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ハグの交換条件

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「ふわぁ、トミオカさぁん」

 言いながらフィーネが冨岡に近寄り足元に抱きついた。突然のことに慌てる冨岡。

「ちょ、フィーネちゃん?」
「何だか、ふわふわしてきたの。ぎゅーってしたい気分」
「フィーネちゃんまでチョコレートの効果で・・・・・・よしよし、ちょっとお水を飲みましょうね」
「んー、何でぇ?」

 冨岡がフィーネの使っていたグラスにミネラルウォーターを入れて手渡す。しかしフィーネはそれを飲もうとはしない。
 口に残る甘さを楽しんでいるのだ。
 それでもチョコレートの効果を打ち消すため、冨岡はフィーネに水を飲ませる。

「はい、お口を開けてね。ほら、お水ですよ」

 口元まで水を持ってこられたフィーネは仕方なく水を飲み、一息ついた。

「ふぅ、あれ? フィーネ今何してたんだっけ?」

 水を飲み干したフィーネは急に正気を取り戻し、首を傾げる。

「え、チョコレートが効いている間のことを覚えていない・・・・・・それにミネラルウォーターを飲んだ瞬間元通りに・・・・・・」

 何が起きているのかを整理するため冨岡が呟いた。
 今分かっている事はチョコレートには媚薬効果に近しいものがあるということ。少なくともフィーネはミネラルウォーターで元通りの戻ったこと。そしてチョコレートが効いている間のことは覚えていないということ。
 冨岡が考えている間にもアメリアの行動は進む。

「ずるいですよ、フィーネ。私もトミオカさんにぎゅってしたいです」

 言いながら椅子から立ち上がり、彼女は冨岡に近づいた。
 向かってくるのは五歳の女の子ではない。相手は二十歳くらいの美しい女性である。チョコレートを食べていない冨岡も動悸を感じ始めた。
 しかし、アメリアが動いているのはチョコレートの媚薬効果によるもの。彼女の意思ではないだろう。
 そのままそれを受け入れるわけにはいかない、と冨岡はミネラルウォーターをグラスに注ぎ口元に持っていった。

「アメリアさん、ほらお水を飲んでください。落ち着きますから」
「えぇ、いらないです。それよりトミオカさんを」
「ちょちょちょ、待ってください。まずはお水です。お水を飲んだ後であればいくらでも、何でもしますから!」

 仕方なく冨岡はそう約束をしてアメリアの口元にグラスを押し付ける。多少自惚れているように聞こえるが、今のアメリアに水を飲ますのであれば最適な交換条件だ。
 それを聞いたアメリアは嬉しそうな表情で確認する。

「本当ですね? じゃあ、お水を飲めば何をしてもいいんですね?」
「ええ、約束します。だからお水を飲んでください」

 ミネラルウォーターを飲めば元に戻るはずだと信じて冨岡は頷いた。
 アメリアは条件と同時に水を飲み込む。
 その瞬間、口の中の甘さと共にチョコレートの媚薬効果を洗い流した。

「あれ? 私、一体何をして・・・・・・」
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