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ディーノの思惑3
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ある者は静観し、ある者は奮起させようと声を張り上げた。が、頭を下げている幹部がその奮起させようという仲間の声に顔を上げることはなく。
深々と頭を下げ続ける男を見下ろしながら、2人は首を傾げ互いの顔を見合わせる。
「俺はどうなっても構わない。だが、部下達は許してくれ! 頼む!!」
頭を下げたまま微動だにしない男を見て、メルディウスがバツが悪そうに頭を掻いた。
その後、武器を地面に突き刺すと男の肩に手を置いた。
「俺も一ギルドマスターだ。お前の気持ちは良く分かる……別に俺は、お前達が抵抗しなけりゃ手を出す気はない。そうだよな! 小虎」
メルディウスが敵の兵士に囲まれながら、馬に跨る小虎に尋ねた。
そのメルディウスの言葉に小虎はガッツポーズを決め「おう! 男に二言はないぜ兄貴!」と大声で言葉を返す。
メルディウスはその返答を聞いて笑みを浮かべると、深々と頭を下げ続ける男の肩を更にポンポンと叩いた。
「だ、そうだ。後はお前に任せる!」
「――すまない。恩に着る……」
男は顔を上げてメルディウスの顔をまじまじと見ると、もう一度大きく頭を下げた。
メルディウスは親指を立てて答えると、ディーノの方を見た。不信感いっぱいのメルディウスの視線に、ディーノはスッと視線を逸らして対応する。
「それで……どうしてお前がここに居るのか説明しろよ」
「……嫌だね。君に教えると後々面倒だ」
「なにいいいいッ!!」
歯を剥き出しにして睨むメルディウスに、ディーノは素っ気なく答えた。
その後も一方的に言葉をぶつけるメルディウスを尻目に、ディーノは左腕を抑えている男の方に向かう。
ディーノは男の前で屈むと、小声で告げる。
「……君達が盗んだ武器、防具、アイテム類を全て渡せ。俺がここに来たのはそれが理由だから」
「それで俺に武器を渡すように言え……と?」
その言葉にディーノはゆっくりと頷く。
しかし、男は眉をひそめると言い難そうにディーノに向かって口を開いた。
「すまん。俺にそれほどの力はない。だが、ボスなら……」
「……ボス?」
彼のその『ボス』という言葉に、ディーノもメルディウスも首を傾げている。
それもそうだろう。本来ならば部隊を指揮している人間がボスだと思うもの、そのボスが全く別の場所で指揮も取らずに身を潜めているなど、本来ならば考えられない。
彼等はボスが不在であるにも関わらず。これだけ高い士気を保っていたと言うのは些か不可解でもある。これはボスが相当の人徳の持ち主か、はたまた恐怖政治を敷いているかのどちらか……。
カブトムシの様な兜を被った男が城のてっぺんを指差し。
「ああ、城の最上階に居るはずだ」
「なるほど、なら直接直談判に行ってくるよ」
ディーノはそう言うと城の上部を見上げ、門に向かって歩き出した。
急に歩き出したディーノにメルディウスが慌てて叫ぶ。
「おっ、おい! どこ行く! こいつらはどうすんだよ!」
ディーノはその声に振り向くことなく「それは君に任せる」と言い残し去っていった。
不機嫌そうにしているメルディウスに小虎が声を掛ける。
「――兄貴はいつもこういう役回りだよね。なんだっけ……ああ、押し付けやすい人だ!」
「……ええ、なだって小虎。お前をどこかのギルドに押し付けてやろうか……?」
「いたいいたいいたい……」
メルディウスは小虎の頭を拳で挟むと、ぐりぐりと押し付けていた。
「絶対に姉さんに言いつけてやる~!!」
瞳に薄っすら涙を浮かべ、小虎が叫ぶ声が夜空に響き渡った。
深々と頭を下げ続ける男を見下ろしながら、2人は首を傾げ互いの顔を見合わせる。
「俺はどうなっても構わない。だが、部下達は許してくれ! 頼む!!」
頭を下げたまま微動だにしない男を見て、メルディウスがバツが悪そうに頭を掻いた。
その後、武器を地面に突き刺すと男の肩に手を置いた。
「俺も一ギルドマスターだ。お前の気持ちは良く分かる……別に俺は、お前達が抵抗しなけりゃ手を出す気はない。そうだよな! 小虎」
メルディウスが敵の兵士に囲まれながら、馬に跨る小虎に尋ねた。
そのメルディウスの言葉に小虎はガッツポーズを決め「おう! 男に二言はないぜ兄貴!」と大声で言葉を返す。
メルディウスはその返答を聞いて笑みを浮かべると、深々と頭を下げ続ける男の肩を更にポンポンと叩いた。
「だ、そうだ。後はお前に任せる!」
「――すまない。恩に着る……」
男は顔を上げてメルディウスの顔をまじまじと見ると、もう一度大きく頭を下げた。
メルディウスは親指を立てて答えると、ディーノの方を見た。不信感いっぱいのメルディウスの視線に、ディーノはスッと視線を逸らして対応する。
「それで……どうしてお前がここに居るのか説明しろよ」
「……嫌だね。君に教えると後々面倒だ」
「なにいいいいッ!!」
歯を剥き出しにして睨むメルディウスに、ディーノは素っ気なく答えた。
その後も一方的に言葉をぶつけるメルディウスを尻目に、ディーノは左腕を抑えている男の方に向かう。
ディーノは男の前で屈むと、小声で告げる。
「……君達が盗んだ武器、防具、アイテム類を全て渡せ。俺がここに来たのはそれが理由だから」
「それで俺に武器を渡すように言え……と?」
その言葉にディーノはゆっくりと頷く。
しかし、男は眉をひそめると言い難そうにディーノに向かって口を開いた。
「すまん。俺にそれほどの力はない。だが、ボスなら……」
「……ボス?」
彼のその『ボス』という言葉に、ディーノもメルディウスも首を傾げている。
それもそうだろう。本来ならば部隊を指揮している人間がボスだと思うもの、そのボスが全く別の場所で指揮も取らずに身を潜めているなど、本来ならば考えられない。
彼等はボスが不在であるにも関わらず。これだけ高い士気を保っていたと言うのは些か不可解でもある。これはボスが相当の人徳の持ち主か、はたまた恐怖政治を敷いているかのどちらか……。
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「ああ、城の最上階に居るはずだ」
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急に歩き出したディーノにメルディウスが慌てて叫ぶ。
「おっ、おい! どこ行く! こいつらはどうすんだよ!」
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不機嫌そうにしているメルディウスに小虎が声を掛ける。
「――兄貴はいつもこういう役回りだよね。なんだっけ……ああ、押し付けやすい人だ!」
「……ええ、なだって小虎。お前をどこかのギルドに押し付けてやろうか……?」
「いたいいたいいたい……」
メルディウスは小虎の頭を拳で挟むと、ぐりぐりと押し付けていた。
「絶対に姉さんに言いつけてやる~!!」
瞳に薄っすら涙を浮かべ、小虎が叫ぶ声が夜空に響き渡った。
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