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半分のクッキー
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冨岡がそう問いかけると、アメリアは表情に明るさを取り戻し微笑んだ。
「トミオカさん・・・・・・ありがとうございます」
「ははっ、ありがとうはいらないって言ってるじゃないですか。じゃあ、その方向で動きますね」
そこから冨岡は「順番は逆になりましたが」とミルコの工房が自分の管理下に置かれたことを説明する。
キュルケース家がミルコの工房を救う条件として、冨岡が工房のオーナーになるという話だ。そこで所謂『中抜き』のようなことをして収益を上げることはしないつもりだが、大工工房とその職人が、ある程度融通を利かせてくれるということにはなる。
もちろん、オーナーだからといってミルコの利益を削るような真似はしない。仕事を頼むときは正規の料金を支払う心算だ。
その話を先にすべきだったと詫びてから、建て替えの話を持ち出したのはこれが理由だと付け足す。
ミルコの話を聞いたアメリアは、納得したように頷き「建て替えはミルコさんの工房にお任せするんですよね?」と訊ねた。
「はい、そのつもりですよ。キュルケース家でもこの教会の建て替えをしている間は、他の仕事を入れないようにしてくれると思います。まだキュルケース家には話してないですけどね」
冨岡はそう言って頬を掻く。
ともかく、教会の建て替えはお金の問題が解決次第行うことに決定。
冨岡の目標である学園作りに半歩近づいたと言っていいだろう。
そのまま冨岡は、アメリアたちが屋台を離れてからの顛末を話した。改めて考えると、様々なことが進みつつある。
明日の早朝、冨岡は元の世界に戻り、美作が買い出してきた物を取りに行かなければならない。その中には酒類があり、その酒を利用して何か商売ができないか考える必要がある。
その後、レボルが従業員として屋台にやってくるので仕事を教える。
屋台を予定時間に閉め、貧民街でハンバーガーの配布。そのまま貧民街で誰か雇えないか模索する。
明日以降、時間のあるタイミングでミルコの工房に立ち寄り、オーナーとして契約。キュルケース家にも挨拶をしなければならないだろう。
そのタイミングで酒を持って行き、貴族相手に売れないか相談してもいい。
アメリアと話しながらこれからのことを考えていた冨岡は、一気に疲労を感じため息をついた。
「やることいっぱいだなぁ」
そんな声を聞いたフィーネが、クッキーを齧りながら首を傾げる。
「トミオカさん、疲れてるの?」
「うーん、そうだねぇ。頑張るのは楽しいんだけど、やることがいっぱいだとどうしてもね」
「フィーネね、甘いもの食べると疲れとか無くなるの。だから、これ半分あげる」
そう言いながらフィーネは、食べていたクッキーを半分に割って冨岡に渡す。
そんな姿が可愛らしくて、冨岡は疲れなど忘れ微笑んだ。
「ははっ、ありがとう。今ので疲れなんて吹き飛んだよ。頑張るね」
「うん!」
「トミオカさん・・・・・・ありがとうございます」
「ははっ、ありがとうはいらないって言ってるじゃないですか。じゃあ、その方向で動きますね」
そこから冨岡は「順番は逆になりましたが」とミルコの工房が自分の管理下に置かれたことを説明する。
キュルケース家がミルコの工房を救う条件として、冨岡が工房のオーナーになるという話だ。そこで所謂『中抜き』のようなことをして収益を上げることはしないつもりだが、大工工房とその職人が、ある程度融通を利かせてくれるということにはなる。
もちろん、オーナーだからといってミルコの利益を削るような真似はしない。仕事を頼むときは正規の料金を支払う心算だ。
その話を先にすべきだったと詫びてから、建て替えの話を持ち出したのはこれが理由だと付け足す。
ミルコの話を聞いたアメリアは、納得したように頷き「建て替えはミルコさんの工房にお任せするんですよね?」と訊ねた。
「はい、そのつもりですよ。キュルケース家でもこの教会の建て替えをしている間は、他の仕事を入れないようにしてくれると思います。まだキュルケース家には話してないですけどね」
冨岡はそう言って頬を掻く。
ともかく、教会の建て替えはお金の問題が解決次第行うことに決定。
冨岡の目標である学園作りに半歩近づいたと言っていいだろう。
そのまま冨岡は、アメリアたちが屋台を離れてからの顛末を話した。改めて考えると、様々なことが進みつつある。
明日の早朝、冨岡は元の世界に戻り、美作が買い出してきた物を取りに行かなければならない。その中には酒類があり、その酒を利用して何か商売ができないか考える必要がある。
その後、レボルが従業員として屋台にやってくるので仕事を教える。
屋台を予定時間に閉め、貧民街でハンバーガーの配布。そのまま貧民街で誰か雇えないか模索する。
明日以降、時間のあるタイミングでミルコの工房に立ち寄り、オーナーとして契約。キュルケース家にも挨拶をしなければならないだろう。
そのタイミングで酒を持って行き、貴族相手に売れないか相談してもいい。
アメリアと話しながらこれからのことを考えていた冨岡は、一気に疲労を感じため息をついた。
「やることいっぱいだなぁ」
そんな声を聞いたフィーネが、クッキーを齧りながら首を傾げる。
「トミオカさん、疲れてるの?」
「うーん、そうだねぇ。頑張るのは楽しいんだけど、やることがいっぱいだとどうしてもね」
「フィーネね、甘いもの食べると疲れとか無くなるの。だから、これ半分あげる」
そう言いながらフィーネは、食べていたクッキーを半分に割って冨岡に渡す。
そんな姿が可愛らしくて、冨岡は疲れなど忘れ微笑んだ。
「ははっ、ありがとう。今ので疲れなんて吹き飛んだよ。頑張るね」
「うん!」
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