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ライラの正体16
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そしてその手には、美しい姿には似つかわしくない黒く禍々しいオーラを纏った大きな薙刀状の漆黒の武器が握られている。
その姿を目の当たりにして、ライラが震える声で呟く。
「――あれが『リントヴルムZWEI』龍神と呼ばれるエミルの切り札……ふふっ、見るのは私も初めてだわ。それにしても美しい……見てるだけで興奮してきちゃう♪」
ライラは両肩を抱くようにして体の震えを抑えながら熱い視線で空中に浮遊している龍神を見上げている。
っと次の瞬間、龍神と化したリントヴルムの肩に乗っていたエミルが告げた。
「ライラ、一つだけ言っておくわよ。こうなったリントヴルムは力の抑えがきかないわ。早めに降伏した方が身のためよ……?」
「ふふっ、忠告は聞いておくわ。でも……それは無理ね。貴女は遠慮無く来ていいわよ? 本気で来なさい。エ・ミ・ル♪」
余裕に満ちたライラの表情に、エミルは不機嫌そうに目を細めて見た。
今まで対人戦闘でもそれ以外の戦闘でも、この状態のリントヴルムZWEIが負けたことはない。
ダイヤモンドに覆われた鱗は普段のそれとは比べ物にならないほど強固で、敵の攻撃を通すことはなく。引き締まったボディーは軽量化され速度に秀でていて回避や攻撃速度も従来のリントヴルムとは比べ物にならず。
スピードを最大限に活かした近接での攻撃も、薙刀と化したヘルソードドラゴンが担ってくれる。
攻守共に今のリントヴルムZWEIはフリーダムのモンスターの中で、最強と言ってもいいほどに強化されているのだ――プレイヤーが、しかも一人で戦いを挑むことすら馬鹿げていると言ってもいいほどに……。
その後、呆れた様子で大きくため息をつくと。
「そういえば、貴女はそういう性格だったわね……」
っと呆れながら呟き、剣の先をライラへと向けた。すると、リントヴルムZWEIの瞳がライラを捉え、持っていた薙刀を構える。
次の瞬間。リントヴルムZWEIの翼がはためき、物凄い衝撃波と共に物凄いスピードでライラに襲い掛かる。
リントヴルムは持っていた薙刀を地面に立っているライラへ振り抜く。その直後、辺りに凄まじい爆風と地が裂ける轟音が鳴り響いた。薄い氷が割れる様に、一瞬で地面が一直線に遠くの方まで割れていく。
攻撃によって新たに作られた巨大な地割れは、それはもはや攻撃というよりも天変地異に近い感じがする。だが、やはりゲームの中、割れた地面はその場から緑色の鈍い光りを放ち直ぐ様修復を開始した。
エミルは仕留めていない事を確認すると、すぐに辺りを見渡してライラの姿を探す。
っとその時、エミルの命令なしにリントヴルムZWEIが身を翻した。
突如動いたリントヴルムZWEIから振り落とされまいと、エミルは咄嗟にその体にしがみつく。
その刹那、再び持っていた薙刀を振り抜いた。すると、タイミングを見計らったように目の前にライラが現れ。
「――なっ、なんですって!?」
待ち構えていた様に向かってきた巨大な刃に、彼女も驚いた様子で目を丸くさせている。
――グウォォォオオオオオオオオオオオオオッ!!
雄叫びを上げながら振るわれた薙刀が、空中のライラを捉えた。
さすがの彼女もテレポートで対応できなかったのだろう。かろうじて弓で受け止めたのだが、その勢いに押されてライラの体は軽々と飛ばされていく。
勢い良く地面に叩きつけられたライラのHPバーが一気に減り、1だけ残して地面に埋まるようにして止まる。
ライラのHPが『1』になり。お互いのダメージ計算をシステムが始める。直後、エミルとライラのHPバーが全回復してエミルの視界に【WIN】という文字が表示される。
だが、バトルは終わっても体に蓄積された疲労やダメージが全て消えるわけではない。それがこのゲーム上では【デスペナルティー】の代わりになる。もちろん。曜日を経過すれば取れるものではなく、負傷などのダメージは風呂や宿屋でなければ回復することすらできない仕様のものだ――。
「……くぅ~。いった~」
痛みに顔を歪ませ、体を押さえながらゆっくりと立ち上がるライラ。
その彼女の前に巨大な翼をなびかせ、エミルに乗ったままリントヴルムZWEIが着地する。
「私の勝ちね。ライラ約束よ。今すぐ星ちゃんを開放しなさい!」
「ふふっ、しょうがないわねぇ~。分かったわ!」
ライラは諦めたように両手を上げて言い放つ。
彼女のその言葉に、今までの緊張が一気に溶けたのか、エミルがほっと胸を撫で下ろす。
(……良かった。これでもうあの子を苦しめなくて済む)
心の中で安堵していた直後、突如として目の前からライラが姿を消した。
予想だにしていなかった彼女の行動に驚き、キョロキョロと辺りを見渡すと、上空からライラの声が響いて来る。
「――バトルは貴女の勝ちよ。でも、勝負では私の勝ち…………それじゃ、また2日後に会いましょう。エ・ミ・ル♪」
ライラは満面の笑みで言い放つと、エミルに投げキッスをした。
その時、始めてエミルにはこの戦闘の真の意味が理解できた。これは戦う為ではない。エミルが戦闘を仕掛ける様に仕向け、その申し出を受け入れたフリをして、実際にはただ単にエミルを星から遠ざける為だけのものだったのだと……。
その姿を目の当たりにして、ライラが震える声で呟く。
「――あれが『リントヴルムZWEI』龍神と呼ばれるエミルの切り札……ふふっ、見るのは私も初めてだわ。それにしても美しい……見てるだけで興奮してきちゃう♪」
ライラは両肩を抱くようにして体の震えを抑えながら熱い視線で空中に浮遊している龍神を見上げている。
っと次の瞬間、龍神と化したリントヴルムの肩に乗っていたエミルが告げた。
「ライラ、一つだけ言っておくわよ。こうなったリントヴルムは力の抑えがきかないわ。早めに降伏した方が身のためよ……?」
「ふふっ、忠告は聞いておくわ。でも……それは無理ね。貴女は遠慮無く来ていいわよ? 本気で来なさい。エ・ミ・ル♪」
余裕に満ちたライラの表情に、エミルは不機嫌そうに目を細めて見た。
今まで対人戦闘でもそれ以外の戦闘でも、この状態のリントヴルムZWEIが負けたことはない。
ダイヤモンドに覆われた鱗は普段のそれとは比べ物にならないほど強固で、敵の攻撃を通すことはなく。引き締まったボディーは軽量化され速度に秀でていて回避や攻撃速度も従来のリントヴルムとは比べ物にならず。
スピードを最大限に活かした近接での攻撃も、薙刀と化したヘルソードドラゴンが担ってくれる。
攻守共に今のリントヴルムZWEIはフリーダムのモンスターの中で、最強と言ってもいいほどに強化されているのだ――プレイヤーが、しかも一人で戦いを挑むことすら馬鹿げていると言ってもいいほどに……。
その後、呆れた様子で大きくため息をつくと。
「そういえば、貴女はそういう性格だったわね……」
っと呆れながら呟き、剣の先をライラへと向けた。すると、リントヴルムZWEIの瞳がライラを捉え、持っていた薙刀を構える。
次の瞬間。リントヴルムZWEIの翼がはためき、物凄い衝撃波と共に物凄いスピードでライラに襲い掛かる。
リントヴルムは持っていた薙刀を地面に立っているライラへ振り抜く。その直後、辺りに凄まじい爆風と地が裂ける轟音が鳴り響いた。薄い氷が割れる様に、一瞬で地面が一直線に遠くの方まで割れていく。
攻撃によって新たに作られた巨大な地割れは、それはもはや攻撃というよりも天変地異に近い感じがする。だが、やはりゲームの中、割れた地面はその場から緑色の鈍い光りを放ち直ぐ様修復を開始した。
エミルは仕留めていない事を確認すると、すぐに辺りを見渡してライラの姿を探す。
っとその時、エミルの命令なしにリントヴルムZWEIが身を翻した。
突如動いたリントヴルムZWEIから振り落とされまいと、エミルは咄嗟にその体にしがみつく。
その刹那、再び持っていた薙刀を振り抜いた。すると、タイミングを見計らったように目の前にライラが現れ。
「――なっ、なんですって!?」
待ち構えていた様に向かってきた巨大な刃に、彼女も驚いた様子で目を丸くさせている。
――グウォォォオオオオオオオオオオオオオッ!!
雄叫びを上げながら振るわれた薙刀が、空中のライラを捉えた。
さすがの彼女もテレポートで対応できなかったのだろう。かろうじて弓で受け止めたのだが、その勢いに押されてライラの体は軽々と飛ばされていく。
勢い良く地面に叩きつけられたライラのHPバーが一気に減り、1だけ残して地面に埋まるようにして止まる。
ライラのHPが『1』になり。お互いのダメージ計算をシステムが始める。直後、エミルとライラのHPバーが全回復してエミルの視界に【WIN】という文字が表示される。
だが、バトルは終わっても体に蓄積された疲労やダメージが全て消えるわけではない。それがこのゲーム上では【デスペナルティー】の代わりになる。もちろん。曜日を経過すれば取れるものではなく、負傷などのダメージは風呂や宿屋でなければ回復することすらできない仕様のものだ――。
「……くぅ~。いった~」
痛みに顔を歪ませ、体を押さえながらゆっくりと立ち上がるライラ。
その彼女の前に巨大な翼をなびかせ、エミルに乗ったままリントヴルムZWEIが着地する。
「私の勝ちね。ライラ約束よ。今すぐ星ちゃんを開放しなさい!」
「ふふっ、しょうがないわねぇ~。分かったわ!」
ライラは諦めたように両手を上げて言い放つ。
彼女のその言葉に、今までの緊張が一気に溶けたのか、エミルがほっと胸を撫で下ろす。
(……良かった。これでもうあの子を苦しめなくて済む)
心の中で安堵していた直後、突如として目の前からライラが姿を消した。
予想だにしていなかった彼女の行動に驚き、キョロキョロと辺りを見渡すと、上空からライラの声が響いて来る。
「――バトルは貴女の勝ちよ。でも、勝負では私の勝ち…………それじゃ、また2日後に会いましょう。エ・ミ・ル♪」
ライラは満面の笑みで言い放つと、エミルに投げキッスをした。
その時、始めてエミルにはこの戦闘の真の意味が理解できた。これは戦う為ではない。エミルが戦闘を仕掛ける様に仕向け、その申し出を受け入れたフリをして、実際にはただ単にエミルを星から遠ざける為だけのものだったのだと……。
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