2 / 8
手紙と彼女
しおりを挟む
「いや、入院とかじゃなくて」
「通院とかってこと?」
「いや、あのですね。死んじゃうんです」
「は・・・・・・?」
そりゃそうなりますよね。でもこの場合の正解はなんだったんでしょうか。
だって死ぬんですもん。
そう言うしかないだろ。
「えっと余命を宣告されまして」
「・・・・・・そんなに酷かったの?」
ごめんよ松岡さん。困らせてしまうよな。
「はい。ので退職させていただきたいのですが」
「あの・・・・・・なんて言っていいか」
「あ、いえ、もう気持ち的には大丈夫なので、そんなに困らないでください。迷惑はかけないようにするので」
「強がらなくていいんだよ。会社の手続きは僕がしておくから、落ち着いたら一度話そう」
いや、強がっているつもりはないんだ松岡さん。
周りに迷惑かけたくないだけで、死ぬことに関しては受け入れているから。
でも、そうか。
もうすぐ死ぬ人は悲しんでいると思おうものなのか。
否定しても困るだろうから合わせておくか。
「ありがとうございます。気持ちを整理させてから会社に顔出します」
そう言って俺は電話を切った。
あとは部屋の片付けか。
俺は棚の整理を始めた。
なんで棚の上に縮れた毛が落ちているんだろうか、という疑問を押し殺しながら片付けを進める。
いろんな書類や買っただけで満足した専門書、いつか読もうと思っていた本が出てくる。
残しておいても意味ないのでゴミ袋に詰めた。
燃えるゴミでいいのか、とも思ったがもうすぐ死ぬので違っても許してほしい。
いや、死ねばいいとは思ってないよ。
怒る相手が死んでたら怒ることなんてできないだろう。
とにかくいらないものをゴミ袋に詰める作業を続けた。
様々な思い出が蘇る。
そうしているうちに一枚の手紙が出てきた。
「なんだこれ」
思わずそう呟く。
独り言なんて恥ずかしいな、って気持ちはあるよ。
でも思わずそう呟いてしまったんだ。
普通の手紙で二つ折りにされている。
思わず呟いてしまうくらいだから、もちろん見覚えもない。
手紙を開くと、一番上にこう書いてあった。
<冬至くんへ>
見覚えのある文字である。
「これは彩乃の文字だ」
藤沢 彩乃。五年前まで俺が付き合っていた女性。
いわゆる元カノだ。
高校生の頃に母親を亡くし、二十歳の頃に父親を亡くした俺はそこから一人暮らしをしていた。
一人暮らしを始めすぐに彩乃と暮らし始めたのである。
彩乃とは同級生で、高校二年生の時に付き合い始め、十七歳から二十二歳の五年間を一緒に過ごした。
思い出しながら俺は手紙を読み進める。
<どうせ冬至くんのことだから、これを読むのは何年後かだと思います>
はい。その通りです。
というかそう思うなら、わかりやすいところに置いててくれよ。
<この手紙は別れ話をする直前に書いています>
ってことは五年前か。
<この手紙を読んだら一週間以内に七人に同じ内容で書いてください>
不幸の手紙かよ。
<冬至くんなら不幸の手紙かよって言ってそうだね>
「通院とかってこと?」
「いや、あのですね。死んじゃうんです」
「は・・・・・・?」
そりゃそうなりますよね。でもこの場合の正解はなんだったんでしょうか。
だって死ぬんですもん。
そう言うしかないだろ。
「えっと余命を宣告されまして」
「・・・・・・そんなに酷かったの?」
ごめんよ松岡さん。困らせてしまうよな。
「はい。ので退職させていただきたいのですが」
「あの・・・・・・なんて言っていいか」
「あ、いえ、もう気持ち的には大丈夫なので、そんなに困らないでください。迷惑はかけないようにするので」
「強がらなくていいんだよ。会社の手続きは僕がしておくから、落ち着いたら一度話そう」
いや、強がっているつもりはないんだ松岡さん。
周りに迷惑かけたくないだけで、死ぬことに関しては受け入れているから。
でも、そうか。
もうすぐ死ぬ人は悲しんでいると思おうものなのか。
否定しても困るだろうから合わせておくか。
「ありがとうございます。気持ちを整理させてから会社に顔出します」
そう言って俺は電話を切った。
あとは部屋の片付けか。
俺は棚の整理を始めた。
なんで棚の上に縮れた毛が落ちているんだろうか、という疑問を押し殺しながら片付けを進める。
いろんな書類や買っただけで満足した専門書、いつか読もうと思っていた本が出てくる。
残しておいても意味ないのでゴミ袋に詰めた。
燃えるゴミでいいのか、とも思ったがもうすぐ死ぬので違っても許してほしい。
いや、死ねばいいとは思ってないよ。
怒る相手が死んでたら怒ることなんてできないだろう。
とにかくいらないものをゴミ袋に詰める作業を続けた。
様々な思い出が蘇る。
そうしているうちに一枚の手紙が出てきた。
「なんだこれ」
思わずそう呟く。
独り言なんて恥ずかしいな、って気持ちはあるよ。
でも思わずそう呟いてしまったんだ。
普通の手紙で二つ折りにされている。
思わず呟いてしまうくらいだから、もちろん見覚えもない。
手紙を開くと、一番上にこう書いてあった。
<冬至くんへ>
見覚えのある文字である。
「これは彩乃の文字だ」
藤沢 彩乃。五年前まで俺が付き合っていた女性。
いわゆる元カノだ。
高校生の頃に母親を亡くし、二十歳の頃に父親を亡くした俺はそこから一人暮らしをしていた。
一人暮らしを始めすぐに彩乃と暮らし始めたのである。
彩乃とは同級生で、高校二年生の時に付き合い始め、十七歳から二十二歳の五年間を一緒に過ごした。
思い出しながら俺は手紙を読み進める。
<どうせ冬至くんのことだから、これを読むのは何年後かだと思います>
はい。その通りです。
というかそう思うなら、わかりやすいところに置いててくれよ。
<この手紙は別れ話をする直前に書いています>
ってことは五年前か。
<この手紙を読んだら一週間以内に七人に同じ内容で書いてください>
不幸の手紙かよ。
<冬至くんなら不幸の手紙かよって言ってそうだね>
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
足りない言葉、あふれる想い〜地味子とエリート営業マンの恋愛リポグラム〜
石河 翠
現代文学
同じ会社に勤める地味子とエリート営業マン。
接点のないはずの二人が、ある出来事をきっかけに一気に近づいて……。両片思いのじれじれ恋物語。
もちろんハッピーエンドです。
リポグラムと呼ばれる特定の文字を入れない手法を用いた、いわゆる文字遊びの作品です。
タイトルのカギカッコ部分が、使用不可の文字です。濁音、半濁音がある場合には、それも使用不可です。
(例;「『とな』ー切れ」の場合には、「と」「ど」「な」が使用不可)
すべての漢字にルビを振っております。本当に特定の文字が使われていないか、探してみてください。
「『あい』を失った女」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/802162130)内に掲載していた、「『とな』ー切れ」「『めも』を捨てる」「『らり』ーの終わり」に加え、新たに三話を書き下ろし、一つの作品として投稿し直しました。文字遊びがお好きな方、「『あい』を失った女」もぜひどうぞ。
※こちらは、小説家になろうにも投稿しております。
※扉絵は管澤捻様に描いて頂きました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる