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炭酸を秘めた瞳

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 冨岡なりの冗談だったがローズにとって『針千本』は想像しうる限りの極刑なのだろう。彼女は力強く頷いた。

「わかったわ。話を聞くだけでいいのよね? それ以上は約束していないわよ。あなたが用意した食べ物や娯楽を体験している時だけ、話を聞く。それだけだからね」

 まだ子どもなローズにとって『指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます』は効果絶大である。それが約束における定型文だと知らず信じているのだから、余計に慎重だ。
 ローズとの約束を済ませた冨岡は、ダルクから新しいグラスを受け取ると先ほどの炭酸飲料を注ぐ。

「それじゃあ、まずはこちらをどうぞ。これを飲んでいる間、俺の話を聞いてくれますよね?」

 冨岡に問われたローズは弾ける炭酸のように目を輝かせながら受け取った。

「ええ、いいわよ」

 既にローズの心は炭酸飲料に持っていかれているので、なんでも即答する。
 そんな状態を見抜いた冨岡は、ローズが座っている椅子の斜め向かいに設置されたソファに座り話を続けた。
 
「じゃあ、まずはローズお嬢様が」

 冨岡が言いかけた瞬間、ローズが立ち上がり悲鳴に近い言葉を放つ。

「なにこれ!」

 冨岡もダルクも、ローズが炭酸飲料を飲めばそんな反応をするだろうと予測していた。だがダルクは立場上、ローズの身に何が起きたのか確認しなければならない。

「大丈夫ですか、ローズお嬢様。何かお体に異変が?」

 するとローズは元々大きな目を更に開き、冨岡の方向に身を乗り出す。
 
「トミオカって言ったわね? あなたがこれを作り出したの?」
「いえ、俺は買い付けてきただけで作り出したわけではないですよ」

 冨岡が答えるとローズは残念そうにグラスを眺めた。残り少なくなった炭酸飲料を惜しむローズの視線は、彼女の年齢に相応しい。

「そうなのね・・・・・・あなたが作り出したのならいつでも飲めると思ったのに・・・・・・これほど美味しいものだと相当値段も張るでしょうね。どう見ても一般庶民であるあなたがこれを常に用意するのは難しいかしら」

 どう見ても一般人は余計だな、と思いながらも冨岡は微笑んだ。

「ははっ、大丈夫ですよ。いつでも用意できますから、遠慮なく飲んでください。あ、でも飲みすぎると太るかもしれないので気を付けてくださいね」
「そうなの? これをいつでも用意できるなんて・・・・・・少しあなたを甘く見ていたわ。ハンバーガーを作り出しただけあるわね」

 感心するローズ。そんな彼女の言葉を聞いた冨岡は良いタイミングだ、とハンバーガーについて問いかける。

「そうだ、ハンバーガーですよ。どうしてローズお嬢様はハンバーガーのことで怒っていたんですか?」
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