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ゴーレム狩り5

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 正直。1体でも厄介な相手なのにも関わらず。彼の周りには、3体の銀ゴーレムと7体ほどの銅ゴーレムが取り囲む様にして立っていた。

 10体ものゴーレムに囲まれた危機的状況なのに、そんな状況下でもまだ余裕な表情を見せているメルディウスは澄まし顔のまま、大斧を肩に担いている。

 そして小さくため息を漏らすと、面倒そうに言い放つ。

「はぁ……たく。こんな奴等、俺のスキルさえ使えれば、一撃で全滅させられるのによ――まあいい、まとめて相手してやる。どこからでも掛かってこいよ!」
 
 メルディウスのその言葉を皮切りに、目の前にいる金色のゴーレムの鉄拳が大砲の弾の如く飛んでくる。

 その攻撃を見切ってぎりぎりのところでかわすと、直ぐ様メルディウスの大斧が火を噴く。
 地面に突き立てているゴーレムの腕に振り下ろした大斧が、轟音と共に爆発を起こす。

 辺りに爆風で撒き散らされた砂塵と白煙が舞う。

(……やったか?)

 立ち込める煙の中、眉をひそめながら攻撃を放ったゴーレムの腕を、目を細めて確認する。

 しばらくして煙が消え視界が戻ると、メルディウスは驚愕の表情で思わず身を仰け反らせた。だが、彼が驚くのも無理はない。渾身の一振りを放ったつもりだったのだが、傷どころかHPも殆ど減っていなかったのだ――。

 メルディウスが驚きを隠せないと言った表情でいると、そこに間髪入れずに周りのゴーレムが攻撃を仕掛けてくる。まあ、モンスターでしかないゴーレムが人の感情に同情してくれるはずもない。

 だがそこは流石はベテランプレイヤー。すぐに気持ちを切り替えて柄を握る手に力を込めると、向かってくるゴーレムに大斧をぶつける。

 直後。爆発によって勢いをつけると、爆発の力を利用して重さを増し、変身を解いた大剣を金のゴーレムに振り下ろす。

 ――ガキンッ!!
  
 鈍い音と一緒に、目の前に激しく火花が舞う。しかし、大きいのは音だけでHPに変化は全くと言っていいほどなかった。

 っと言ってもそれも当たり前のことだ。大斧モードのベルセルクの爆発能力でも削れなかったHPを、爆風を利用したとはいえ。それよりも攻撃力で劣る今の大剣モードの状態で削れるわけがないだろう。だが、それは武器の持ち主であるメルディウスが最も知っている。

 彼がこのモードに期待しているのは、パワーではなくスピードである。
 簡単に言うと、大技で削り切れないHPを連撃で削り切ろうという作戦に切り替えたのだ。

「一撃で削れないのなら……手数でHPを削ぎ落としていけばいいだけなんだよ!」

 そう叫ぶと、目にも留まらぬ速さでゴーレムの体に次々に攻撃を当て続けるメルディウス。

 時折飛んでくるゴーレムの反撃をかわし、周りのゴーレム達の介入にも剣と斧でモードを変更しながら難なく対応している。
 元々メルディウスの持っている武器は柄の部分に付いた刃を上部にスライドさせることで、大剣から斧へと素早くモードを変更することができる珍しい可変武器だ。

 一撃の破壊力に特化した大斧のモードは、武器とメルディウスの固有スキルの爆発能力によって攻撃力を最大限に引き上げているが。刃が大きい上に、その爆発の度に使用者が振り回されるという使い勝手の悪さが、敵に四方を囲まれている今の状況にはマッチしていない。しかも、目の前の金色に輝くゴーレムは刃すら通さない程に強固な肉体をしているのだ――。

 だが、休みなく襲って来る岩の拳をいなしながらも、確実に自分の攻撃をヒットさせているメルディウスは、やはり並のプレイヤーではないと実感せざるを得ない。

 常人ならば攻撃をかわし、攻撃を繰り出すなんて芸当はそう容易くできるものではないだろう。それは、攻撃を受ける時と攻撃を繰り出し弾かれる瞬間に、必ずと言っていいほどバランスを崩してしまうからだ。

 戦闘はリズムと言う者がいるように、テンポ良く攻撃と防御を交互にしかも臨機応変に行わなければ、すぐに戦闘そのものが瓦解してしまう。

 口で言うのは簡単だが、それを行うには何度も繰り返し行う。気の遠くなるような反復練習が必要なのである。

 そこに馬に乗って階段を下ってきていたデュラン達が次々に馬を解除して、雄叫びを上げながら近くのゴーレムに突進していく。
 圧倒的な物量差でゴーレムを見る見る内に複数人で個々のゴーレムを包囲すると、次々に武器を振り上げてゴーレムに斬り掛かる。

 そこら中で様々な色のゴーレムの体に刃が辺り火花を散らしている中。多くのゴーレム達と対峙しているメルディウスの側にいたゴーレムをいっぺんに薙ぎ倒す。

 土煙を上げるほど勢い良く地面に倒されるゴーレム達――突然のデュランの行動に驚いているメルディウス。

 しかし、それもそうだ。昔マスターの作っていたギルドで戦っていた時も、味方の窮地に駆けつけるなどということをする人物ではないはずなのだ――。
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