ガイアセイバーズ７(HC) -畏友の絆を分かつ禍-

本編

第5話_埋め得ない隔たり-6

次の日の昼前、蒼矢ソウヤは少し浮かない面持ちのまま、自宅から出る。
昨日は結局花房ハナブサ家へ行けないまま、自宅で一日中悶々とし、何も手につかないまま時だけが過ぎ去っていた。

"柄方エガタ"という年上の男。
烈レツの酒屋の取引先で、最近は毎日注文を入れる常連だということだった。

烈が仕事で出会い、いつの間にか親しい間柄になっていた、蒼矢の知らない人物。
ふたりが顔を合わせる以外のところで出来上がっていた、彼の交友関係。
お互いが介さない、烈独自、あるいは蒼矢独自の相関図なんてものはいくらでもある。
そんなことは解りきっていたが、蒼矢の中でどうしても取り去れない引っかかりが残っていた。

必要以上に距離を詰め、烈の身体に触れる柄方。
それをさほど気にする風も無く、屈託のない笑顔を返す烈。

「……」

自分の中に形容しがたい感情を渦巻かせたまま、蒼矢は花房酒店の前を通る。
もちろん、時間帯的に烈は配達中で出払っているだろう。

次第に進む足が緩んでいたことにふと気付き、店が視界から消えるにつれ、蒼矢は気を取り直すように歩みを速め、大学へと向かった。



その日はコマ数が少なく、丁度正午頃大学へ着いた蒼矢は、午後から始まる講座に備えて昼食をとろうと中央食堂へ向かう。
ひとりひとりのスケジュールが比較的自由な大学と言えど、やはり昼時の食堂は人で溢れかえっていて、蒼矢は入り口から中を眺め、早々に諦めの境地に落ち着いた。

…准教授先生に断って、研究室で食事させてもらおう…

そう踵を返した途端、コートのポケットが震える。
SNSを確認した蒼矢は、振り返って再び食堂内を見渡した。

「！」

SNSの送り主である友人・沖本オキモトと川崎カワサキが、少し腰を浮かせてこちらへ向かって手を振っていた。