Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

独楽 悠

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本編

第16話_深手負う心と躰-1(★)

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★年齢制限表現(ハードなリョナ)有り

【地下side②】

フルフェイスから現れた『Unknown』の顔を見、ソウヤは表情を凍らせた。

「…お前は…、ユン先生の…!!」

顔を暴かれた、ユン氏所有の護衛機――正体"戦闘機『86M-VA』"は、至って涼しい顔つきで、藍色の目を大きく見張るソウヤを眺め返していた。
王子の間で対面した時にもサングラスで隠されていた眼は、血のように赤く、漆黒の体躯の中で妖しい光を放っていた。

…そんな…まさか。
…ユン先生が、テロの実行犯…!?
…あの穏やかな…お優しいユン先生が……!

……じゃあ…それならさっき、俺を襲ったのも…!?

突然突きつけられた事実と、胸を貫かれるような衝撃と失望に、思考回路が混乱をきたすソウヤだったが、『86M-VA』はそんな内情はお構いなしに口を開く。

「この眼を露にするのは、貴様で2体目だ。初めて見せたのは王子だったが、目を合わせた瞬間にどういうわけか泣かれてな。それからは、不要な恐怖を与えぬようサングラスをかけさせられるようになった。全く、人間というものは何に心を動かされるかわかったものではないな。心底面倒な生物よ」

そう吐き捨てるものの、『86M-VA』はすぐににやりと嗤った。

「しかし…視界に何も遮るものが無くなったのは、俺にとって僥倖でしかない。俺の正体を暴いた代償は大きいぞ、白の護衛機」
「…!」
「顔が割れた以上、貴様は主の元へは決して戻さん。…どの道俺と相対した時点で、そんな選択肢は残されていないがな」

『86M-VA』は、身構えるソウヤへ再び接近する。
詰めながら両腕を広げ、ソウヤの身体へ触れようと左右から大きく振るう。
ソウヤは矢継ぎ早に繰り出されるそれを紙一重でかわし切り、背後が無くなったタイミングで上へ跳ぶ。
『86M-VA』の両肩に仕込まれたショットガンが、真上へと逃げるソウヤを襲い、防御シールドに当たって散弾する。
無数の弾の衝撃に押し流されて空中でぐらつくソウヤの片足を掴むと、『86M-VA』は逆側へ向けて投げ飛ばす。
蹴られた時よりも速度が速く、ソウヤは制御する間も無く壁に叩きつけられる。

「っかはっ…」

身体が壁にめり込み、ソウヤは一時的に思考能力を失う。
『86M-VA』は瞬時に追いつき、動きの止まったソウヤの胸へ掌を当てる。
防御シールドが剥がれ無防備になった身体めがけ、『86M-VA』は両腕を前へまっすぐ伸ばし、至近距離からマシンガンを撃ち込む。

「っ…!!!」

銃弾を余すことなく全身に浴び、ソウヤは目を見開いたまま、声も出せずに硬直する。

「意外に硬い装甲だ。並の護衛機以上と見える。防御シールドなど要らないんじゃないか? 俺相手でなければ」

銃撃を止めると鼻で嗤い、『86M-VA』は壁から剥がれて足元に崩れ落ちるソウヤを見下ろす。
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