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とろける甘味と心
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冨岡の言葉を聞いたアメリアは一瞬呆然としたが、意味もなく笑ってしまう。自分でも理由はわからなかった。それでも笑いたくなったのである。
「ふふふっ、何ですかそれ。こちら側にいいことしかない言質を取られたのは初めてです。おかしいですよ、ふふっ。本当に神様みたい」
「もしも俺が神様なら、これを運命だと思って諦めるしかないですね。俺が必ずお二人を幸せにしますから、諦めて幸せになってください」
「も、もう。変な人・・・・・・でも、フィーネが何と言うか」
そう言ってアメリアはフィーネに視線を送った。するとフィーネはよだれを垂らす勢いで言葉を吐き出す。
「ねぇ、これ食べてもいい?」
どうやら冨岡の話よりもチョコレートの方がいいらしい。当然といえば当然だ。
甘い匂いに誘われたカブトムシのようなフィーネに笑顔を向けてアメリアは冨岡に答えを出す。
「どうやらフィーネはトミオカさんにメロメロのようですね。フィーネがいいなら私が反対する理由はありませんけど・・・・・・というか、トミオカさんが良ければ居てほしいです」
「ははっ、フィーネちゃんが夢中なのはチョコレートの方ですけどね。居ていいならここに居させてください。よろしくお願いしますね?」
「はい・・・・・・よろしくお願いします」
照れながら答えるアメリアの表情は優しく美しい。純粋に困っていたアメリアたちを支えたいと思っていた冨岡だが、特別な感情を抱きそうになる。
自分の気持ちを抑えるために冨岡はフィーネにチョコレートを手渡した。一枚丸々食べるとフィーネには多すぎるかもしれないと考え半分に割ったものである。
「はい、どうぞ」
「わぁ、ありがとう! あーむっ・・・・・・ん!」
チョコレートを一口齧ると花が満開になったかのようにフィーネの表情は明るくなった。この世界において甘味は果物や一部の野菜で感じるのが一般的である。蜂蜜に似た物も存在するが嗜好品として扱われていた。砂糖ともなれば貴族や大商人の口にしか入らない。フィーネが興奮するのも当然だ。
「何これ、甘くてとろけて幸せの味!」
そう表現するフィーネに冨岡が微笑みかける。
「気に入った?」
「うん!」
「ははっ、良かったよ。でも食べすぎると体に悪いからそれだけね?」
「はーい」
素直に冨岡の言葉を受け止めるフィーネ。アメリアはまるで本当の家族のようだと思った。冨岡が父でフィーネが娘、そして自分は・・・・・・そう考えて再びアメリアは頬を染める。
「ううん、トミオカさんは優しさで・・・・・・変なこと考えるのは失礼ですよね。うん」
自分に言い聞かせるよう小さな声でアメリアが呟いた。うっすらと何かが聞こえた冨岡は首を傾げて問いかける。
「何か言いましたか、アメリアさん」
「え、いや、何でもないですよ」
「あ、そっか。じゃあ、はい」
誤魔化すアメリアだったが冨岡は勝手に何かを納得した表情で半分に割ったチョコレートの残りを手渡した。
違うんだけどなぁ、と思いながらもアメリアは受け取り笑みを浮かべる。
「ふふっ、ありがとうございます。いただきますね」
「ふふふっ、何ですかそれ。こちら側にいいことしかない言質を取られたのは初めてです。おかしいですよ、ふふっ。本当に神様みたい」
「もしも俺が神様なら、これを運命だと思って諦めるしかないですね。俺が必ずお二人を幸せにしますから、諦めて幸せになってください」
「も、もう。変な人・・・・・・でも、フィーネが何と言うか」
そう言ってアメリアはフィーネに視線を送った。するとフィーネはよだれを垂らす勢いで言葉を吐き出す。
「ねぇ、これ食べてもいい?」
どうやら冨岡の話よりもチョコレートの方がいいらしい。当然といえば当然だ。
甘い匂いに誘われたカブトムシのようなフィーネに笑顔を向けてアメリアは冨岡に答えを出す。
「どうやらフィーネはトミオカさんにメロメロのようですね。フィーネがいいなら私が反対する理由はありませんけど・・・・・・というか、トミオカさんが良ければ居てほしいです」
「ははっ、フィーネちゃんが夢中なのはチョコレートの方ですけどね。居ていいならここに居させてください。よろしくお願いしますね?」
「はい・・・・・・よろしくお願いします」
照れながら答えるアメリアの表情は優しく美しい。純粋に困っていたアメリアたちを支えたいと思っていた冨岡だが、特別な感情を抱きそうになる。
自分の気持ちを抑えるために冨岡はフィーネにチョコレートを手渡した。一枚丸々食べるとフィーネには多すぎるかもしれないと考え半分に割ったものである。
「はい、どうぞ」
「わぁ、ありがとう! あーむっ・・・・・・ん!」
チョコレートを一口齧ると花が満開になったかのようにフィーネの表情は明るくなった。この世界において甘味は果物や一部の野菜で感じるのが一般的である。蜂蜜に似た物も存在するが嗜好品として扱われていた。砂糖ともなれば貴族や大商人の口にしか入らない。フィーネが興奮するのも当然だ。
「何これ、甘くてとろけて幸せの味!」
そう表現するフィーネに冨岡が微笑みかける。
「気に入った?」
「うん!」
「ははっ、良かったよ。でも食べすぎると体に悪いからそれだけね?」
「はーい」
素直に冨岡の言葉を受け止めるフィーネ。アメリアはまるで本当の家族のようだと思った。冨岡が父でフィーネが娘、そして自分は・・・・・・そう考えて再びアメリアは頬を染める。
「ううん、トミオカさんは優しさで・・・・・・変なこと考えるのは失礼ですよね。うん」
自分に言い聞かせるよう小さな声でアメリアが呟いた。うっすらと何かが聞こえた冨岡は首を傾げて問いかける。
「何か言いましたか、アメリアさん」
「え、いや、何でもないですよ」
「あ、そっか。じゃあ、はい」
誤魔化すアメリアだったが冨岡は勝手に何かを納得した表情で半分に割ったチョコレートの残りを手渡した。
違うんだけどなぁ、と思いながらもアメリアは受け取り笑みを浮かべる。
「ふふっ、ありがとうございます。いただきますね」
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