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どうしてここに
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「ノノノカさん!」
ノノノカ・ベルソードは、この国の冒険者ギルドを統べるベルソード家の当主である。
そう易々と動き回れる人間ではない。国の治安を守る一翼かつ、権力と武力を持ち合わせた者。大きく違う点はいくつかあるが、立場だけでわかりやすく例えるのならば警視総監のようなものだ。
そんなノノノカが屋台の中にいるものだから、冨岡は素っ頓狂な声をあげてしまう。
どうりで空気が緊張しているはずだ。
そんなことなど気にせずに、ノノノカは冨岡に笑顔を向ける。
「どうしたヒロヤ。ワシに会えたのがそんなに嬉しいか? わかるぞ。ワシもお前に会いたくての」
「どうしてノノノカさんがここに?」
ノノノカの言葉を流し冨岡が問いかけると、彼女は少し不満そうな表情を浮かべた。
「どうしてって、この男が冒険者ギルドでワシの名前を出したからじゃ。それとヒロヤの名前もな。お前の性格上、多少のことではワシを頼らんじゃろう。シャーナとの関係もまだ、現実味が薄いじゃろうからの。突然のことなのだから当然じゃ。そんなヒロヤがワシを頼ってきた。つまり尋常ならざる事態と、ワシは考えたわけじゃ。だからワシがここに来た。何かおかしいかの?」
「だって、ノノノカさんは忙しいじゃないですか」
「ヒロヤ、物事には優先順位というものがある。祖母として孫の一大事は何よりも大切なものじゃ。武器屋のクソジジイにされる孫自慢に飽き飽きしておったが、今ならば気持ちがわかるぞ。孫とは可愛いものじゃ」
「ノノノカさん・・・・・・」
祖母としての判断である。そう言われた冨岡は、胸の奥の方がくすぐったくなった。
ふわふわとして、妙な気持ちだ。だが悪くない。
思わず口角が上がる冨岡。
話をしたことで冨岡とノノノカは納得したようだったが、アメリアとレボルは呆気に取られている。
「あ、あの、トミオカさん」
恐る恐るレボルが口を開いた。
「はい?」
「その、ノノノカ・ベルソード様が・・・・・・自らのことを『祖母』と」
「ああ、はい。実は、そうなんです。つい最近わかったことで、俺もまだ信じ難いんですけど、どうやらそうらしいんです」
「え、じゃ、じゃあ、トミオカさんはベルソード家の血を?」
とめどなく疑問が溢れるレボル。
その問いに答えたのはノノノカだった。
「ベルソード家の血筋であるだけではないぞ。ヒロヤはベルソード家の次期当主じゃ」
「次期当主!?」
誰よりも先に驚いたのは、冨岡である。もちろんアメリアやレボルも驚いてはいたが、ノノノカの言葉というよりも冨岡にだった。
「俺が次期当主ってどういうことですか」
「心配するな、ヒロヤ。決定事項ではないぞ。ただの可能性じゃ。しかし、ワシの血を受け継ぐ者は他におらん。ヒロヤでなければ、お前の子でも良いぞ。いずれはそこの娘、確かアメリアと言ったか。彼女と子を成すじゃろう。子の選択肢として残してやれば、自由に選べる。もちろん強制はせん。嫌ならば、その辺にいる誰かにくれてやっても良い。ヒロヤを命懸けで支える誰かにな。そうじゃ、お前が継ぐか。レボルとやら」
そんな重大なものを簡単に扱わないでくれ、と思う冨岡。
だがノノノカにとって、簡単な話ではない。自分にとって立場や名誉よりも、冨岡が大切だ、と精一杯表現しているのである。
ノノノカ・ベルソードは、この国の冒険者ギルドを統べるベルソード家の当主である。
そう易々と動き回れる人間ではない。国の治安を守る一翼かつ、権力と武力を持ち合わせた者。大きく違う点はいくつかあるが、立場だけでわかりやすく例えるのならば警視総監のようなものだ。
そんなノノノカが屋台の中にいるものだから、冨岡は素っ頓狂な声をあげてしまう。
どうりで空気が緊張しているはずだ。
そんなことなど気にせずに、ノノノカは冨岡に笑顔を向ける。
「どうしたヒロヤ。ワシに会えたのがそんなに嬉しいか? わかるぞ。ワシもお前に会いたくての」
「どうしてノノノカさんがここに?」
ノノノカの言葉を流し冨岡が問いかけると、彼女は少し不満そうな表情を浮かべた。
「どうしてって、この男が冒険者ギルドでワシの名前を出したからじゃ。それとヒロヤの名前もな。お前の性格上、多少のことではワシを頼らんじゃろう。シャーナとの関係もまだ、現実味が薄いじゃろうからの。突然のことなのだから当然じゃ。そんなヒロヤがワシを頼ってきた。つまり尋常ならざる事態と、ワシは考えたわけじゃ。だからワシがここに来た。何かおかしいかの?」
「だって、ノノノカさんは忙しいじゃないですか」
「ヒロヤ、物事には優先順位というものがある。祖母として孫の一大事は何よりも大切なものじゃ。武器屋のクソジジイにされる孫自慢に飽き飽きしておったが、今ならば気持ちがわかるぞ。孫とは可愛いものじゃ」
「ノノノカさん・・・・・・」
祖母としての判断である。そう言われた冨岡は、胸の奥の方がくすぐったくなった。
ふわふわとして、妙な気持ちだ。だが悪くない。
思わず口角が上がる冨岡。
話をしたことで冨岡とノノノカは納得したようだったが、アメリアとレボルは呆気に取られている。
「あ、あの、トミオカさん」
恐る恐るレボルが口を開いた。
「はい?」
「その、ノノノカ・ベルソード様が・・・・・・自らのことを『祖母』と」
「ああ、はい。実は、そうなんです。つい最近わかったことで、俺もまだ信じ難いんですけど、どうやらそうらしいんです」
「え、じゃ、じゃあ、トミオカさんはベルソード家の血を?」
とめどなく疑問が溢れるレボル。
その問いに答えたのはノノノカだった。
「ベルソード家の血筋であるだけではないぞ。ヒロヤはベルソード家の次期当主じゃ」
「次期当主!?」
誰よりも先に驚いたのは、冨岡である。もちろんアメリアやレボルも驚いてはいたが、ノノノカの言葉というよりも冨岡にだった。
「俺が次期当主ってどういうことですか」
「心配するな、ヒロヤ。決定事項ではないぞ。ただの可能性じゃ。しかし、ワシの血を受け継ぐ者は他におらん。ヒロヤでなければ、お前の子でも良いぞ。いずれはそこの娘、確かアメリアと言ったか。彼女と子を成すじゃろう。子の選択肢として残してやれば、自由に選べる。もちろん強制はせん。嫌ならば、その辺にいる誰かにくれてやっても良い。ヒロヤを命懸けで支える誰かにな。そうじゃ、お前が継ぐか。レボルとやら」
そんな重大なものを簡単に扱わないでくれ、と思う冨岡。
だがノノノカにとって、簡単な話ではない。自分にとって立場や名誉よりも、冨岡が大切だ、と精一杯表現しているのである。
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