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次なるステージへ・・・16

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 紅蓮は不信感に満ちた瞳でその建物らしき物を見つめているメンバーに「行きましょう」と声を掛けると、ゆっくりとそのドアを開いた。

 ドアの中はドットに包まれた外観と違い立派に造られていて、そこは高級ホテルのロビーの様な作りになっている。外から見た時にはまだなかった上部も、中ではすでに出来上がっているのか天井まで吹き抜けの様になっていて、無数のライトが建物内全体を照らしている。

 中央に設けられたフロントには、スーツを着た女性のNPCが笑顔でこちらを見つめていた。

 紅蓮はフロントで軽く話を済ませると、手にカードキーの様な物を掴みながら、徐ろにデイビッドにそのカードキーを差し出すと、困惑しながらもデイビッドもそのカードキーを受け取った。

「このホテルは私達が開業した物で、今はまだ外装があれなのですが、機能は殆どできているので安心して下さい。このカードキーを向こうに備え付けられているエレベーターに差し込んで下さい。そうしたら、自分の部屋のある階層に自動的に移動できます。その傷なら、3時間程度ここにいれば治癒できるはずですから、それまで皆もゆっくり休んで下さい」

 紅蓮はそう言って、白雪と小虎にもカードキーを渡す。

「ありがとう姉さん!」
「ありがとうございます。紅蓮様」

 2人はそのカードを受け取ると微笑んだ。

 誰よりも早く動いたのは小虎で、貰ったカードキーを手にフロアの端っこに設置されたエレベーターに入ると、目の前の操作パネルにカードキーを差し込んだ。すると、扉が閉まり次に開いた時には小虎の姿は影も形もなく消えていた。

 その光景を見て、デイビッドは感心したように「ほぉー」思わず声が漏れる。その後、フロントカウンターの前で別れるとデイビッドもエレベーターの中に入った。

 小虎と同じくカードキーを操作盤に差し込むと扉が閉まり、視界がぼやけて虹色の光に包まれた。その直後、目の前を覆っていた光が収まり突如として扉が開く。

 そこにはまるで高級ホテルのような、落ち着きのあるモダンな作りの廊下が続いていた。デイビッドもこれほどの場所に泊まるのは初めてのことだ――。
 
「ほぉ~。これは凄い場所だ……こんな場所を運営するなんて、あの子のギルドはどれだけの力があるんだ?」

 顔を引きつらせた紅蓮達のギルドに若干の脅威を感じながらも、廊下を進んでいく。
 部屋に着くと、そこには外を一望できる開放感のある窓、ベッドメーキングされ整ったベッドにマジックミラーになっている浴室など、なるべく部屋を狭く感じさせないような工夫が施されていた。

 デイビッドはその場で装備を解除して、浴室に入るとシャワーを浴びてから、なみなみとお湯の入った浴槽に体を沈める。

「ふぅ~」

 湯に浸かったデイビッドの口から、思わず息を吐き出す。
 やはりお風呂に入った直後には息が漏れてしまうもの……しかも、この世界のお風呂は思考と直結しているのか、頭で考えただけで温度を自在に変化させることができる。

 つまり。大浴場であろうと、自分が一番気持ちがいいと思える温度に自動で修正してくれる。わざわざ水やお湯を足して温度調整をする必要もなく。また、熱い冷たいでけんかになることもない。

 今のデイビッドも自分にとっての最も良い適温を体全体で感じているのだろう。気持ち良さそうに頭の上にタオルを乗せると、浴槽の縁に体を預けて上機嫌に鼻歌を歌う。すると、デイビッドの負傷していた左腕の先が黄色く光る。

 その光は治癒されている証しだ――負傷が大きいとHPゲージとは逆に赤――黄――緑と治っていき、回復度がMAXになると腕が自然と再生するのだ。

 だが、腕が突然伸びてくるその光景は、見ていてあまりいいものではない。
 バスローブを羽織、風呂上がりに自室の冷蔵庫に入ったコーヒー牛乳を飲み干してベッドに体を投げ出す。

 天井を見上げながら、感慨深げに呟く。

「――後数時間後には皆に会えるのか……」

 視界に表示されたパーティーメンバーの名前が表示されている場所に、目を向けた。
 誰一人として名前が欠けている人間が居ないというのは幸いなことだが、HPの減少はないにしてもメンバーの精神的な面までは分からない。

 デイビッドが特に気にしていたのはエリエと星だ。
 あの2人はメンバーの中でも年齢が低い、エリエは高校2年生で、星に限っては小学4年生という精神的にはまだまだ成長しきれていない上に、結構バタバタして出ていったのも否めない。

「……心配してても始まらない。今はとりあえず寝よう……」

 デイビッドは自分に言い聞かせるように呟くと、静かに眠りに就いた。

 数時間後。目を覚ましたデイビッドがフロントカウンターの前にいくと、そこには紅蓮と白雪が待っていた。

「……やっと来ましたか。どうですか? 体の調子は」
「ああ。腕はほら、元通りに治ったよ!」

 デイビッドは紅蓮に腕を見せて微笑むと、紅蓮は「そうですか。それは何よりです」と思っていたよりもそっけなく答えた。その後、紅蓮はコマンドを開いて、ボイスチャットを小虎に飛ばした――が、全く反応がない。
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