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包装紙

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 その言葉に意味があったわけではない。日本で生きてきた冨岡としては当然のことを言っただけである。誰が相手でも同じ値段で売るのは普通だ。
 しかし、貴族の男にとっては珍しいことだったらしく驚きながら笑う。

「はっはっは、まったく正直な店主だな。わかった、ここはこの店のルールを守らせてもらおう。二つで銀貨一枚だったね」

 そう言って貴族の男は改めて銀貨を取り出す。調理している冨岡の代わりにアメリアが受け取り、売上用の箱に入れた。そのままアメリアは持ち帰り用の紙袋を用意し、ハンバーガーが出来上がるのを待つ。
 この紙袋やハンバーガーに巻く紙も冨岡が用意してきたものなのだが、紙自体も珍しいらしくほとんどの客が驚いていた。貴族の男も例に漏れず、紙に注目する。

「それは紙だな。それも上質な紙・・・・・・それだけで銀貨一枚以上の価値があるだろう? この値段で売っていては大赤字・・・・・・いや、その前に普通の商人には用意できるものじゃないはずだ」

 いつかは指摘されるかもしれないと思っていたが、これまでハンバーガーを買っていった者の多くは庶民である。その多くは紙を珍しいものだと認識していても、価値までは知らなかった。
 貴族である男は珍しさだけではなく価値の高さまで理解したようだ。
 冨岡は慌てて事前に用意していた返答を言葉にする。

「俺の知り合いが独自の製法でこの紙を作っていまして、安く手に入るんですよ」

 もしも紙について聞かれた時に答えようと思って準備していた。
 冨岡としては焦らずに答えたつもりだったが、貴族の男は何かに気づいたように頷いてから微笑む。

「ふっ、そういうことにしておこうか」

 ちょうどそのタイミングでハンバーガーが完成し、アメリアが包装して手渡した。

「どうぞ」
「ああ、ありがとう。これで食べてくれるといいんだがな。また美味しいものがあれば買わせていただくよ。いつもここで屋台を出してるのかな?」
「えっと」

 答えに困ったアメリアは冨岡に視線を送る。この場所でトラブルに巻き込まれたばかりで、場所を変えるという話はできていなかった。
 冨岡としてもトラブルに巻き込まれないようにしなくては、と考えているものの次の場所に当てなどない。

「まだ決めていないんですよ」

 冨岡が正直に答えると男は少し考えてから再び問いかける。

「そうか・・・・・・では本拠地はどこかな? 店舗としてはなくとも、帰る場所はあるだろう」
「本拠地というほどではないですが、屋台は教会に置かせてもらっています」

 そう答えながら冨岡はアメリアに目をやった。
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