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本編

ありし日の記憶④-3

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蒼矢ソウヤは呆れたようにため息をつくと、レツの手からタンクトップをひったくって下げ、自分もシャツの前を閉じる。

「模様が違うんだから、鏡のわけないだろ。…お前、事の重大さが解ってないのか? 向こう10年くらいは『刻印これ』と付き合っていかなきゃならないんだぞ。どうやったって消せないし、ぱっと見刺青だし、学校で誰かに見られたら言い訳も出来ない。お前がこの先隠し通していけるか…不安でならない」
「大丈夫だってー。俺口は硬い方だし、人前で裸にさえならなきゃOKだろ?」
「…早速烈父おじさん烈母おばさんに話したお前の言葉に、信頼性は一切無いからな」
「? そりゃ話すだろ、一緒に住んでるのに隠すの面倒だし」
「そういう所が不用心過ぎるんだ。面倒か否かで言動を決めるな」
「えー…」

烈は『刻印』が浮かび上がったその日の夜に両親に報告し、そうなった"理由"も彼が把握できる限りで早々に話して聞かせてしまっていた。
翌日になって、蒼矢をはじめ烈にそうあっけらかんと報告された者たちは揃って目が飛び出そうなくらい仰天し、全員がその場に固まってしまった。

そんな昨日があった今日、蒼矢に目くじらを立てて詰められ、烈は頭の後ろに手を当てながら眉を下げた。

「……そんなにいけなかったか? 親父たちに言ったこと」
「…いけないってわけじゃないけど。…まぁ、お前の家は自営業で、家族と接する時間多いし…隠して生活していくのは難しいだろうから、受け入れてくれさえすれば話しちゃっても良かった、…とは思う」
「要領得ない感じだったけど、一応わかったって言ってくれたよ。…蒼矢は親父さんとかに話してないのか?」
「ないよ。話したところで何のメリットも無いし、要らない心配かけるだけだ」
「…そう…なのか?」
「…そもそも"事実"を明かしたところで、信じて貰えるかもわからないしな。…口先だけの世迷い事と、取り合ってもらえないかもしれない」
「…」

最後は独り言を呟くように言い、蒼矢は息をつきながらソファに腰を下ろす。
それきり口を閉ざし、正面の空間へぼんやり視線をやる彼の横顔を、烈はやはり黙って見つめていた。
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