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魔王に子どもがいるとしたら

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 魔法や魔力という言葉に対して、圧倒的に知識が不足している冨岡は、そういうものなのかという認識しかできない。
 普通は感じるもの、などと言われても、それを前提として話を進めるしかなかった。
 そしてノルマンの特異体質。その情報は、冨岡にとって聞き逃せないものである。

「生まれつきの特異体質で、魔力の色を見る・・・・・・それって、俺の魔力も見えているんですか?」
「ほっほっほ、残念じゃがな、お前さんには自分が期待するほどの魔力は備わっておらんよ。稀におるんじゃ、ワシが見えんほど矮小な魔力の持ち主がな。まぁ、気を落とすことはない。研究をしていたワシが言うのもなんじゃが、魔法が全てではないぞ」

 そんなことを気に病んで問いかけたわけではない。魔力がない、というこの世界にとって異質な存在を認識されていないのならば問題はないだろう。
 冨岡は苦笑しながら話を進める。

「それは残念ですね。そっか、どおりで魔法が苦手だと思いましたよ。ハハハ」
「魔力とは、生まれつきある程度決まっているものじゃ。それは本人の努力とは関係ない。そして、人間の価値は生まれ持ったものでは決まらないんじゃ。大切なのは、どれだけ足掻いたか。その点で考えれば、あの男に敵うものなどおるまい」

 そう言いながらノルマンは、少し遠い目をした。『あの男』が誰のことなのか、冨岡にもすぐにわかる。
 魔王だ。
 この国内では、久しく魔王について話すことなどなかっただろう。そのため、こうして話しているうちに懐かしくなり、つい気を許したのかもしれない。
 
「話を聞く限り、才能もある上に努力し、必死に足掻いて生きていたんですね、魔王って」

 冨岡が言うと、ノルマンは不思議そうに目を丸くした。

「お前さんは魔王を恐れないんじゃな。どんな物語があろうと、魔王が導いた『結果』は世界を滅ぼさんとする悪行じゃ。あの男が『魔王の終焉』で死んでいなければ、この国は滅び、世界すら掌握されていたじゃろう。復讐の炎でな」
「ノルマンさんこそ、そう言いますけど魔王に対して、特別な感情を抱いていますよね。それは・・・・・・正義感に対しての同情ですか?」
「馬鹿言え、そんな安っぽいものではない。贖罪のようなものじゃ。ワシが『すべきだったができんかったこと』を成し、全てを失ったあの男へのな。もしも叶うならば、あの男にやり残したことはないか、と問いたいものじゃ」

 そこで冨岡は身を乗り出す。

「あの!」
「な、なんじゃ。びっくりした。老いた心の臓に大声は禁物じゃ。スゲェ驚いたぞ」
「たまに若々しい口調になるのはなんなんですか。いや、すみません。えっと、もしもですよ。たとえば、魔王に残された子どもがいるとしたら、どうしますか?」
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