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本編

ありし日の記憶⑤-1

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そして、18歳を迎える3月。

蒼矢ソウヤ珠代タマヨに請われ、都内の小さな斎場に来ていた。



彼女から話を聞かされた時、耳から頭の中へすぐには入ってこなかった。
しばらく事実として受け止めることが出来なかった。それほど現実味が無くて、にわかには信じ難かった。

花房 快ハナブサ カイの事故死。

何度か内で反芻してかろうじて受け入れ、すぐ後にレツのことが頭を過った。
気にかかったものの、タイミング悪く大学の合格通知が来た直後とあって入学準備に時間を取られ、通夜当日まで連絡することは無かった。
忙しいにしても、簡単なSNSを送れる時間すら無かったわけではない。
しかし、蒼矢は何度もスマホを手に取って指を動かしかけては止め、息を吐き出しながら放り、連絡を取るまでには至れていなかった。

メッセージを送ろうにも、杓子定規な文句しか浮かんでこなかった。
親を喪った彼へなんて声を掛けたらいいのか、わからなかった。
彼が今欲しいだろう言葉を探しては、道に迷って頭に空白だけが残った。

通夜までの数日間、手が空く度にそんなことを繰り返してただ時間だけが過ぎ、結局答えが見つからないまま当日を迎えていた。
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