お前、ひょっとして彼と肉体関係でもあるのか?」
己の中で推論を立て、嫌らしい笑みを浮かべてみせる[木蔦]へ、蒼矢は一瞬その面差しに殺意を帯び、黙ったまま淡く光る胸元へ手を掛ける。
しかし、[木蔦]は幾分か呆れた風に続けた。
「――いいのか? 今ここで事を起こして。アレがどうなるか、一旦頭を冷やして考えてみろ。…[俺]は全く構わないがね」
「…っ…!」
セイバーに変身し、『転異空間』を造って[異界のもの]を転送する時は、ごく近い範囲に部外者――たとえば『現実世界』の普通の人間がいた場合、彼らも巻き添えにして転送させてしまう恐れがある。
指摘され、失神する男を一瞥した蒼矢は、胸元に手を触れる寸前で動きを止めた。
しかして怒りを表出したまま臨戦態勢を崩さない彼を見、[木蔦]は鼻で息をつく。
「見かけによらず、喧嘩っ早いようだな。『守護者』としての本能か?」
そして、蒼矢の頭から足先までを眺め、思案するように指先で顎を撫でた。
「…このままお前を追い払ってしまってもいいが、さっき一番良い所で中断させられたお蔭で、俺はまだ腹が満たされてない」
「…!」
「あまり好みの体躯ではないが、この場はお前で妥協しておくとしよう」
そう言うと、[木蔦]は口角を引き上げながら、悠然と蒼矢へ近付いていく。
大股で一瞬にして間合いを詰めてくる[木蔦]から素早く身を引き、蒼矢は大柄な体躯から伸びる長い腕を避けながら、上段蹴りを繰り出す。
鋭く振り上がった足先が、[木蔦]の頬に入る。
衝撃で身体を反らせた[木蔦]はそのまま一瞬時を止め、次いで体勢をゆっくりと戻し、眼鏡の奥の両眼を研ぎ澄ます蒼矢へ嫌らしく嗤った。
「…想像以上に活きが良いようだ。思いの外、欲情を駆られたぞ…?」
「随分とお怒りのようだ。友人を獲物にされることが許せないか? 同じようなことは『人間』も散々やってるじゃないか。あくまで生命維持が目的である[侵略者]からしてみれば、慰め合うだけなど非生産的だとは思うがね。…理解しがたい性質だ」
「…」
「…お前、ひょっとして彼と肉体関係でもあるのか?」
己の中で推論を立て、嫌らしい笑みを浮かべてみせる[木蔦]へ、蒼矢は一瞬その面差しに殺意を帯び、黙ったまま淡く光る胸元へ手を掛ける。
しかし、[木蔦]は幾分か呆れた風に続けた。
「――いいのか? 今ここで事を起こして。アレがどうなるか、一旦頭を冷やして考えてみろ。…[俺]は全く構わないがね」
「…っ…!」
セイバーに変身し、『転異空間』を造って[異界のもの]を転送する時は、ごく近い範囲に部外者――たとえば『現実世界』の普通の人間がいた場合、彼らも巻き添えにして転送させてしまう恐れがある。
指摘され、失神する男を一瞥した蒼矢は、胸元に手を触れる寸前で動きを止めた。
しかして怒りを表出したまま臨戦態勢を崩さない彼を見、[木蔦]は鼻で息をつく。
「見かけによらず、喧嘩っ早いようだな。『守護者』としての本能か?」
そして、蒼矢の頭から足先までを眺め、思案するように指先で顎を撫でた。
「…このままお前を追い払ってしまってもいいが、さっき一番良い所で中断させられたお蔭で、俺はまだ腹が満たされてない」
「…!」
「あまり好みの体躯ではないが、この場はお前で妥協しておくとしよう」
そう言うと、[木蔦]は口角を引き上げながら、悠然と蒼矢へ近付いていく。
大股で一瞬にして間合いを詰めてくる[木蔦]から素早く身を引き、蒼矢は大柄な体躯から伸びる長い腕を避けながら、上段蹴りを繰り出す。
鋭く振り上がった足先が、[木蔦]の頬に入る。
衝撃で身体を反らせた[木蔦]はそのまま一瞬時を止め、次いで体勢をゆっくりと戻し、眼鏡の奥の両眼を研ぎ澄ます蒼矢へ嫌らしく嗤った。
「…想像以上に活きが良いようだ。思いの外、欲情を駆られたぞ…?」
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