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アメリアの過去

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 もちろん、一度では運びきれないので最初に食材を運び、明日の準備をアメリアに頼んでから残りを数回に分けて持ち込んだ。
 冨岡がリアカーを使って二度目を運んだ時にはアメリアは玉ねぎを切り終え、フィーネを寝かしつけているところだった。
 時間的にそうだろうと想定していた冨岡は、フィーネを起こさないよう静かに教会の中に運び入れていく。
 しばらくするとそこそこ広いはずの教会の中に物資の山が出来上がっていった。
 ひどく疲れた冨岡は、市場とかで荷物を運ぶ乗り物を持ち込めないかな、と本気で考える。一度元の世界に戻った時にネットで検索すると『ターレット式構内運搬自動車』という乗り物だということがわかった。人が立って乗り後ろに荷物を積む便利な乗り物である。しかし、異世界でそんな物に乗っていたら悪目立ちしてしまうこと請け合いだ。
 値段は五十万円前後の物が多く、もちろん購入は可能だが冷静になり諦める。
 何とか運び切った冨岡が物資の前で座り込むとアメリアがグラスに注いだ水を持ってきた。

「お疲れ様です」
「あ、アメリアさん、ありがとうございます。どうですか、準備の方は」

 水を受け取りながら冨岡が問いかけると、アメリアは微笑んでから頷く。

「ええ、食材の準備は終わりました。後で確認してもらいたくはありますけど、大丈夫だと思います」
「もう終わっちゃったんですか? 結構な量ありましたよね」

 初日の物珍しさもあり百人分では足りないと判断した冨岡は、二百人分の食材を用意していた。それを一人で準備し終えたと言うのだから驚くのも無理はない。
 そんな冨岡にアメリアは当然のように答える。

「これまで経験してきた仕事に比べればなんてことありませんよ。一晩では不可能な量を求められて、無理だった場合は賃金が払われないなんてことも」
「そんなひどい状況で働いていたんですか!」
「それでも仕事がある分マシですよ。そんなお仕事ばっかりだったので、手早く動くことに慣れてるんです」

 胸の前で両手を握り朗らかな表情で言うアメリア。
 冨岡からすれば考えられないほどひどい話だが、この世界では当たり前のようにまかり通っているのかもしれない。
 変に同情するのも失礼にあたると考え、冨岡は小さく頷いた。

「そうだったんですか。それにしても多かったでしょう。本当にありがとうございます」
「いえいえ、トミオカさんこそこれだけの荷物を・・・・・・」

 アメリアは『一体どこから』と続けようとしたが、商人にとって大切な入手経路を聞き出すわけにはいかない、と言葉を止める。
 それと同時に冨岡は、もうアメリアが苦しい思いをしないでいいような環境を作ろうと心に誓った。
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