Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

本編

第23話_嵐を乗り越えた先の光-1

ヤマト王宮を突如襲った、内部犯による未曽有の大惨事となったテロが起きてから、数日が経った。

王宮の修繕は迅速かつ着実に進められ、地上階はほぼ元通り、3機のアンドロイドが暴れ、破壊レベルの高かった地下階留置所付近も、7,8割程度が復旧された。
セキュリティシステムも、国防隊の優秀なサイバー対策部隊の手により速やかに機能回復がなされ、加えて更なる高精度な防御システムの構築をもって再稼働されていた。

また、王宮を守る精鋭と謳われていた警備ロボットの多数がウイルスに犯されたことを受け、残存する全ての機体へボディリペアとAI認識機能の精査、全世界対応型の最新アンチウイルスシステムへのアップデートを行い、強固な護りを取り戻した。


今回のテロについては、単独犯行と認定された実行犯は"死亡"と届けられて幕引きとなった。
国内及び国外への情報発信用に開示された死因は、"国家防衛隊による逃走途中での射殺"となり、真実は公には秘された。
ミヤジマ博士の独自調査により、実行犯の『ユン』と、華国第一党の要人との繋がりが浮き彫りになり、改めて内閣へ提出され、専門省庁で再調査されることになった。
結果としてパイプがあったことは揺るぎない事実と判定されたが、元々高まっているヤマト王国と華国の国家間緊張を更に逆撫でしかねないとして、国家声明による世界への発信や、安全保障理事会への提出などは見送られた。

そして、ヤマト王国で製造された護衛機を基に、華国が極秘裏に改造したとされる戦闘機『86M-VA』は、国内関係各所へ報告がいくことも無いまま、最重要秘匿成果物として国防隊へ引き渡された。
長年論文上でしかその存在を語られず、実際に開発の手が入ることが無かった『戦闘機』の設計図、メカニズム、アンチシールドの構成物質など、隈なく調査が進んでいった。

もちろんこれは、ヤマト王国が戦闘機を接収したことが華国側へ暗に示された形になるが、当然華国としてはその点について触れれば自ら地雷を踏みかねないため、陣地へ戻って来るはずのコマを失う羽目になっても、何の反応も示しては来なかった。

結果的に、今回のテロ詳細の大筋が世界的に伏せられたことは、華国のヤマト王国に対する強硬外交への抑止力となり、同時にヤマト王国の戦闘機の確保は、華国に対する強力な外交カードを得た形になったのだった。