264 / 498
話せないこと
しおりを挟む
冨岡が問いかけると、アレックスの父親は顔を背けて黙った。
「・・・・・・」
「どうして黙るんですか。ちゃんと説明してもらえなければ、納得できません。俺はアンタが」
沈黙を貫く父親に対して、冨岡が不満を述べる。
その言葉を遮るようにレボルが冨岡の肩を掴んだ。
「トミオカさん、どうやら何か事情があるようです。これまで語気の強かった方が黙っているんですよ。おそらくは・・・・・・」
言いながらレボルはアレックスに視線を送る。
その仕草から冨岡は『アレックスに聞かせられない何か』があるのだと察した。
「・・・・・・なるほど。レボルさん、アレックスを連れて屋台に戻っていてもらえませんか? 俺は最後まで話が聞きたい」
「大丈夫ですか? 私が離れても」
「多分、大丈夫でしょう。立ち上がるのもままならないようですから」
冨岡が答えると、レボルはアレックスの父親を確認してから頷く。
「・・・・・・そうですね。わかりました、できるだけ早く戻ってきますから、トミオカさんも熱くならないように気をつけてください。気持ちはわかりますけど、感情に飲まれて吐いた言葉は大抵ロクなことにならない。そうでしょう?」
「はい、気をつけます。あ、そうだ。アメリアさんに夕食作りをお願いしてください。アレックスと一緒に食べてて欲しい、と」
「了解です」
レボルは多少心配そうにしながらもアレックスを連れて家から出ていった。
二人きりになったところで、冨岡はアレックスの父親に歩み寄り、その場に腰を下ろす。対等に話をする第一歩は目線を合わせるところから。
「改めて名乗りますね。俺は冨岡。小さな屋台で飲食店を運営している・・・・・・商人みたいなものです。名前を聞いてもいいですか? いつまでもアンタなんて呼ぶわけにはいかないでしょう」
「・・・・・・」
「俺みたいな若造にアンタって呼ばれ続けていいんですか?」
「・・・・・・チッ・・・・・・ブルーノ」
アレックスの父親、いやブルーノは不満そうに名乗る。
初めて会話がしっかりと成立したことに安堵を覚えながら、冨岡は話を進めた。
「ブルーノさんですね。失礼な口をきいてすみませんでした。でも、これで話してもらえますよね? どうして、働けないのか・・・・・・真っ当な生活ができないのかを」
「初対面のくせにズカズカと踏み込んでんじゃねぇよ。関係ねぇだろ」
「関係はなくとも、アレックスが苦しんでいるのを知った以上見過ごせませんよ。ブルーノさんがそのつもりなら、俺は金貨一枚を置いてアレックスを連れて帰りますよ? それでもいいんですか?」
「・・・・・・」
いざ冨岡が金貨を支払う、という姿勢を見せた途端ブルーノは黙ってしまう。そこで冨岡は確信した。
「よくないですよね? アレックスを簡単に手放していい、なんて思ってれば、アレックスを気遣って話せないなんてことあるはずないですから」
「知ったような口を・・・・・・」
「わかんない人だな。知らないから教えて欲しいって言ってんじゃないか」
呆れた口調で冨岡が言う。
「・・・・・・」
「どうして黙るんですか。ちゃんと説明してもらえなければ、納得できません。俺はアンタが」
沈黙を貫く父親に対して、冨岡が不満を述べる。
その言葉を遮るようにレボルが冨岡の肩を掴んだ。
「トミオカさん、どうやら何か事情があるようです。これまで語気の強かった方が黙っているんですよ。おそらくは・・・・・・」
言いながらレボルはアレックスに視線を送る。
その仕草から冨岡は『アレックスに聞かせられない何か』があるのだと察した。
「・・・・・・なるほど。レボルさん、アレックスを連れて屋台に戻っていてもらえませんか? 俺は最後まで話が聞きたい」
「大丈夫ですか? 私が離れても」
「多分、大丈夫でしょう。立ち上がるのもままならないようですから」
冨岡が答えると、レボルはアレックスの父親を確認してから頷く。
「・・・・・・そうですね。わかりました、できるだけ早く戻ってきますから、トミオカさんも熱くならないように気をつけてください。気持ちはわかりますけど、感情に飲まれて吐いた言葉は大抵ロクなことにならない。そうでしょう?」
「はい、気をつけます。あ、そうだ。アメリアさんに夕食作りをお願いしてください。アレックスと一緒に食べてて欲しい、と」
「了解です」
レボルは多少心配そうにしながらもアレックスを連れて家から出ていった。
二人きりになったところで、冨岡はアレックスの父親に歩み寄り、その場に腰を下ろす。対等に話をする第一歩は目線を合わせるところから。
「改めて名乗りますね。俺は冨岡。小さな屋台で飲食店を運営している・・・・・・商人みたいなものです。名前を聞いてもいいですか? いつまでもアンタなんて呼ぶわけにはいかないでしょう」
「・・・・・・」
「俺みたいな若造にアンタって呼ばれ続けていいんですか?」
「・・・・・・チッ・・・・・・ブルーノ」
アレックスの父親、いやブルーノは不満そうに名乗る。
初めて会話がしっかりと成立したことに安堵を覚えながら、冨岡は話を進めた。
「ブルーノさんですね。失礼な口をきいてすみませんでした。でも、これで話してもらえますよね? どうして、働けないのか・・・・・・真っ当な生活ができないのかを」
「初対面のくせにズカズカと踏み込んでんじゃねぇよ。関係ねぇだろ」
「関係はなくとも、アレックスが苦しんでいるのを知った以上見過ごせませんよ。ブルーノさんがそのつもりなら、俺は金貨一枚を置いてアレックスを連れて帰りますよ? それでもいいんですか?」
「・・・・・・」
いざ冨岡が金貨を支払う、という姿勢を見せた途端ブルーノは黙ってしまう。そこで冨岡は確信した。
「よくないですよね? アレックスを簡単に手放していい、なんて思ってれば、アレックスを気遣って話せないなんてことあるはずないですから」
「知ったような口を・・・・・・」
「わかんない人だな。知らないから教えて欲しいって言ってんじゃないか」
呆れた口調で冨岡が言う。
0
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?
澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果
異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。
実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。
異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。
そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。
だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。
最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。
もふけもわふーらいふ!
夜狐紺
ファンタジー
――これは、もふもふ世界の九尾のお屋敷で繰り広げられる、一人の少年とケモノ達のほのぼの和風ライフの物語である。
九尾の狐、『御珠様』の妖術によって高校生の浅野景が迷い込んでしまったのは、獣人だけが暮らす和風世界! 有無を言わさぬ御珠様のもふもふで妖しい誘惑に翻弄された景は、いつの間にか彼女のお屋敷で住み込みで働くことが決まってしまう。
灰白猫の『ちよ』や、白狐の双子、そこには他にも様々なケモノたちが暮らしていて……。
恋に神事にお手伝い、賑やかなお屋敷の日常が今、始まる!
※小説家になろうにも公開しています。
※2017/12/31 HOTランキング8位
※2018/1/2 HOTランキング6位になりました! ありがとうございます!!!
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる