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ゴーレム狩り2

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 エミルは咳き込みながら慌てて窓を開け放つと、憤りを隠しきれない様子で叫んだ。

「ケホッケホッ……もう! どうして私が作るといつも爆発するのよ!」
「……あの、何を作ろうとしてたんですか?」
「えっ? 普通のハムエッグよ?」 

 普通にハムエッグを作ろうとして爆発するものなのかっと思いながらも、星はそれ以上口を開かなかった。

 まあ誰しも『人には向き不向きがあるんだ』と、星は煙が立ち込める部屋の中で立ち尽くしたまま、小さく咳き込みながら身を持って知った。
 
 そうこうしていると、突然激しくドアを叩く音が聞こえてきた。まあ、窓から黙々と黒煙が上がっていれば、誰でも何かあったと思うのは当然だろう。

「ちょっとエミル姉! なにやってるのよ!!」

 ドア越しから聞こえてくる声は紛れもなくエリエのものだった。
 その声を聞いてエミルが扉の鍵を開ける。すると、勢い良く扉が開き開いたドアから飛び込んできたエリエとエミルが激しくぶつかる。

 2人はその場に尻もちをつくと、お尻をさすりながら瞑っていた目を開けた。
   
「くっわぁぁ……」
「いった~」

 互いに瞳に涙を浮かべ、お互いの顔を見合わせた。
 突然飛び込んできたことに不機嫌そうな顔で眉をひそめているエミルに、エリエは苦笑いを浮かべている。

 そんな彼女にエミルの眉が怒りでピクピクと動く。

「……エリ~?」
「えへへ。ちょっと慌て過ぎた……かも?」

 その直後、ブチッ!とエミルの方から血管が切れる音がした。

 エミルは静かにゆっくりと立ち上がり、烈火の如く怒り狂う。

「エリー! そこに座りなさい!」
「は、はい!」
「いつもいつもあなたは! どんなに急いでいてもしっかりと状況を判断してから行動しなさいって言ってるでしょ! 私だったから良かったものを、星ちゃんが出てたらどうするつもりだったの! だいたいあなたは同じことを何度言わせれば――」 

 背筋を伸ばしてエリエがその場に正座すると、ガミガミと説教を続けている。
 正座しながら徐々に小さくなるエリエを、星は気の毒そうに見つめていた。彼女の機嫌が悪い時に、丁度見計らったように問題を起こしたエリエに同情すら感じる。

 しばらくして、エミルの怒りも収まったのか、やっと説教から開放されたエリエが、フラフラしながら星の方に歩いてきた。

 星の両肩をがっしり掴んでエリエが告げる。

「……星。無事で良かった……」

 そう言い残して、エリエは疲れきった表情でその場に崩れるように倒れた。
 慌てて駆け寄った星が倒れているエリエの体を揺すると、彼女はすやすやと寝息を立てていた。

 それを見て星が首を傾げていると、開いていた窓から突然何かが飛び込んできた。

「あ~る~じ~!!」

 大声で叫びながら星の胸目掛けて飛び込んできたのはレイニールだった。

 星が突然のレイニールの登場に驚いていると、レイニールが怒った様子でビシッと指差す。

「主! また攫われたらどうするつもりなのじゃ!」
「大丈夫だよ、レイ。エミルさんも一緒だし……」
「誰が一緒でもダメじゃ! 我輩が一緒じゃなきゃダメなのじゃ!!」
「うん。わかった……」

 大声でそう叫ぶレイニールに、星は頷いて自分の胸にレイニールを抱いた。

 結局、寝てしまったエリエをベッドに寝かせ、もう一度キッチンで料理をしようとしたエミルを全力で止めた星は、食材だけを受け取って調理を始める。とりあえず。簡単なところで、目玉焼きとトーストを作ることにした。

 料理を作るのはキッチンに立ってコマンドから料理を選択、材料を指定の分量を入れれば簡単にできる。

 無事作ろうとしていた目玉焼きとトーストを皿に移して人数分を作っていく、思いの外うまくできたことに気を良くした星は手際よく作業をしていった。レイニールがパタパタとテーブルに運んでいった。

 テーブルに並べられた4人分の朝食を用意し終えると、簡易的に用意した椅子に腰掛ける。
 真っ先にナイフとフォークを手に持って目玉焼きを切り裂くと、口に卵の黄身をベッタリと付けて嬉しそうに両手にナイフとフォークを掲げている。

 エミルは興奮気味に、星の作った目玉焼きを見て歓喜の声を上げた。

「――可愛くて料理も作れるなんて、これは将来は立派なお嫁さんになれるわね! お姉ちゃんのポイント加算も。もう、うなぎ登りよ星ちゃん!」

 興奮で震える手で目玉焼きにフォークを入れるエミルを見て、星に向かってエリエがそっと耳打ちしてくる。

「……エミル姉、一日で性格変わってない? 何があったの? 星」
「はい? えっと……ごめんなさい。私にも分かりません……」

 エミルの変わりように驚くエリエに、表情を曇らせしゅんと肩をすぼめる星を見て、エリエがあたふたしながら言葉を返す。
 
「だ、大丈夫だよ! まあ、本人に聞かないと分からないもんね! でもまあ。聞ける雰囲気じゃないけど……」
「……はい」
 
 星の作った朝食を幸せそうに食べているエミルを、2人は呆然と見つめていた。
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