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目覚めぬ者、目覚める者
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終わりの瞬間になっても冨岡は何かの能力に目覚めることはなかった。
そう『冨岡は』である。
「だめぇ!!」
フィーネの純粋な叫び声が広場に響いた。心から冨岡を救いたいという叫び声だ。幼く純粋で濁りのない心は目の前の悲痛な状況を受け入れられず、現実を拒否する。
するとフィーネの体から緑色の光が溢れ、冨岡を攻撃しようとしていた男の前に光の壁を作り出した。それによって男の蹴りは冨岡まで届かず、衝撃は自分に返ってきてバランスを崩す。後ろに倒れそうになった男の背を支えたのは、また緑の光によって作り出された壁だった。
一瞬の内に男は光の壁に包まれたのである。
「な、何だこれ!」
狭い四方の壁に囲まれた男は、何とか抜け出そうとする。だが殴っても蹴っても全ては自分に返ってくるだけで、壁はびくともしなかった。
そんなフィーネの『能力』を見ていたアメリアは数秒目を奪われる。
「フィーネ・・・・・・これは、まさか」
しかし、段々と冨岡の体が重くなっていることに気づき、視線を落とした。
「トミオカさん、ダメです! 意識をしっかり保ってください! 誰か回復魔法士を、回復魔法士を呼んでください」
「う・・・・・・」
アメリアの声が何とか冨岡の意識を繋ぐ。体が重くなっていくのは意識が薄れ、自分の体を支えられなくなっている証拠だ。もう残された時間は多くない。
そんな状況の中、周囲の反応は冷たかった。いや、現実的と言った方がいいだろう。
「なぁ、お嬢さん。残念だが今すぐ回復魔法士を呼んだとしても、その傷じゃあ治せない」
「ああ、出血も酷いし、内臓にも傷が入ってるだろう。回復魔法は万能なもんじゃない。その傷を治せるレベルの回復魔法士なんてこの街にはいねぇよ」
周囲の声を聞いたアメリアは溢れる涙を拭うこともせず、冨岡の体を抱きしめた。
「そんな、嫌です。トミオカさん・・・・・・トミオカさん!」
喉が潰れるほどの声で叫ぶアメリア。そんな彼女に近づいたのは緑の光を放つ小さな体だった。
「先生、トミオカさん・・・・・・死んじゃうの?」
フィーネは今にも泣き出しそうに言う。
本来ならば否定すべきだろう。しかし、悲しげなフィーネに気休めを言うことなど出来ず、アメリアは黙ってしまった。その沈黙を本能的に肯定だと察したフィーネは、冨岡の体に駆け寄り抱きつく。
「嫌だ、嫌だよトミオカさん。いなくならないでよ。死なないでよ、トミオカさん! フィーネにお勉強教えてくれるって言った、美味しいものいっぱい食べさせてくれるって言った、先生のことを一緒に笑顔にするんでしょ、トミオカさん!」
再びフィーネは目の前の現実を拒否した。冨岡が死ぬ、という未来を変えたいと願った。
もう一度言う。『冨岡』は何の能力にも目覚めない。少年漫画の主人公のような奇跡を起こせはしない。
だが、彼女は目覚めていた。フィーネはその血に宿る才能を開花させたのである。
そう『冨岡は』である。
「だめぇ!!」
フィーネの純粋な叫び声が広場に響いた。心から冨岡を救いたいという叫び声だ。幼く純粋で濁りのない心は目の前の悲痛な状況を受け入れられず、現実を拒否する。
するとフィーネの体から緑色の光が溢れ、冨岡を攻撃しようとしていた男の前に光の壁を作り出した。それによって男の蹴りは冨岡まで届かず、衝撃は自分に返ってきてバランスを崩す。後ろに倒れそうになった男の背を支えたのは、また緑の光によって作り出された壁だった。
一瞬の内に男は光の壁に包まれたのである。
「な、何だこれ!」
狭い四方の壁に囲まれた男は、何とか抜け出そうとする。だが殴っても蹴っても全ては自分に返ってくるだけで、壁はびくともしなかった。
そんなフィーネの『能力』を見ていたアメリアは数秒目を奪われる。
「フィーネ・・・・・・これは、まさか」
しかし、段々と冨岡の体が重くなっていることに気づき、視線を落とした。
「トミオカさん、ダメです! 意識をしっかり保ってください! 誰か回復魔法士を、回復魔法士を呼んでください」
「う・・・・・・」
アメリアの声が何とか冨岡の意識を繋ぐ。体が重くなっていくのは意識が薄れ、自分の体を支えられなくなっている証拠だ。もう残された時間は多くない。
そんな状況の中、周囲の反応は冷たかった。いや、現実的と言った方がいいだろう。
「なぁ、お嬢さん。残念だが今すぐ回復魔法士を呼んだとしても、その傷じゃあ治せない」
「ああ、出血も酷いし、内臓にも傷が入ってるだろう。回復魔法は万能なもんじゃない。その傷を治せるレベルの回復魔法士なんてこの街にはいねぇよ」
周囲の声を聞いたアメリアは溢れる涙を拭うこともせず、冨岡の体を抱きしめた。
「そんな、嫌です。トミオカさん・・・・・・トミオカさん!」
喉が潰れるほどの声で叫ぶアメリア。そんな彼女に近づいたのは緑の光を放つ小さな体だった。
「先生、トミオカさん・・・・・・死んじゃうの?」
フィーネは今にも泣き出しそうに言う。
本来ならば否定すべきだろう。しかし、悲しげなフィーネに気休めを言うことなど出来ず、アメリアは黙ってしまった。その沈黙を本能的に肯定だと察したフィーネは、冨岡の体に駆け寄り抱きつく。
「嫌だ、嫌だよトミオカさん。いなくならないでよ。死なないでよ、トミオカさん! フィーネにお勉強教えてくれるって言った、美味しいものいっぱい食べさせてくれるって言った、先生のことを一緒に笑顔にするんでしょ、トミオカさん!」
再びフィーネは目の前の現実を拒否した。冨岡が死ぬ、という未来を変えたいと願った。
もう一度言う。『冨岡』は何の能力にも目覚めない。少年漫画の主人公のような奇跡を起こせはしない。
だが、彼女は目覚めていた。フィーネはその血に宿る才能を開花させたのである。
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