388 / 541
次なるステージへ・・・16
しおりを挟む
紅蓮は不信感に満ちた瞳でその建物らしき物を見つめているメンバーに「行きましょう」と声を掛けると、ゆっくりとそのドアを開いた。
ドアの中はドットに包まれた外観と違い立派に造られていて、そこは高級ホテルのロビーの様な作りになっている。外から見た時にはまだなかった上部も、中ではすでに出来上がっているのか天井まで吹き抜けの様になっていて、無数のライトが建物内全体を照らしている。
中央に設けられたフロントには、スーツを着た女性のNPCが笑顔でこちらを見つめていた。
紅蓮はフロントで軽く話を済ませると、手にカードキーの様な物を掴みながら、徐ろにデイビッドにそのカードキーを差し出すと、困惑しながらもデイビッドもそのカードキーを受け取った。
「このホテルは私達が開業した物で、今はまだ外装があれなのですが、機能は殆どできているので安心して下さい。このカードキーを向こうに備え付けられているエレベーターに差し込んで下さい。そうしたら、自分の部屋のある階層に自動的に移動できます。その傷なら、3時間程度ここにいれば治癒できるはずですから、それまで皆もゆっくり休んで下さい」
紅蓮はそう言って、白雪と小虎にもカードキーを渡す。
「ありがとう姉さん!」
「ありがとうございます。紅蓮様」
2人はそのカードを受け取ると微笑んだ。
誰よりも早く動いたのは小虎で、貰ったカードキーを手にフロアの端っこに設置されたエレベーターに入ると、目の前の操作パネルにカードキーを差し込んだ。すると、扉が閉まり次に開いた時には小虎の姿は影も形もなく消えていた。
その光景を見て、デイビッドは感心したように「ほぉー」思わず声が漏れる。その後、フロントカウンターの前で別れるとデイビッドもエレベーターの中に入った。
小虎と同じくカードキーを操作盤に差し込むと扉が閉まり、視界がぼやけて虹色の光に包まれた。その直後、目の前を覆っていた光が収まり突如として扉が開く。
そこにはまるで高級ホテルのような、落ち着きのあるモダンな作りの廊下が続いていた。デイビッドもこれほどの場所に泊まるのは初めてのことだ――。
「ほぉ~。これは凄い場所だ……こんな場所を運営するなんて、あの子のギルドはどれだけの力があるんだ?」
顔を引きつらせた紅蓮達のギルドに若干の脅威を感じながらも、廊下を進んでいく。
部屋に着くと、そこには外を一望できる開放感のある窓、ベッドメーキングされ整ったベッドにマジックミラーになっている浴室など、なるべく部屋を狭く感じさせないような工夫が施されていた。
デイビッドはその場で装備を解除して、浴室に入るとシャワーを浴びてから、なみなみとお湯の入った浴槽に体を沈める。
「ふぅ~」
湯に浸かったデイビッドの口から、思わず息を吐き出す。
やはりお風呂に入った直後には息が漏れてしまうもの……しかも、この世界のお風呂は思考と直結しているのか、頭で考えただけで温度を自在に変化させることができる。
つまり。大浴場であろうと、自分が一番気持ちがいいと思える温度に自動で修正してくれる。わざわざ水やお湯を足して温度調整をする必要もなく。また、熱い冷たいでけんかになることもない。
今のデイビッドも自分にとっての最も良い適温を体全体で感じているのだろう。気持ち良さそうに頭の上にタオルを乗せると、浴槽の縁に体を預けて上機嫌に鼻歌を歌う。すると、デイビッドの負傷していた左腕の先が黄色く光る。
その光は治癒されている証しだ――負傷が大きいとHPゲージとは逆に赤――黄――緑と治っていき、回復度がMAXになると腕が自然と再生するのだ。
だが、腕が突然伸びてくるその光景は、見ていてあまりいいものではない。
バスローブを羽織、風呂上がりに自室の冷蔵庫に入ったコーヒー牛乳を飲み干してベッドに体を投げ出す。
天井を見上げながら、感慨深げに呟く。
「――後数時間後には皆に会えるのか……」
視界に表示されたパーティーメンバーの名前が表示されている場所に、目を向けた。
誰一人として名前が欠けている人間が居ないというのは幸いなことだが、HPの減少はないにしてもメンバーの精神的な面までは分からない。
デイビッドが特に気にしていたのはエリエと星だ。
あの2人はメンバーの中でも年齢が低い、エリエは高校2年生で、星に限っては小学4年生という精神的にはまだまだ成長しきれていない上に、結構バタバタして出ていったのも否めない。
「……心配してても始まらない。今はとりあえず寝よう……」
デイビッドは自分に言い聞かせるように呟くと、静かに眠りに就いた。
数時間後。目を覚ましたデイビッドがフロントカウンターの前にいくと、そこには紅蓮と白雪が待っていた。
「……やっと来ましたか。どうですか? 体の調子は」
「ああ。腕はほら、元通りに治ったよ!」
デイビッドは紅蓮に腕を見せて微笑むと、紅蓮は「そうですか。それは何よりです」と思っていたよりもそっけなく答えた。その後、紅蓮はコマンドを開いて、ボイスチャットを小虎に飛ばした――が、全く反応がない。
ドアの中はドットに包まれた外観と違い立派に造られていて、そこは高級ホテルのロビーの様な作りになっている。外から見た時にはまだなかった上部も、中ではすでに出来上がっているのか天井まで吹き抜けの様になっていて、無数のライトが建物内全体を照らしている。
中央に設けられたフロントには、スーツを着た女性のNPCが笑顔でこちらを見つめていた。
紅蓮はフロントで軽く話を済ませると、手にカードキーの様な物を掴みながら、徐ろにデイビッドにそのカードキーを差し出すと、困惑しながらもデイビッドもそのカードキーを受け取った。
「このホテルは私達が開業した物で、今はまだ外装があれなのですが、機能は殆どできているので安心して下さい。このカードキーを向こうに備え付けられているエレベーターに差し込んで下さい。そうしたら、自分の部屋のある階層に自動的に移動できます。その傷なら、3時間程度ここにいれば治癒できるはずですから、それまで皆もゆっくり休んで下さい」
紅蓮はそう言って、白雪と小虎にもカードキーを渡す。
「ありがとう姉さん!」
「ありがとうございます。紅蓮様」
2人はそのカードを受け取ると微笑んだ。
誰よりも早く動いたのは小虎で、貰ったカードキーを手にフロアの端っこに設置されたエレベーターに入ると、目の前の操作パネルにカードキーを差し込んだ。すると、扉が閉まり次に開いた時には小虎の姿は影も形もなく消えていた。
その光景を見て、デイビッドは感心したように「ほぉー」思わず声が漏れる。その後、フロントカウンターの前で別れるとデイビッドもエレベーターの中に入った。
小虎と同じくカードキーを操作盤に差し込むと扉が閉まり、視界がぼやけて虹色の光に包まれた。その直後、目の前を覆っていた光が収まり突如として扉が開く。
そこにはまるで高級ホテルのような、落ち着きのあるモダンな作りの廊下が続いていた。デイビッドもこれほどの場所に泊まるのは初めてのことだ――。
「ほぉ~。これは凄い場所だ……こんな場所を運営するなんて、あの子のギルドはどれだけの力があるんだ?」
顔を引きつらせた紅蓮達のギルドに若干の脅威を感じながらも、廊下を進んでいく。
部屋に着くと、そこには外を一望できる開放感のある窓、ベッドメーキングされ整ったベッドにマジックミラーになっている浴室など、なるべく部屋を狭く感じさせないような工夫が施されていた。
デイビッドはその場で装備を解除して、浴室に入るとシャワーを浴びてから、なみなみとお湯の入った浴槽に体を沈める。
「ふぅ~」
湯に浸かったデイビッドの口から、思わず息を吐き出す。
やはりお風呂に入った直後には息が漏れてしまうもの……しかも、この世界のお風呂は思考と直結しているのか、頭で考えただけで温度を自在に変化させることができる。
つまり。大浴場であろうと、自分が一番気持ちがいいと思える温度に自動で修正してくれる。わざわざ水やお湯を足して温度調整をする必要もなく。また、熱い冷たいでけんかになることもない。
今のデイビッドも自分にとっての最も良い適温を体全体で感じているのだろう。気持ち良さそうに頭の上にタオルを乗せると、浴槽の縁に体を預けて上機嫌に鼻歌を歌う。すると、デイビッドの負傷していた左腕の先が黄色く光る。
その光は治癒されている証しだ――負傷が大きいとHPゲージとは逆に赤――黄――緑と治っていき、回復度がMAXになると腕が自然と再生するのだ。
だが、腕が突然伸びてくるその光景は、見ていてあまりいいものではない。
バスローブを羽織、風呂上がりに自室の冷蔵庫に入ったコーヒー牛乳を飲み干してベッドに体を投げ出す。
天井を見上げながら、感慨深げに呟く。
「――後数時間後には皆に会えるのか……」
視界に表示されたパーティーメンバーの名前が表示されている場所に、目を向けた。
誰一人として名前が欠けている人間が居ないというのは幸いなことだが、HPの減少はないにしてもメンバーの精神的な面までは分からない。
デイビッドが特に気にしていたのはエリエと星だ。
あの2人はメンバーの中でも年齢が低い、エリエは高校2年生で、星に限っては小学4年生という精神的にはまだまだ成長しきれていない上に、結構バタバタして出ていったのも否めない。
「……心配してても始まらない。今はとりあえず寝よう……」
デイビッドは自分に言い聞かせるように呟くと、静かに眠りに就いた。
数時間後。目を覚ましたデイビッドがフロントカウンターの前にいくと、そこには紅蓮と白雪が待っていた。
「……やっと来ましたか。どうですか? 体の調子は」
「ああ。腕はほら、元通りに治ったよ!」
デイビッドは紅蓮に腕を見せて微笑むと、紅蓮は「そうですか。それは何よりです」と思っていたよりもそっけなく答えた。その後、紅蓮はコマンドを開いて、ボイスチャットを小虎に飛ばした――が、全く反応がない。
5
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる