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ゴーレム狩り3
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通常の生活スキルを使用して作ったわけだから、味は誰が作っても味は変わらないはずだが、一口一口味わうように食べ進めているエミルを見て。
今エミルに話し掛けたら、完全に彼女を怒らせると感じた2人は、仕方なく目の前の朝食を食べ始める。しかし、すでに1時を過ぎており、朝食と言うよりは遅めの昼食に近い気もするが……。
その後、朝食を終えた星にレイニールが思い出したように告げる。
「そうだ主。ライラという者から、伝言を預かっていたのだ!」
「……ん? ライラさんから? それでなんて?」
ライラからという言葉に眉をひそめる星が微かに不信感を抱きながら尋ねると、レイニールはパタパタと星の肩に止まって耳元でささやく。
「あやつが言ってたのは『この事件で使用している『村正』は私の使っていた薬と同じ物よ。そして、あの武器に有効なのは貴女の固有スキルだけよ』て事らしい。我輩にはさっぱり分からないのだ……」
難しい顔をしながら頭を捻るレイニール。
だが、それは星も同じだった。ライラの使っていた薬――そして星の持っている固有スキル『ソードマスターオーバーレイ』この2つに接点という接点を見つけられない。
ライラの使った薬は個人のデータに作用するもの。対して星の固有スキル『ソードマスターオーバーレイ』は光を浴びたプレイヤー全体に作用すものだ……効果も発動条件も全くの別物と言っていい。
だとしてもライラが何の考えもなくそんなことを言うはずがない。彼女の言葉にどんな意味が含まれているのかは、全くと言っていいほど分からない。しかし、一つ分かっている事実は――星の固有スキルが必要だと言うことだけだ。
(――良く分からないけど……私の力が皆の役に立つなら、頑張らないと!)
星は心の中で決意を新たにして、拳を握り締めて自分に気合いを入れる。
今まで人の影であり、脇役でしかなかった自分の力が必要とされているなら、全力でその期待に応えよう……この時の星は強くそう心に誓った。
宿屋を後にした4人が足早に城に戻る。
エリエが部屋のドアを開けるとそこには、見知らぬ赤い甲冑を身に纏った男が腕を組んで壁に凭れ掛かっていた。
その男の瞳がエミルを捉え、不敵な笑みを浮かべると壁から背中を放した。
「ほう、お前があの白い閃光か! 俺はメルディウスだ。お前の噂は、千代の方でも聞いてるぞ!」
メルディウスはエミルの元に歩いてくると、徐に右手を前に出す。
少し警戒した様な表情を見せているエミルに、彼は微かな笑みを浮かべた。
しかし、出した手前引き戻すわけにもいかず、メルディウスが言葉を続ける。
「なに、ジジイがなんと言ってるかは分からないが。俺はお前達には敵対しない。まあ、仲良くやろうぜ!」
堂々たる彼の態度とその瞳には、少しの迷いもない。
そんな敵意のない彼の態度に、悪い人間ではないと感じたエミルは、彼の差し出しているその手をがっしりと握り返して微笑んだ。
だが、差し出された手を取らなかったことには、彼が知らない人物ということもあったが、マスターへの不信感もあったのかもしれない。
本来は紅蓮の用意したはずのホテルではなく、どうしてここにメルディウスが居るかというと、それには深い事情があった。
* * *
それは彼等がこの始まりの街に着いて、ゴーレム狩りに出掛けたところまで時間は遡る――。
ホテル建設に使った費用を少しでも回収するべく、メルディウスとデュランはダークブレットのメンバー達を馬で引き連れてゴーレム種の多く出現する【グレイ鉱山跡地】に向かっていた。
ゴーレム種は防御力、攻撃力がずば抜けて高い代わりにその撃破報酬も大きい。
この場所は前々から人気の狩り場で、PTメンバー1人を残せば、死んでもすぐに同じ地点に戻って来られるというゲームシステムを利用して、死に戻りを繰り返すことで短期間に多くの資金を調達できる。
しかし、HPを『0』にできないこんな状況では、もはや人気の狩り場ではなく、ただ単にリスクの高い危険な狩り場へと成り果てていた。だが、ダークブレットのメンバーの顔にも、その前を馬でいくメルディウスとデュランの顔にも一切の恐怖も不安もない。
本来。モンスターとの戦闘は6人のメンバーを構成したパーティーで行うのが一般的で、フィールドのモンスターを狩りにいくのにこれほどの大部隊で行うなど例はない。
荒野に轟音と砂埃を立てながらしばらく進んでいくと、目の前に大きなクレーターが見えてきた。
規模と大きさから、それは巨大隕石でも衝突したかのように巨大な円柱の様になっている。
「皆、止まれ!!」
その場にデュランの声が響き渡り、ダークブレットのメンバー達も一同に馬を止める。
クレーターの端、崖の様になっている部分から中を覗き込むと、そこには岩が連結し人間の様な姿を模ったゴーレム達が闊歩していた。
今エミルに話し掛けたら、完全に彼女を怒らせると感じた2人は、仕方なく目の前の朝食を食べ始める。しかし、すでに1時を過ぎており、朝食と言うよりは遅めの昼食に近い気もするが……。
その後、朝食を終えた星にレイニールが思い出したように告げる。
「そうだ主。ライラという者から、伝言を預かっていたのだ!」
「……ん? ライラさんから? それでなんて?」
ライラからという言葉に眉をひそめる星が微かに不信感を抱きながら尋ねると、レイニールはパタパタと星の肩に止まって耳元でささやく。
「あやつが言ってたのは『この事件で使用している『村正』は私の使っていた薬と同じ物よ。そして、あの武器に有効なのは貴女の固有スキルだけよ』て事らしい。我輩にはさっぱり分からないのだ……」
難しい顔をしながら頭を捻るレイニール。
だが、それは星も同じだった。ライラの使っていた薬――そして星の持っている固有スキル『ソードマスターオーバーレイ』この2つに接点という接点を見つけられない。
ライラの使った薬は個人のデータに作用するもの。対して星の固有スキル『ソードマスターオーバーレイ』は光を浴びたプレイヤー全体に作用すものだ……効果も発動条件も全くの別物と言っていい。
だとしてもライラが何の考えもなくそんなことを言うはずがない。彼女の言葉にどんな意味が含まれているのかは、全くと言っていいほど分からない。しかし、一つ分かっている事実は――星の固有スキルが必要だと言うことだけだ。
(――良く分からないけど……私の力が皆の役に立つなら、頑張らないと!)
星は心の中で決意を新たにして、拳を握り締めて自分に気合いを入れる。
今まで人の影であり、脇役でしかなかった自分の力が必要とされているなら、全力でその期待に応えよう……この時の星は強くそう心に誓った。
宿屋を後にした4人が足早に城に戻る。
エリエが部屋のドアを開けるとそこには、見知らぬ赤い甲冑を身に纏った男が腕を組んで壁に凭れ掛かっていた。
その男の瞳がエミルを捉え、不敵な笑みを浮かべると壁から背中を放した。
「ほう、お前があの白い閃光か! 俺はメルディウスだ。お前の噂は、千代の方でも聞いてるぞ!」
メルディウスはエミルの元に歩いてくると、徐に右手を前に出す。
少し警戒した様な表情を見せているエミルに、彼は微かな笑みを浮かべた。
しかし、出した手前引き戻すわけにもいかず、メルディウスが言葉を続ける。
「なに、ジジイがなんと言ってるかは分からないが。俺はお前達には敵対しない。まあ、仲良くやろうぜ!」
堂々たる彼の態度とその瞳には、少しの迷いもない。
そんな敵意のない彼の態度に、悪い人間ではないと感じたエミルは、彼の差し出しているその手をがっしりと握り返して微笑んだ。
だが、差し出された手を取らなかったことには、彼が知らない人物ということもあったが、マスターへの不信感もあったのかもしれない。
本来は紅蓮の用意したはずのホテルではなく、どうしてここにメルディウスが居るかというと、それには深い事情があった。
* * *
それは彼等がこの始まりの街に着いて、ゴーレム狩りに出掛けたところまで時間は遡る――。
ホテル建設に使った費用を少しでも回収するべく、メルディウスとデュランはダークブレットのメンバー達を馬で引き連れてゴーレム種の多く出現する【グレイ鉱山跡地】に向かっていた。
ゴーレム種は防御力、攻撃力がずば抜けて高い代わりにその撃破報酬も大きい。
この場所は前々から人気の狩り場で、PTメンバー1人を残せば、死んでもすぐに同じ地点に戻って来られるというゲームシステムを利用して、死に戻りを繰り返すことで短期間に多くの資金を調達できる。
しかし、HPを『0』にできないこんな状況では、もはや人気の狩り場ではなく、ただ単にリスクの高い危険な狩り場へと成り果てていた。だが、ダークブレットのメンバーの顔にも、その前を馬でいくメルディウスとデュランの顔にも一切の恐怖も不安もない。
本来。モンスターとの戦闘は6人のメンバーを構成したパーティーで行うのが一般的で、フィールドのモンスターを狩りにいくのにこれほどの大部隊で行うなど例はない。
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その場にデュランの声が響き渡り、ダークブレットのメンバー達も一同に馬を止める。
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