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本編

ありし日の記憶①-10

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固まる夫妻の横から、結子ユイコ蒼矢ソウヤへ駆け寄っていく。

「ごめんね蒼矢~、お母さん放ったらかしにしちゃった…」
「だいじょうぶです」
「…パズル、楽しかったみたいね。完成させて、偉かったわね」

少し頬を染めている息子の心情を汲み取るように優しく声を掛けると、ついで傍らのレツへ振り向く。

「烈くんありがとうね、蒼矢と遊んでくれて。おばさん、すっごく助かった」
「! おれ、おれもえらい?」
「うん、偉い!」

結子に頭を撫でられ、満足したのか烈は蒼矢と同じように頬を紅潮させ、鼻の穴を広げた。
花房ハナブサ夫妻は今一度完成された立体パズルと幼い蒼矢を見比べ、感心するように息を吐き出した。

「いやぁ参った。おたくの坊ちゃんはべらぼうに出来がいいんですねぇ」
「ほんとに。うちの愚息に爪の垢煎じて飲ませたいくらいですよ…」

そう言いつつもいまだ半信半疑なのか、化かされたような表情を晒すふたりへ、結子はにっこりと笑顔を返した。



別れの挨拶を済ませ、髙城タカシロ母子が帰宅する姿を、花房一家が見送る。
軽く頭を下げる両親の横で、烈は腕をちぎれそうなくらい高らかに振っていた。

「そーや! おれたち、もうともだちだかんな!! こんどはおれがひーろーのかっこよさをおまえにおしえてやる! またあそぶぞ! ぜったいだぞ!!」

はちきれんばかりの笑顔と大声量を浴びながら、結子は蒼矢の手をつないだ。

「…良かったわね蒼矢、いいお友達出来て」
「はい」
「パズル、お母さんも買ってあげるわ。可動式のとかも楽しそうね! …そうだ、飾り棚も買わなくっちゃ…」

息子の興味がひとつ判って嬉しいのか、うきうき顔で考えを巡らせる結子を、蒼矢は上目遣いに見つめた。

「――お母さん、ぼく…日ようびのあさ8時から、てれびをみたいのですが」
「! テレビ? 急にまたどうしたの?」
「…知りたいことができました」

そうぽそりと、しかしはっきりと意思を込めて伝えてくる息子の大きな瞳に、結子は目元を緩ませ頷いた。

「うん、いいわよ。…お母さんも一緒に観ようかしら」
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